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不満の爆発、重なり

勇気「最悪、靴濡れたわ。」


天夜に足を凍らされた以上、自身の炎で溶かした勇気。

溶けた氷は必ず水になる。

水を自身の炎で乾かせばいいものの、そんな暇はなかった。


刻霧「こないだのカリは返させてもらうぜ」

勇気「あん時は気が立っていただけで悪意はなかったんです。」

刻霧「知るか、ボケナスが」


刻霧はナイフを飛ばす。

それを炎の鞭で弾く勇気。


刻霧「こんなもんじゃないぞ!」


刻霧はナイフを次々と投げる。

勇気は反射神経を頼りに鞭で弾く。


勇気「(ダメだ!このままじゃ押し切られる…!)」


一本のナイフが鞭を潜る。


勇気「あ、おわた」


カーン


金属音が響き渡る。勇気の前には刀があり、肩から顔がひょっこり見えてる。

黒髪で青い瞳をした女子だ。


「弱いものいじめとは感心しませんね。」

刻霧「邪魔だ。お前も潰すぞ。」

勇気「そうだ、潰されるぞ。」

「愚問ですね。確かに私はあなたに負けました。しかし、2人なら勝てるかもしれません。」

刻霧「馬鹿な口をふさいでや」

「あなたの強さの秘訣は能力ではない。能力で牽制した先に強さがある。ですね?」

刻霧「ちっ」

「手伝ってください。いいですね?」

勇気「ア、ハイ」


私と黒髪少女の共闘が始まった。



勇気「炎にあんな使い方があったとは…」

「マッチの火だってガスバーナーに劣る火力でも同じ火です。目に近づけられたら誰でも目を閉じます。」


刻霧を倒した私は黒髪…黒髪…


勇気「名前聞いていいか?」

「いちれん。です。数字の一に恋とかいて一恋(いちれん)です。」


一恋と学校に向かっていた。

思いっきり遅刻なのだけど…。


勇気「そういやお前…どんな能力だ?」

一恋「…ありません。」

勇気「うっそだろお前刻霧に止め指したのはお前だろうが」

一恋「峰打ちです。」

勇気「…その刀は?」

一恋「手作りです。」

勇気「『父の形見です』とかいうと思ったらとんでもない答え帰ってきたな。手作りだ?」

一恋「能力ない私が自分で自分の身を守れるように、と。今どきセーラー服に日本刀なんて安いライトノベルに腐るほどいますでしょうに」

勇気「あんまり言うなよ」


一恋…と名乗ったその女は結構冷酷な性格であった。

しかし助けてくれたので決してひどいやつではないんだろう。


勇気「能力無くて強くていいな。」

一恋「…果たしてそうでしょうか」

勇気「そうでしょう?」

一恋「今は能力者がとても強い時代。能力無き強い者は弱いものを守り続ければならない。私は幼い頃から稽古をつけられました。血だらけになりながら父に教えられました。高校では能力なくたって強くなれる証明ということで私の事を希望と褒め称えます。」

勇気「…」

一恋「…口数が多い事を許していただきたい。」

勇気「いや、拙者なにも思ってないでござるよ」

一恋「左様で…」

勇気「うぬ。…じゃあ私もお言葉を」

一恋「どうぞ。」

勇気「かたじけない」

一恋「普通に喋ってもらっていいですか?」

勇気「アッハイ」


勇気「私はこの学校に最近転校してきてだな。その理由が復讐だ。」

一恋「…と言いますと?」

勇気「私の父はある人の父に殺された。だから父の子が父の子を殺す、目には目を。歯には歯を。殺人には殺人を。」

一恋「…」

勇気「ところがその相手は能力なくてな…。いやー殺すチャンスだと思ったよ。…しかし人間追い詰められるとどうなるかわからないのが人間なのかな。能力目覚めちゃったんだよ、そいつ。」

一恋「…復讐は果たせたのですか?」

勇気「いーや、父が父を殺したのは勘違いで終わった。もちろん、相手には殴られた。今では友達だ。」

一恋「どうせ能力目覚めて浮かれているのでしょう。」

勇気「よくわかったな。」

一恋「そして上のカースト入り込む」

勇気「それはなかった。あいつは弱い者の立場がわかる。それはないはずだ。」

一恋「断定はできないのですね?」

勇気「…」

一恋「大丈夫です。能力が向いてない時には向いてないですか。向いてないとわかった時点で勉強すればいいのです。幼い頃から開花しなかった時点で将来は狭まりますから。…それでは失礼します。」


