明るく輝く思い出
「ただいま」
「おかえり。みんな」
俺たちが家に着くと凛さんが出迎えており、微笑みを見せていた。
「観光は楽しめた?」
「はい。とてもお買い物をしました」
夜月は楽しそうに買い物をした報告をしているが、観光名所に行っていないことに今更ながら思い出した。
「どうしたのよ」
「彩花、いや。観光じゃなくて買い物だったと思っていな」
彩花も俺の後悔に同調して落ち込んでしまったが、一瞬で持ち直して夜月を見ていた。
「でもあの子。楽しかったみたいだし、良いんじゃないのかしら」
「そう…だな」
俺は彩花の言葉と夜月の楽しそうな笑顔を見てこんな旅行でも良かったと感じた。
「それにしても夜月のやつ。楽しそうだな」
「そうかしら?でもそうかも…」
彩花は一度否定したが、夜月の顔を見て否定を撤回した。
「私も今日は楽しかったし。たまにはあなたとも買い物も良いかも!」
ハニカミ顔の彩花はこっちに振り向いて笑顔を見せた。
「はっ…そうだな」
声が少し漏れ出て、俺も笑って彩花の笑顔に応えた。
「よし!最終日だし!今日も腕によりを掛けてご飯作るよ!」
「人が多いから私も」
「私も手伝います」
やる気が出た凛さんも楽しそうに台所へ入り、夜月と凰火も荷物を部屋に置くと入った。
「俺たちも邪魔にならない程度に手伝うか」
「ええ」
空腹を堪えながら俺たちはリビングで待ち、空いている時間には希のお世話をして時間を潰した。
「はっ!ご飯の匂い」
「腹へも虫め…」
席で涎を出しながら寝ていた美沙も料理の匂いに目を覚まし、お腹も鳴らして待っていた。
「ご飯できたよ」
料理が食卓に並び、机に集まった俺たちは凛さんの号令に合わせて食べ始めた。
「美味しいよ」
目を輝かせる美沙は次々と皿に乗せて食べ進めていった。
「俺も美味しいと思うぞ」
「あ…ありがとうございます」
夜月は嬉しそうにしており、凛さんと話すことが多く見えた。
「お腹いっぱい」
美沙は満足したのか欠伸をして眠たそうにした。
「自由だな…」
「ご飯を食べたし、片付けるぞ」
食べ終えた俺は使った皿と道具を台所まで持って行った。
「あとはお願い…お風呂行く」
「おい」
美沙は皿を持ってきたものの、俺に全部任せてお風呂へ向かった。
「しょうがないな」
俺は流し台にあった皿を洗うと、鍋やフライパンも洗う事にした。
「あなたもそんなことをするのですね」
「え?普通だと思うが…」
俺がフライパンを洗っていると後ろから香ノ木さんが話しかけてきた。
「私も洗うので、動いてください」
「香ノ木さんは俺と一緒にいるのが嫌じゃないのか?」
「不本意ながらあなたと同じく、お世話になったのでお手伝いします」
「左様ですか」
香ノ木さんはやはり言葉の節々から棘があり、俺に対して引っかかってくる。
「狭いな」
「当然です」
流し台は家庭的なものだったこともあり、二人では狭く洗うだけでも苦労するほどだった。
「あなたは今回の事件をどう見ていましたか」
「急にどうした?」
香ノ木さんは皿を洗いながらどこか暗さを見せながら話を切り出してきた。
「別に心配することねえよ」
「あなたは何を知って!」
香ノ木さんは俺に鋭い目で睨んできた。
「何も知らねえよ。でも他の奴らを見たら大丈夫な気がするんだよ」
「あなたと言う人は…」
根拠のない自信を言うと香ノ木さんの聞き慣れたため息が聞こえてきた。
「先輩、香ノ木さんに変なこと言わないでください」
「夜月!俺はそんなこと…」
夜月はジト目でこっちを睨んでおり、ジリジリと近づいてきた。
「先輩。空けてください」
「え?」
夜月は近づくと俺と香ノ木さんの間に立ち、俺を押し退けた。
「おい」
「先輩は隣でお皿を洗ってください」
「分かったよ」
夜月の割り込みに怒る事もできず、黙って従うことにした。
「明日、私たちは学園に帰るので今日のうちにちゃんと皆さんにお別れの挨拶をしておきたいですね」
「お前もな…」
皿を洗う夜月は寂しそうな顔になっていた。
「私はもう大丈夫ですよ。ちゃんとしましたので」
「本当に大丈夫なのか?」
俺は素直になれない夜月を諭したが、悲しさを含んだ微笑みを見せた。




