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2度目の訪問

 またこの部屋に来ることになるとは。今朝2度と来るなと言われたところだったのに。今度は管理人から呼び出されさぞ怒鳴られるかと思いきや、なぜか今回はおもてなしを受けている。


……なぜかしら。このもてなしが怖いわ。



 部屋を吹き飛ばしたのだから、この緊張感は当然といえば当然だけども……


 ミオラは黙って隣で出されたお茶を口にする。臭いを嗅ぎ、口に含みよく味わって流し込んでいる。


 うん、分かってるわ。毒味役として先に飲んでくれたのよね。すごい気負いを感じるわ。ミオラちゃん、さすがに殺気はないから落ち着いて……



「それで? 今朝のことと関係はあるのかい?」



 まぁ、やっぱりそう聞かれるわよね。


 不可解なことが一気に起こったが、お茶を入れてもらっている時間にアリシアも混乱した状況から大分落ち着きを取り戻していた。


 もしや、あえてその時間を設けてくれたのか? 思ったより、優しい人なのかもしれない。


「……分かりません。ノックの音はしましたが、今回は外に出ずに様子を伺ってましたから。ただ、振り返るとグレスビーがいつのまにか部屋の中にい…て……襲いかかってきたところを反撃したんです。その……全力で、つい久しぶりの拳魔法でしたので、力の制御のタガが外れてしまったと言いますか……」


 自分でもいまだに分かっていないからか、今一つうまく伝えられない。



「あぁ、グレスビーの件は聞いている。………………おそらくソレは幻覚魔法だろう」


 管理人は眉間のしわを指でほぐしながら、お茶を口にする。


「幻覚魔法?」



「今朝も言ったはずだよ。私の管理下で誰かが侵入するなど不可能だって。幻覚魔法なら説明がつく。まったく、私の寮で爆破など……この騒動の責任はしっかりとってもらわないとね」


 管理人は1人ぶつくさと喋っている。お茶を一気に飲み干し、2人を見ると


「仕方ない。とりあえず、あんた達はここからでていってもらう。いいね?」


 仕方がないだろう。元々空いている部屋はあそこだけだと聞いているし、あそこまでの崩壊では、住むのは無理だ。


 アリシアは管理人に深々と頭を下げる。

「……ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。必ず、少しずつでも弁償致します」


「アリシア様!」


 アリシアはそっとミオラの手をつかむ。

「ミオラちゃ…いえ、ミオラ様。今までありがとうございました。私は大丈夫です。塔の中ならグレスビーだって簡単には入ってこれません」


 ここを出ていく以上、もう彼女はお世話係ではない。元より格上の立場だ、ロナルドからの指示の手前、アリシア様と呼ばれることを受け入れていたが、もうその必要はない。


「ダメです! 先ほどから隠してますけど。足……かなり痛めましたよね」



 不意の襲来に、思いっきり放った攻撃、痛めていた足を無理な姿勢で思い切り踏みこんでしまっていた。痛めたというより、おそらく筋を切ったのだろう。ミオラがかけつけてくれ、気が抜けた瞬間、壮絶な痛みに襲われた。身体の内側から魔力を集中して流し、なんとか痛みに耐えていたが、やはりミオラの眼には、ごまかしはきかなかった。


「魔力で痛みを一時的に抑えてもその場しのぎで意味がありません。魔力もそろそろ限界ですよね? きちんと固定し安静にしなければ、最悪の場合、足が壊死してしまうのですよ」


 ミオラに大丈夫と言おうとしたが、視界が急に真っ暗になる。


「あっ……」

 魔力切れだわ……


「アリシア様っ?」


 そのまま椅子から落ちるように、アリシアは意識を失った。



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