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私は悪くありません


「……あれだけの魔獣を倒せるのなら、そろそろ私らの気配にも気づくべきだと思うがね」


「かっ! 管理人さん……」


 それに、ロナルドが隣に立っている。

 まずいですわ……今のを見られたのでしたら、エドルド様をはっ倒すかもしれません……


「お……おじさま……これは……」

「無駄だよ」

「え?」


 管理人がロナルドを軽く触ると、そのまま倒れる。


「っ!?」

「気を失っているだけだよ」


 


 ロナルドが倒れたことで、医療班が慌ただしくかけつける。


「ロナルド様っ! 魔力の枯渇が? いや、魔力は十分に残っている……」

「では、毒か? 魔獣の爪や牙に含まれていることがあるから……中毒症状はでてないな……」

「どうしたっ!! 早くロナルド様の手当てを……」


 慌てる医療班に、管理人が割って入る。

「ただの気絶だよ……」


 バチンッ!! 強烈なビンタをする。

「あれ? 一体なにが……」


 目を覚ますと、管理人、アリシア、そしてエドルドの姿を見つけ


「貴様あああああっ!! よくもおおおお!!!」


「落ち着いてください、ロナルド様っ! まだ混乱されているので? ここは救護室です! どうか、ご冷静に……」


 ダメですわ……この様子ですと、混乱ではなく、確実にエドルド様に怒っていますわ……


「おじさま……」


 アリシアはロナルドの手を包み、そっと横に近づく。


「っ!?」

「私は、無事です。おじさまたちがエドルド様と共に助けてくださったんですね……凄く、嬉しいですわ」



「っ!!!! アリシアちゃ……天使なのか……」


 

 アリシアに手を握りしめられたことで、ロナルドは感動のあまり、怒りを忘れる。


「それで……討伐はどうなりましたの?」

「あぁ……腹が立つことに、そいつのおかげで森中の魔獣やら闇属性たちが一気に集まった。強い魔力の発動に、慌てて全員で駆けつけたんだが……グレスビーは生きたまま捕らえた。奴は……かなりの知力と魔法が扱えるようだからな……懐柔できないか試すんだろう……他の魔獣どもからも魔石の回収に成功した」


 魔石……闇化した魔獣から取り出させることが多く、取り出された魔獣は魔法を使えなくなる。


「そうですか……では、解決したのですね」

「あぁっ、だがなんで森なんかに? 」

「僕が説明します」


 エドルドがことの経緯を話す。塔で起こった幻覚魔法、それによる塔の変化……意外にも、ロナルドは冷静に話を聞いていた。



「分かった……その件は学園の名を出した以上、こちらの管轄にもなる。それで……他に話してないことはあるか?」


 明らかに2人の関係について聞いているのだろう。ロナルドに嘘は通じない……


「あとは、個人的なことだ。話す必要はない」


 エドルドの返しに、それ以上の追求をしなかったことに安堵する。


「私はそろそろ寮に戻るよ。こっちも色々あるんでね」


 管理人が帰り、アリシアがロナルドの治療を大人しく受けてもらえるよう、手伝っていると……





「エドルド様あああああ!!」


 グレスビーが捕獲されたことを知ったのだろう。学園内の救護室に、カレン・バージニアが入ってくる。




「…………」


「カレン、エドルド様に会えず寂しかったですわ……でも、エドルド様がお倒しになったのですね! さすがですわ。私のために……おかげでやっと、外に出られますわ」


 腕を掴もうとするカレンに、エドルドはすぐに離れる。


「バージニア嬢……僕との婚約関係は破談だ」


「なっ……何を……私、何もしてませんわっ」


「……君がしたことは、これから明らかになるだろう。学園の名を勝手に使った者は、その名誉にかけて追求されるからな……」


「……なんのことだか、分かりませんわ……でも、もし私が疑われていることがあるのでしたら、濡れ衣ですわ……」


「塔に侵入した者は既に捕えている」


「………そういえば、グレスビーへの恐怖のあまり、1人正気を失った従者を解任しましたわ。私には関係ありませんの」


「そうか……カクシマディア家の家系能力を前に実に堂々とした受け応えだ。それが本当なら君は大丈夫だな」


「っ!?」


 エドルドしか見ていなかったカレンは、ロナルドに今更気づく。



「私はっ! バージニア家よ! しかるべき手順と配慮が必要なはずだわ」


「……学園の名を使った悪事は、相手が誰だろうがこちらに調べる権限が与えられている」


 ロナルドには、真偽が全て分かる。カクシマディア家の彼の発言は証拠として扱える。


「…………でも、私は王族の婚約者よ? 王の名においては、そんなルール覆せるわ。すぐに次期お義父様に確認をしてちょうだい」



「バージニア嬢……さすがの君でも、僕の左腕を見れば分かるだろう」


「…………!?」


 エドルドに言われ、初めて彼の腕に注目したカレンはようやく事態を理解した。


「エドルド様……まさか……そこは印のある……」


「王位継承者としての資格を失った。もう、君との婚約関係は無効になっている」



「…………どうして……」


 カレンの様子が変わる。魔力を使おうとしているのか、空気が変わったような感じだ。


「なら……私に夢中になるように、その精神……破壊してさしあげますわ。そうすれば、愛人として私の手元に置いてあげてもいいですわよ」


「っ!?」


 しまった……バージニア家の禁忌魔法を使う気なのかと、エドルドは慌てて息を止めるが


「もう遅いですわ……次の一呼吸でみんな私の下僕に……」


 ゴチンッ


「いっ!?」

 ロナルドがカレンの頭に拳骨をお見舞いする。


「何をっ!! 貴方なんて……床に這いつくばりなさい!! 」


「嫌だね」


「……っ!?」



「ちゃあんと、家系魔法は把握しておけ。バージニア家の魔法の天敵は誰だ?」


「っそんなの……知らな……」


「格上の幻覚術者だよ。それが、俺だ」



 白目をむき、カレンは後ろへと倒れる。

「お嬢様っ!?」


 慌てて従者が声を出すが、身体は動いていない。カレンがそのまま後ろに倒れ、気を失っていることを確認しているようだ。


「なんだ? このお嬢様にしか幻覚返しはしていないぞ」


「……我ら従者は、バージニア家に命をかけてお守りをする誓いをたてています」



「…………それで?」



「その代わりに、主人もまた我々従者、家族、生活を背負うと約束してもらってのこと……党首様である、お父上様までは、その約束を守ってくださいました……しかし先ほど、お嬢様は……」


「あぁ、お前たちに全ての責任を押し付けたな……この様子だと、今後もどんどん使い捨ての駒として扱われるな」




「全てお話し致します……」


「行こうか……」



 ロナルドは、部下にカレンを担がせ、従者たちとともに本館へと戻っていく。


「エドルド……君。ここの学生である間は、手を出さないが……卒業したら、是非手合わせ願おうか。俺より強い奴じゃないと認めないからな」



「分かりました。こちらこそ、楽しみです」









 

もう少しで完結です。ブクマ、コメント、レビュー評価、読み専の皆様、いつもありがとうございます。

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