レディの部屋には忍び込むものではありません
「先ほどは失礼しました」
頬を少し赤らめ、あのあとそっとホア爺からエドルドへ、そしてエドルドからアリシアへと渡されたハンカチを受け取り、取り乱したことを謝罪する。
「んっ……いや、気にするな」
「アリシアお嬢様、どうぞこちらを」
そう言って、ホア爺は温かいコーヒーを出す。
「コーヒー……ですか」
「はい、坊ちゃ……エドルド様よりアリシア様の好みを日々お伺いさせてもらっておりましたので。いつかお出し出来るのではと、未熟ながら入れ方の練習に少々力を入れておりまして。ふふっ。思ったよりも早い機会となりましたが、良ければ感想を聞かさせてもらっても宜しいでしょうか?」
……私の好きなものを話してくれていたってことかしら。
少し、いや結構嬉しいと思ってしまった。
「いっ、いただきますわ」
上等な豆の香りにスッと落ち着きを取り戻す。
「美味しいですわ」
「それは良かったです」
「……それで、どうして私はこちらに?」
ようやく、話の本題に入れた。
エドルドは軽くナプキンで口をぬぐい食器を下げるようホア爺に目配せをする。
「あぁ……大きな魔力の衝突にはすぐに気づいた。それで、もしや君に何かあったのではなと確かめようとしたんだが、残念ながら学園の警備に寮を出ることを止められてな」
アリシアは頷く。
当然だろう。グレスビーの闇化によりいつ襲われてもおかしくないのはエドルドだ。ましてや、彼の身分を考えれば周りが警備を強化するのも自然なこと。
「……ホアストンの呼びかけにも反応なかったようなのでな……だからやむを得ず移動魔法を使った」
移動魔法が使えるのは、確か行ったことのある場所だけ、でしたわよね。
「カレン・バージニア嬢を部屋まで送っただろ。それで……だ」
エドルドは非常に言いにくそうだ。
「……なるほど?」
つまり、まずはカレンの部屋に行ったということね。彼女のことだから、何がなんでもエドルド様を離さない気がするけど……確か、あの時エドルド様がいるような素振りはなかった気がするけれど……
「もちろん、気付かれれば厄介になるだろうなと思って、だな……以前君が学園に来たときに使っていた存在感を失くす術を使ったんだ」
「まさか、エドルド様……」
レディの部屋に姿を隠して忍び込んだと……それは、さすがに……
「ひっ、非常事態だったんだ! 何か君にあったのだろうと。居ても立っても居られずだなっ!!」
エドルドは思わず席を立つが、すぐに座り直す。
「失礼……まぁ、着いた瞬間に管理人にすぐ捕まってしまったんだがな。糸でぐるぐる巻きにされて部屋で転がされてたんだが、少ししたら君が倒れたと解放してくれたんだ」
「……」
「……寮から出るのだろう?この危険な状況で、塔に行くのならば、僕の移動魔法を使うのが最善だ」
「………」
「……何か言ってくれないか?」
沈黙するアリシアに、ものすごく気まずそうだ。
「……いえ、元はと言えば私が悪いですので」
そう、紳士として、いや人としてアウトな行動だが、それだけ自分を心配してくれたのかと、複雑な気持ちになる。
「いやっ、そう言うわけでは……」
「心配してくれたんですよね……ありがとうございます」
この場合、謝罪とお礼、どちらを言うべきか少し迷った。なんとなく、お礼を言いたいと思った。
「〜〜いや……それより、ミオラ・カクシマディア嬢が気になることを言っていたのだが……直接君からも話を聞きたい」
エドルドは静かに確認する。
「アリシア嬢、なぜ君がこのような無茶をすることに?」
初めての評価、レビューに思わず記念にスクショしました。
読みに来ていただき、ありがとうございます。
早く2人の距離がもっと縮まるよう頑張ります。




