怒っていません
「んっ」
目を覚ますと、見慣れない部屋のベッドに横たわっていた。足はしっかり固定され、包帯が巻かれている。腫れた足を冷やす氷がこれでもかと入れられた袋を見て、ミオラがしてくれたのだろうと分かる。
高価な家具が揃えられており、大きな窓がある部屋には、ベッドの他には大量の書籍や本が積まれている。
「起きた?」
ドアを開け、入ってきたのは
「エッ……」
エドルドだ。
えぇっ!? なぜ? えっ、ミオラちゃんは?
さっきまで管理人さんの部屋にいて、それで……
あ、あまりの痛さと魔力の使いすぎに意識が切れてしまったのだわ。それで、それで、え?
混乱するミオラに、エドルドはドアのところからそれ以上入ってこようとはせず
「ええと、入ってもいいかな?」
許可を求める。よく見ればその手には代えの氷とタオルを持っている。
「はっ、はい。……ここは、エドルドさ、いえ、殿下のお部屋ですよね?」
目を合わせられない。
シーツを強く握りしめ、久しぶりに会った緊張と、寝ている姿を見られたかもしれない恥ずかしさで死にそうだ。なにより、彼は王族なのだ。なぜか隠していたようだが。
……本来、私が話していい方ではないのだわ。偽名を使われたのも、その場しのぎの関係としてなら納得ですし……
アリシアのどんどんと暗くなる表情に、
「アリシア嬢、気分が悪いのか?」
エドルドが慌ててかけつける。
「あの……大丈夫なので……もう少し離れてくださると…」
「あっ、あぁ……その、すまない」
真っ赤になったアリシアに気づき、エドルドは一歩後ろに離れる。
……これは、うん、僕が大丈夫ではない。
なぜか手をドアにつき後ろを向いて固まるエドルドに
「……殿下?」
「いや、なんでもない……それより、その、いつもの呼び方で呼んでほしいのだが」
「いえ、私には恐れ多いです」
「……………怒ってる?」
「滅相もございません」
………いや、これは怒っているだろう。
「……………アリシア嬢、僕は」
「アリシアお嬢様っ! お気づきになられましたかっ!?」
ホア爺が勢いよく入ってくる。
「お辛くないでしょうか? 何か召し上がられますか? ミオラ殿より看護の指示と薬草、薬の処方をいただいておりますゆえ、このホア爺になんなりとお申し付けくださいませ」
膝をつき、アリシアの手を握りしめる。
「ホア爺様っ、ご心配おかけしました。それと……せっかく頂いたパン……無駄にしてしまってすみません」
「何をおっしゃいますか。あなた様がご無事なのが1番……いえ、ご無事ではありませんね。足に痛みはございませんか? 薬の前に何か召し上がられた方が宜しいかと」
「ありがとうございます」
「アリシアお嬢様の為に腕によりをかけましたので、たくさん召し上がってくださいね」
「ふふっ。お願いしますわ」
なんなんだ、この状況は。自分より親しげなホア爺とアリシアのやり取りに、エドルドは苦笑いするしかなかった。




