観光のひと時
「ここに寄りませんか?」
夜月に連れられてついた場所は観光客が多くおり、国内の有名な商品が揃っているアンテナショップのような場所だった。
「いろんなものがあるな」
「これは…」
店の中は赤い商品棚に幾つものお菓子と思われる商品も辛さを表現しているのか赤を中心になっていた。
「雅樹のお土産にしておくか」
「それをお菓子で渡すのですか?」
夜月は何か知っているようで俺の企みも一瞬で見抜いて可哀想な目で見ていた。
「ダメかな?」
「ダメでは…まあ。あの人だったら良いですか」
夜月は否定をせず単純に俺と同じように面白そうに返事した。
「私は萱倉先輩へのお土産を買いますね」
涼は辛いのが嫌いことを考慮してなのか夜月は美味しそうな麩菓子を手に持っていた。
「ついでに学園長にも買っておきますか?」
「雅樹のやつを分けて良いだろ」
俺と夜月は店に入るなり旅行の土産を見ていた。
「あなた方は失礼ですよ。あれでも学園長なので優しく…しなくて良いですね」
「そうだろ?」
香ノ木さんは俺が持っていた商品を見ると、黒い表紙のもっと辛そうな商品を勧めてきた。
「私はお土産を買いに行きますね」
「おう」
夜月がレジへ行き、香ノ木さんと二人になるとさりげなく彩花がやってきた。
「あなたは夜月にお礼のものでも買ってあげなさいよ」
「え?確かに」
彩花の提案だったが、確かにいつも世話になっていることもあり、迷惑料として買う事にした。
「やっぱり夜月はお茶かな」
「は?お菓子に決まっているでしょ!」
彩花は俺が手にしたお茶の商品を奪い、お菓子を渡してきた。
「お前」
「何よ!」
「お二人とも本当に仲が良いのか悪いのか…」
「この男と仲良くした覚えなんてないわ」
喧嘩はするものの俺と彩花との仲が良いわけではないが、悪いわけではないと思っていた。
「彩花がお菓子を。俺がお茶を渡そうぜ」
「分かったわ」
彩花が俺の提案に素直な返しをしてきたこともあり、熱が呆気なくなって冷めてしまった。
「それも買ったのですか?」
購入した俺は店から出ると夜月が俺の方を見て、聞いてきた。
「まあ。夜月には世話になったからお礼と言うか」
「そ…それは…どうも…」
俺も女子に物をあげることがないが、夜月ももらうことが珍しいようで恥ずかしそうにしていた。
「夜月、私も買ったよ」
「ありがとうございます。彩花さん」
彩花には何度ももらっていたようでいつもと同じように感謝していた。
「それにしても夜月の荷物は多いな」
「これはみなさんにお土産を…」
夜月が両手で大切そうに握っていた袋は飛び出てきそうなくらいあり、それを落とさないよう器用に支えていた。
「俺も手伝うよ」
「あ…ありがとうございます」
夜月が持っていた袋から半分を取り、俺が持っていた袋へ入れ替えた。
「ああ。まあ。重そうだったし」
お土産を買った俺たちは両手が塞がっていた。
「あなたたちは買いすぎです」
「ごめんなさい。香ノ木さん」
そう言う香ノ木さんの手にもお土産の袋が三つあり、少ないとも言えないくらいにはあった。
「何ですか?」
「いや。特には」
香ノ木さんは俺の視線に気付き、聞いてきたので目を逸らして誤魔化した。
「これは…他の方に…ってみなさんもですか…」
お土産をたくさん買ってしまう二人はどうも面白くなったのかお互いに笑っていた。
「みんなも買ったんだね」
凰火も漸く買い物が済んだようで荷物を持って店から出てきた。
「それは」
「綾の分だよ。一人だけ学園にいるから可哀想だし」
お土産に溢れた俺たちはどうするか考えてしまった。
「買いすぎましたね…」
「ああ」
香ノ木さんのキャリーケースにお土産を入れても足りず、幾つかが出てしまっていた。
「魔王。もう疲れた。抱っこして」
「美沙?疲れるの早いだろ」
歩き疲れたのか美沙が俺に甘えてきたこともあり、観光も終える事にした。
「観光で五時間、歩いていたからな」
「体力不足ですね」
美沙も必死に歩くが、速度が遅くときより止まることもあった。
「ほら。抱っこはできないが、背負うくらいならできるぞ」
「やった」
美沙は今までが嘘のように走り出し、勢いよく抱きついてきた。
「お前!また嘘をついたな!」
「楽」
「先輩。その人を甘やかす必要ありませんよ」
「ガーン」
俺たちは買い物を終えて凛さんが待つ家へと向かった。




