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送り主のない差し入れ

「アリシア様っ!起きてください」

 ミオラの呼ぶ声で目を覚ます。いつもは日が昇る前に自然に身体が起きると言うのに、寝たのがいつもより遅かったからなのか、昨日が色々あったからなのか……


 人に起こされるのは幼少の頃以来だ。しかも目覚めも悪い。頭も痛いような……


「アリシア様……このパンは何ですか?」

 いつのまにか、布で包んであったパンをミオラが見つけていた。


「あっ、それは……」


 どうしよう、動いたことを知られると厄介だわ。

でも、パンの説明をすると私が窓を開けないと説明がつかないし……



「あれ? 足の具合良くなってますね! お約束通り昨夜はしっかり休んでくださったんですね」


 そういえば、昨日は痛みでうずいていた腫れが少し治っている。


ミオラはパンの匂いを嗅ぎ

「これ、回復薬が入っていますね」

「え?」

「チョコレート自体回復効果があるものを使われていますが、生地にも治癒効果のある材料が……うーん、鎮静効果が強そうですね」


 なるほど、パンを食べた後自然と深い眠りに落ちたのは薬の効果ね。


「どれもレアな材料を使っていますが、一体このパンはどなたから?」


「ええと、昨日の夜、使い魔が突然現れて持ってきてくれたんだけど……それが送り主が書かれたカードとか何も入ってなくて……昨日騒動で一緒だったここの生徒かなと思うんだけど……」


 嘘は言っていない。


「え? 誰か分からないものを召し上がったんですか?」


「……反省してますわ」

「……いえ、そういえばアリシア様は昨日は夕食を断られてましたもんね。やっぱり無理にでもご用意させてもらった方が……」


「違いますわ……ただ、昨日は色々あって気分が高揚してて、つい甘いものに手を出してしまっただけですわ」


「なるほど? アリシア様はかなりの甘党なんですね。でも、ダメです。誰から送られてきたのか分からないものを口にされては! それに、食事はきちんととってくださいね」



 お父様にいつも小言を言っていた私が、今では逆の立場ですわね。



 ミオラはパンの材料や効果に興味がありそうで、分けてあげると嬉しそうにもらっていた。


「……っあ、でも、今度からは誰か分からない物は口にしないでくださいね!」


 念を何度も押しながら、朝食の用意をしに一度離れる。



「ふぅ……でも、パンの効能のおかげで歩いたこともバレずにすんだわ」

 

 まだ半分残ったパンをそっとなでる。


 そんな貴重な材料を使って急ぎで持ってきてくれたのは、どこからかケガのことを聞いたのだろうか。


 どちらにしても、お礼をいうくらいなら婚約者がいても問題ないだろう。でも、次からはこういった行動はやめてもらうように伝えなくては……



 ミオラが朝ごはんを運んでくる足音に気づき、パンを布でくるむ。


「……」


「アリシア様、怪我によく聞く薬草で煮詰めたスープです。それと、骨を強化させる為にカルシウムたっぷりの粉薬で揚げた魚の揚げ物と厨房より分けていただいたパンと農園とれたてサラダです」


「あ……ありがとう。このスープと魚の揚げ物はミオラちゃんが作ったのかしら?」


 緑に黒を入れたようなすごい色と独特の匂いがする。


「お身体を考えて用意してみたのですが……」



 しゅんとする姿に慌てて


「違うのよ、1人で食べるのはもったいないなぁと思って。一緒にどうかしら?」


「私は厨房で頂いたものを先に済ましてきました! アリシア様には栄養たっぷりのものをと思いまして! 私が作らさせていただきました! それに、この材料は特別ですので、アリシア様に食べていただきたいです」


 うっ……

 ミオラが見守る中、しっかり完食した。






 うぅ、すごい濃度でしたわ……


 食事のあと、食べすぎたと伝え胃腸薬を出してもらい横になる。本当は、料理でお腹を痛めたのだがミオラを傷つけたくない。


 お昼はお粥だけと希望を伝えてある。



 お父様は何を食べたのだろうか。ちゃんと食べているだろうか。


 つい考えてしまう。


 外の空気を吸いたいところだが、まだグレスビーの進捗具合も聞けていない。


「はぁ……」

 ため息をつき、ウトウトとまた眠りにつく。








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