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無茶をする理由


「では、エドルド様。先にこちらをお飲みくださいませ」


 ホア爺の手には、真っ黒なドロドロとした液体の入ったグラスがある。


 あれ? 既視感がありますわ……と思ったアリシアだったが、エドルドの飲み慣れている様子を見る限り、どうやらミオラが調合したものではなく、いつも飲んでいるのであろうと分かる。



「……よしっ、では参るか!!」

 エドルドが気合を入れると、ホア爺はグラスをあっという間に片付け、アリシアを抱える。


「?」

「失礼しますぞ」


 エドルドは、バンッと両手を勢いよく叩き合わせ大きく深呼吸をする。



 まさか……まさかこの人数と荷物を一度に移動させるつもり??


 強い光に包まれ思わず目を閉じる。







「……よし、ホア爺……あとは任せたぞ」


 エドルドは、立ち位置から動かずにそう言い残すと、白目になりバタンっと倒れる。


「えっ!? エドルド様??」


 ホア爺はアリシアをそっと椅子に座らせる。


「ご心配なく。あれほどの高位魔法を1日に何度も、それもアリシアお嬢様や私め、この荷物を最後にまとめてです。お倒れになることも予想の範囲内です」



 ど……どんな段取りをこの2人は組んでいたのかしら。お父様も無茶をよくする方ですけれど……それとも男の方の性分なのでしょうか。そういえば家庭教師の先生も殿方の考えることは女性には分からないもの。だから余計なことを考えすぎないようにとよく注意されていたわ……



 当時、父の役に立とうと父の真似ごとをしていたアリシアは淑女教育でよく注意されていた。


 あの時はどうしてと理由を教えてもらえなかったけれど、やっぱり今でも分かりそうにないわね。



 白目をむいているエドルドに、やはり無理をさせてしまっていたのかと申し訳ない気持ちになる。



「さて、エドルド様の予想通り、私めも塔から弾かれる様子もなさそうですし、今のうちに簡単にお掃除をさせてもらいましょうか」


 ホア爺は一度断ったが、エドルドをとりあえずアリシアの部屋で寝てもらうよう運んでもらったあと、荷物を軽く片づける。


「そういえば、ホア爺様は初めて塔の中に入ったというのに、今のところ何も起きませんわね」


「はい、その理由はおそらく鏡のおかげかと」



「ホア爺様から頂いた鏡ですか?」


「アリシアお嬢様が肌身離さず持ち歩いてくださっているおかげで、私めの魔力をアリシアお嬢様自身が常に纏っている状態になっているのです。その為、恐れながら今私めは塔にアリシア様の一部であると認識されているのでしょう」



「っ!!??」 

 驚きましたわ。エドルド様がそこまで予想されていたなんて……ということは、エドルド様も塔が住人として認識した者を攻撃しない特性に気付かれていたってことね。



「それともう一つ。アリシア様がお怪我をされている今の状態は魔力が足の治癒に集中しております故、以前の元気な時より明らかに魔力の放出波が異なっているだろうと……その為、就寝時のような無防備な状態に近いのでおそらくトラップが発動するおそれもほぼないだろうとのことです」



「そこまでの仮説を立てていたのですね……でも、ホア爺様がいてくださるのでもしトラップが発動しても安心ですわ」


「もちろんです」


 そこまで仮説を立て、1日に何度も高度な魔法を扱えるエドルドが気絶するほど無茶が出来たということは、ホア爺が相当な実力者なのだと分かる。


「……まぁ、気絶してまで私めを一気に連れてきましたのはエドルド様自身のためですがね」


「? ……そうです……わね」

 当然、世間体やお世話係がいる方が都合が良いという意味だろうと受け取る。


「フフフ……若いとは大変なことなのです……おっと、飲み物も入れずに長話をしてしまいました。キッチンお借りしても?」



 そう言ってホア爺はアリシアお手製の調理場へと向かった。









評価、レビューありがとうございます。励みになっています。更新頻度上げられるよう頑張ります。

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