学校につくと一恋は自分の教室に向かっていった。

その姿を見届けた後、勇気は自分の教室に向かう途中…


勇気「天夜!」

天夜「…勇気じゃねぇか。」

鳳木「遅刻とは感心しないな!」

勇気「うっ…すみません…。…天夜は一体何を」

天夜「優秀すぎるため休暇をもらった」

鳳木「馬鹿野郎停学だ停学。」

勇気「えええええ!」

鳳木「…と言っても…喧嘩でな。正当防衛なのだな…こいつ、遅刻欠席早退提出物すべて悪いからな。庇ったが停学は免れなかった。」

天夜「ちぇ、能力者が無能力者を見下すその神経が悪いんだ!今までの嫌がらせをこれだけで済ませてやったと考えたら軽いもんだぜてやんでい!!」

鳳木「まぁまぁ、お前が大人になって差し上げればいいんだ。」

天夜「ちゃんとあやめといおりとかいう性病の肥溜めを半年間反省日誌の系にしてくれよな!」

鳳木「口が悪いぞ!…まぁでもそれはありだな。」


反省日誌。我が高校である青星高校は授業の度先生にサインをもらわなければならない制度。

一睡でもしたらサインはもらえない。


天夜「じゃ、いってくるわ」

勇気「おう、頑張れよ。」



教室にたどり着いた勇気。

しかしケンカをしたせいか開けるのをためらう。

試しにそっと開けて顔を覗かせる。


あやめ「…」

いおり「…」


壁にもたれかかっている2人の少女。

片方は髪が赤い、もう片方は水色。

おそらくこのふたりが喧嘩したのだろう。


徳雄「遅いじゃん」

勇気「いやー…刻霧に絡まれちってよ」

徳雄「あー…。」

勇気「天夜から話は聞いたぜ。喧嘩したんだってさ?」

徳雄「シィッ」


教室が静まり返った。

…禁句のようだ。


徳雄「…みんなビビってんだよ。天夜に。」

いおり「び、びびってなんか…!」

徳雄「うるせぇよお前負けただろうが。」

いおり「はぁ?何言って」

あやめ「やめろ…。」

いおり「あーやん!納得いくの!?」

※あーやん あやめのニックネーム

あやめ「誰のおかげで停学免れたと思ってんだよ。」

いおり「…」

あやめ「私たちは負けたんだ。勝負にじゃない。人としてだ。」

いおり「…」

徳雄「納得しろよ。金魚の糞」

あやめ「おい、いおりを悪く…」

徳雄「人として負けてるお前がいないと何も出来ないどうしょうもないガキだろうがよ!見捨てりゃあいいんだよ!!!」

いおり「っ…」

勇気「まぁまぁ、ね、落ち着いて、ケンカ良くない」


勇気の声で沈黙が走る。

その沈黙を破ったのは


あやめ「痛ぇ」


どこかから投げられた消しゴムだった。


徳雄「おい今の誰だ。」

あやめ「いって」


違う角度からハサミを投げられる。

閉じていたので怪我はない。


「潰せ!!!潰せ潰せ!!!」


半数のクラスメイトがあやめといおりに飛びかかった。


あやめ「うぐっ!」

いおり「痛い!!痛い!」


クラスメイト数人で暴力を振るう。


真琴「お前ら!やめろ!」

「お前に俺達無能力者の気持ちがわかるのか!」

「そうよ!返して!私の苦しんだ時間を返して!」

「オラオラ泣いて詫びてみろよ!」

勇気「待て待て気持ちわかんねぇけどこれはまずいだろ!!お前ら!手伝えよ!」


おそらくもう半分のクラスメイトは能力者。

しかし無能力者の革命ごっこの恐ろしさに怯んでいる。

その時、前の扉が勢いよく開いた。


鳳木「なんだこれ!何やってんだ!」

勇気「先生助けて!能力がない人が暴れて!」

鳳木「やむおえん…ゆるせ!ハァーッ!」


鳳木先生が上着を脱いで、気合いを入れて、生徒の群れに突っ込んだ。

肌に拳を打ち付ける音が聞こえてくる。

生徒は腹を抑えて次々と倒れた。


勇気「…わーお、お見事、なんという能力。」

鳳木「能力など邪道!青春は拳で語り合うモノだ!」

徳雄「よくいるよなこういう先生」

真琴「…終わってない」


倒れた生徒たちが鬼の血相をして立ち上がった。

ふらふらではあるが立ち上がった。

おそらく、『怨念』とかそういう気持ちで立ち上がっているんだと思う。


徳雄「ほら、ちゃんと目に焼き付けろ。いや、俺達は焼き付けなければならない。

無能力者が能力者をどれだけ憎んでいるかを。

今たちあがれてるのは俺達への殺意だ。

犠牲はあやめといおりだ。」

鳳木「…」

勇気「…」

いおり「…ィ…」


いおりはフラフラと立ち上がり


いおり「ゴメンナサイ…」


頭を下げた…。そのまま、重力に引っ張られるように倒れた。

いおりはそれでも立ち上がろうとした。


鳳木「…私もすまなかった。君達に何もしてやれなくて。」

真琴「…」

天夜「…あのーもういいっすか?」

勇気「お前」

鳳木「帰ったんじゃなかったのか?」

天夜「いやー…課題忘れちゃって…どうせなら名誉休暇中に全部済ませて起きたいじゃん?…嘉月(かげつ)さん英語見せてくれない?前みたいに数学教えるからよ。」


嘉月…無能力者の1人。天夜と話していた人だ。

そして今の暴力に加わった人だ。

天夜に話しかけられてやりづらそうな顔をしている。


嘉月「…」

天夜「…どうしたの?」

嘉月「…数学…教えなくてもいいです。」

天夜「…」

嘉月「…」

天夜「えっなんで俺振られたみたいになってんの?」

嘉月「いいえいやあの…。…無能力者の輪の中心である天夜くんが能力者になってしまったのです。」

天夜「待って俺輪の中心だったの」

徳雄「自覚なかったのかよ。」

嘉月「…その天夜くんが能力者になったので…」

天夜「あぁそれなら心配すんな。どうせ奴らと同じになるのでは考えているのかな?」

嘉月「…。…数学はいいです…その代わり…天夜くんの能力を無能力者を守るために使ってください。」

天夜「…当たり前だ。俺はこの学校の弱気者の気持ちがわかる数少ない人間の1人だと自負している。」

嘉月「…」

天夜「じゃ、英語借りてくぜ、あばよ!なんかあったら連絡よこせよな!お前ら!」


嘉月の机の下を荒らして英語を持って嵐のように消えていった。


鳳木「…みんな席につけ。今日を無能力者と能力者の壁を壊す第一歩にしよう。

話し合いだ、委員長号令。」

真琴「起立!」


天夜の成し遂げた事は大きかった。

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