秋風五丈原 〜あなたのいない世界なんて、すべて灰にして差し上げます〜
愛されヒロイン・劉備が白帝城で静かに眠りについてから、数年の月日が流れた。
主を失った蜀の国を一人で背負うことになった銀髪の天才軍師・諸葛亮孔明。彼の瞳からは完全に光が消え、今や重度の「亡霊依存症(ヤンデレの極み)」へと変貌を遂げていた。
「我が君……見ていてくださいね。貴方が愛し、平和にしたいと願ったこの世界……。邪魔する害虫(魏と呉)をすべて根こそぎ駆除し、完璧な形で貴方のお墓に捧げてみせます」
孔明は狂ったように仕事(北伐)を詰め込み、ブラック企業も真っ青の過労死上等スタイルで魏の国へと何度も攻め入った。手には、かつて劉備が三顧の礼の際、寝ぼけて鼻水をちょっとつけてしまった、あの思い出の羽扇が固く握られている。
そんな孔明の前に立ちはだかったのが、魏の国が誇る最終ツッコミ兵器にして、絶対防衛クール系男子――司馬懿、字は仲達である。
司馬懿は、孔明が放つ「我が君への激重感情オーラ」にドン引きしていた。
「諸葛亮……貴様、もう何年もまともに睡眠をとっていないだろう。そんなボロボロのメンタルで我が魏の国を侵略してくるな。重い、感情が重すぎる」
「ふふふ、司馬懿殿。我が君のいない世界で眠る睡眠など、ただの時間の無駄ですよ。さあ、大人しく我が君のメモリアルパークの敷地になりなさい!」
孔明は得意の火計(炎上プロポーズ拒絶・魏の国版)を連発し、司馬懿を何度も追い詰める。しかし、堅実で現実主義な司馬懿は「絶対に部屋(陣地)から出ない引きこもり作戦」を徹底。
痺れを切らした孔明は、司馬懿に「女物のドレス(=意気地なしのチキン野郎、これでも着て女装ラブコメでもやってろという煽り)」を送りつけるという、もはや知略なのかただの嫌がらせなのか分からないサイコパスな攻め方に出た。
だが、司馬懿はそれをスッと着用。
「ふん、意外と着心地が良いな。貴様の挑発など効かん。私は貴様が過労で自滅するのを待つだけだ」
「くっ……! 搦め手が効かないツッコミキャラほど、ボケ(ヤンデレ)にとって恐ろしいものはありませんね……!」
そして、運命の秋。舞台は、冷たい風が吹き抜ける五丈原。
限界を超えて働き続けた孔明の身体は、とうに悲鳴を上げていた。
夜空を見上げ、自分の寿命を延ばすための怪しい儀式(祈祷の灯明を並べる、ちょっとロマンチックなキャンドルサービス)を行う孔明。
「あと少し……あと少しで、魏の国を我が君のカラーに染め上げられるというのに……!」
しかし、そこへ空気を読まない脳筋武将・魏延が「軍師ー! 夜食持ってきましたー!」とガチャーン!と部屋の扉を破って乱入。その風で、寿命を繋ぐキャンドルがすべて消え去ってしまった。
「……あ。やっちゃいました?」青ざめる魏延。
「……魏延殿。のちに私の遺言で、貴方を物理的に社会から抹殺(馬岱に斬らせる)しておきますね(笑顔)」
孔明は静かに血(のような吐血)を流し、車椅子に倒れ込んだ。
ガタガタと震える手で、懐からいびつな形の「草鞋」を取り出す。それは、かつて劉備が曹操に渡したものと同じ、劉備お手製の不器用な贈り物だった。孔明がこっそり曹操の部屋から盗み出していた(略奪愛)ものである。
「ああ……我が君。やはり、貴方のいない世界は……少し寒すぎました……」
秋の冷たい風が、孔明の銀髪を揺らす。
遠のいていく意識の中、五丈原の星空が、かつて三人でお泊まりアタックを決行した、あの隆中の雪景色のように見えた。
「諸葛亮孔明……生涯をかけた、壮大な片思い……これにて、閉幕です……」
パタリ、と羽扇が手から落ちる。
天才ヤンデレ軍師・孔明。その激しすぎた愛の軌跡は、ここに静かに息を引き取った。
孔明の死を知った司馬懿が、急いで蜀の陣営へと突撃するが、そこにはすでに車椅子に乗った「孔明の人形(木像)」しか残されていなかった。
「ひえっ!? 死んでるのにまだこっちを見てる!! 呪われる!!」
司馬懿は恐怖のあまり「死せる孔明、生ける仲達を走らせる」という、歴史に残る大慌てな逃走劇を演じてしまうのだった。
主が去り、その愛を追った軍師たちも去り、乱世はいよいよ終わりの始まりへと向かう。
数十年後、すべてが終わり、新しく建国された「晋」の国。
歴史の教科書にはこう刻まれた。
『後漢末期、劉備という天性の魔性のヒロインが現れた。彼女のあざとすぎる天然タラシスキルのせいで、全宇宙の英雄たちが狂い、戦い、そして散っていった。これぞ、歴史上最も壮大で、最もハチャメチャな――泥沼三国志ラブコメディである』




