表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/8

桃園の誓いは、突然のプロポーズ!?

ときは後漢末期。

天下は乱れ、政治は腐敗し、「黄巾族」と呼ばれる怪しい黄色いバンダナを巻いた集団が街で暴れ回る、まさに世紀末な時代。


そんな乱世の片隅、幽州の片田舎に、一人の少女(?)がいた。


「うぅ……今日もむしろが売れない……。このままじゃ今晩の肉まんが買えないよぅ……」


彼女の名は、劉備りゅうび、字は玄徳。

耳たぶが異常に大きく、手を伸ばすと膝まで届くという、どこかマスコット的な愛嬌を持つ17歳。一応、昔の偉い皇帝の血を引いているらしいが、現在は完全に落ちぶれて「むしろ(藁のマット)」や「草鞋」を編んで売る、極貧生活を送っていた。


劉備の特技は、「美味しそうにご飯を食べること」と、「困ったらすぐ泣くこと」。

要するに、天性の「放っておけない系・天然ドジっ娘」である。


その日も、街の掲示板に貼られた「義勇兵募集!(=一緒に戦ってくれるイケメン・美女求む)」の張り紙の前で、劉備は大きなため息をついていた。


「はぁ……。私みたいに力のない女の子じゃ、世の中を平和にするなんて無理なのかなぁ……」


ポロポロと大きな涙をこぼす劉備。

だが、彼女はまだ気づいていなかった。その「涙」が、この国の最強生物たちの運命を狂わせる、最強の兵器チャームスキルだということに。


「おい、そこの小娘。何をシクシク泣いている」


背後から降ってきたのは、地響きのような地声。

振り返ると、そこにいたのは身長190センチ、蛇のように鋭い矛を背負った、圧倒的ワイルド系の虎娘(?)だった。


「ひゃうっ!? 蛇、蛇矛じゃぼう!?」

「あたしは張飛ちょうひ、字は益徳! 街の肉屋だ! 飯をマズそうに食う奴と、シケた面してる奴が大嫌いでな! お前、何で泣いてるんだ?」


張飛はドスの効いた声で凄むが、劉備のうるうるした瞳と目が合った瞬間、ピクリと動きを止めた。

(な、なんだこの生き物……。ちんちくりんのくせに、なんか……めちゃくちゃ守ってやりたくなる顔してやがる……!)


「あ、あのね……世の中が大変なのに、私、むしろを編むことしかできなくて、悔しくて……」

「くっ……! お前、そんな健気な理由で……! よし分かった、あたしが肉を奢ってやる! ついてきな!」


「わあ、お肉! ありがとうございます!」

秒で満面の笑みになる劉備。その破壊力抜群の笑顔に、張飛の心臓はドクンと跳ね上がった。


二人が居酒屋へ行き、劉備が口いっぱいに肉を頬張っていると(張飛はその姿を「美味そうに食うなぁ…」とニヤニヤ見ていた)、店の入り口の引戸がガラガラと開いた。


その瞬間、居酒屋の空気が凍りついた。


入ってきたのは、身長2メートル超、見事な黒髪のロングヘアをなびかせ、緑のチャイナドレス(戦闘服)をまとった、圧倒的クール系美女。


「店主、冷や酒をくれ。これから義勇兵に志願しに行く」


彼女の名は関羽かんう、字は雲長。

手には、およそ人間が振り回せるサイズではない巨大な大鉈『青龍偃月刀せいりゅうえんげつとう』を携えている。その凛とした佇まいと、冷徹な美貌に店中が息を呑む。


しかし、関羽の視線が、口の周りをタレだらけにして肉にかぶりつく劉備に留まった。


「……ん?」

関羽の美しい切れ味が鋭い目が、丸くなる。

(……何だ、あの愛らしい生物は。雛鳥か? いや、人間……? 守らねば。今すぐ抱きしめて、あのタレを拭ってやらねばならない気がする……!)


関羽は無言で劉備のテーブルに歩み寄り、ドンッ!と青龍偃月刀を床に突きたてた。


「ひえっ!?」怯える劉備。

「おい、お前! あたしの劉備(仮)を脅かすんじゃねえ!」立ち上がる張飛。


だが、関羽は張飛を無視し、懐から白いハンカチを取り出すと、そっと劉備の頬を拭った。


「……汚れているぞ。よく噛んで食べなさい」

「あ……ありがとう、お姉さん。お名前は……?」


上目遣いで尋ねる劉備に、関羽の胸が高鳴る。

「関羽、字は雲長だ。……もし良ければ、私のこれからの人生、お前にすべて捧げても良いのだが」

「ちょっと待てコラァアア! 出会って3秒でプロポーズしてんじゃねえよ緑髪!!」


張飛が激怒し、居酒屋は大混乱。しかし、劉備が「ふたりとも、喧嘩はめっ、ですよ?」と涙目で仲裁すると、二人の最強武将は「うっ……」と同時に胸を押さえて黙り込んでしまった。


その日の夕暮れ。

張飛の家の裏手にある、満開の桃のむら


ピンク色の花びらが舞い散る中、劉備、関羽、張飛の三人は、なぜかお酒の入った杯を手に並んでいた。


「いいか、ふたりとも。あたしたちは生まれた日は違えど、死ぬ時は一緒だ!」

張飛が顔を真っ赤にして叫ぶ。


「異議なし。劉備、お前を傷つける者は、この関雲長が世界の果てまで追い詰めて細切れにしよう」

関羽が冷酷な笑み(ただし目はハート)で告げる。


「え、ええっと……ふたりとも、これからよろしくね!」

劉備が嬉しそうに微笑む。


こうして、のちに歴史を大きく揺るがすこと neighborhood になる最強の絆、『桃園の誓い』が結ばれた。


劉備にとっては「頼れるお友達ができた!」という純粋な気持ちだったが、関羽と張飛にとっては「実質的な婚約(重婚)」の儀式であった。


「(絶対に、あたしの嫁にする……!)」

「(絶対に、私の正妻にしてみせる……!)」


バチバチと火花を散らす関羽と張飛。そんな二人のお腹に「えへへ、お腹いっぱい!」と抱きつく無自覚天然タラシの劉備。


乱世を揺るがす超弩級のラブコメディが、今、幕を開けたのである――。

ご想像にお任せします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