治まる世界
「この建物はなんですか?」
俺たちが最初に来たのは四角形の角に広く開けられた入り口があり、芸術的な建築物になっていた。
「えっと…」
「こちらの建物は戯曲センターという劇場ホールだそうです」
凰火は綺麗な建物に詳しくない様子で焦っており、観光案内のパンフレットを片手に香ノ木さんが代わりに紹介した。
「劇場なんですね」
夜月は劇に興味があるようでソワソワと中の様子を見ていた。
「気になるのか?」
「初めて来たので…」
夜月は恥ずかしいのか動きが止め、顔だけがこっちを見た。
「見に行くか。面白そうだし」
「はい…」
俺たちは気になる建物に入ってみることにした。
「綺麗」
「天井は楕円形になっているんだな」
俺も夜月に負けずに驚き、中の様子を見た。
「ここはオペラをウリにしているみたいですよ」
「そうなんだ…」
返事もふわっとしており、建物自体を見ていた。
「あなたもですか。魔王」
「ああ」
俺と夜月を放ったらかしに他の人で場所へと行こうとしていた。
「買い物に行きたいわ」
「それは最後にしましょう」
彩花は買い物がしたいようで、香ノ木さんの拒否も無視して言い続けた。
「買ったやつは魔王にでも持たせたら良いでしょ!」
「そうですね」
俺がいない間に好き勝手に話し出す二人は行き先を決めて向かおうとしていた。
「夜月、次に行くよ」
彩花は夜月の手を取り、動かそうとし出した。
「買い物、好きでしょ」
「行きます」
夜月は立ち上がり、何を買うか彩花と相談し出した。
「大きいのは無理だからな」
俺の話に見向きもせずに話を続けていた。
「美沙も行きたいでしょ!」
「うん」
買い物が好きな女子に押し負け俺は静かに着いて行くことにした。
「K…イレブン…・ミューシーア…」
「あなたも買い物をしないのですか?」
俺が買い物を楽しむ女子たちを眺めていると香ノ木さんが隣で同じような様子で聞いてきた。
「特に服には無頓着だからな」
「そうですか。でも私もですが」
香ノ木さんは俺の話に同意をしたが、手元にはすでに買い物袋が三つあった。
「いや。説得力なさ好きだろ…たが、あいつらよりマシか」
俺が見つめた先には夜月と彩花がおり、服を手に話していた。
「この服、夜月に似合うよ!」
彩花はショッピングウィンドウのマネキンの服に夜月を翳して止まらない話が続いており、収まる気配がなかった。
「そっちもですが、あちらもどうしますか…」
香ノ木さんが見た先には美沙と凰火がおり、男向けの服を見て話していた。
「あの人にはこっちが良いでしょ!」
「凰火、まだまだ。魔王にはこっちのかっこいい方が似合う」
周囲の人にも注目を集めるように話している二人はどちらが俺に似合う服が選べるのか競っていた。
「おい!」
「どうしたの?」
美沙はさぞ当たり前のように返事をしており、凰火も首を傾げて見ていた。
「もう少し落ち着いてくれないか…」
「気を付ける…」
凰火は反省したのか俺の注意に答えており、美沙はあくびをしていた。
「美沙は…」
俺が美沙のことを主に言ったつもりだったが、当の本人はしっかりと聞いていなかった。
「可愛いよ!夜月!」
「そ…そうですか?」
俺が騒がしい二人を止めていると別の二人も話が弾んでいた。
「お前たちもか…」
「せ…先輩!み…見ないでください…」
恥じらう夜月は黒をメインにしたロック風の服になっており、いつも持っているギターケースも似合うバンドマンに見えた。
「似合っているな」
「あ…ありがとう…ございます…。これを買いますね…」
夜月の口が少し動き恥ずかしさにも落ち着いて雰囲気を出していた。
「彩花、お前は何をしているんだ?」
「わ…私は夜月のコーディネートを…」
彩花は服を複数持っており、それぞれが異なったジャンルになっており、それを夜月に着せて遊んでいた。
「止めない夜月もだが。彩花はもう少し抑えろ」
「あなただけには言われたく無いわよ」
彩花は俺に何かと恨んでいるが、今回は俺にも心当たりがなく、首を傾げて悩んだ。
「本当に最低ね」
彩花が何に対して言っているのか分からないうちは何も言わずに耐えることしかできなかった。
「先輩もお買い物をしないのですか?」
服を着替え直した夜月がカーテンを開けるとすぐに尋ねてきた。
「そうだな。俺も見てみるか…」
俺が夜月の提案に好意を向けると隅にいた美沙と凰火が現れた。
「これ!どう?」
「こっちも!」
二人はお互いに薦めるものを意識してなのか斬新な服を選んでいた。
「いや…分かっていたが…なんで俺も着ているんだよ」
明らかに普通の範疇を超えているはずだが、俺は着てみる事にした。
「先輩、私も選んだのでどうぞ…」
夜月が渡してきた服を試着すると普段とは違った雰囲気になっていた。
「どうだ?」
俺はカーテンを開け、選んでくれた夜月に感想を聞いてみる事にした。
「かっこいいと…思います」
夜月は素直に感想を言っており、美沙と凰火は変態の上位互換のような目でじっとこちらを見ていた。
「本当に夜月の選ぶものは良いわね。こんな男でもかっこよく見えるのよ」
「喧嘩売っているだろ」
俺は彩花がいつもと同じように言ってきたので強気に文句を言った。
「な!それ以上近づかないで!」
「なんでだよ」
彩花は急に動揺し出して目を逸らした。
「着替える」
俺がカーテンを掴み、着替え直そうとすると夜月が素早くその手を握ってきた。
「とても似合っていますよ」
「そ…そうか。き…着替える」
俺はカーテンをして着替え直すとそのまま試着した服はカゴの中へ入れた。




