第二話 「お手軽推薦」
「美味しいわね」
お昼時、着替えを済ませたセラはリビングでパンを食べていた。
「そうでしょう。この村には美味しいパン屋があるんです」
「まあ、パンだけだと少し味気ないけどねぇ」
セラはチラッと、ティムに視線を送った。
「近くに川がありますよ。美味しいやつがいっぱい泳いでます。貸しましょうか?釣竿」
ティムはパンとスープの入った皿を持ってテーブルの反対側の椅子に座った。
「セラさん。あなたは何者ですか」
目線を合わせることもなく、口を開いたティムの声は少し冷たかった。
「クヴァール魔法学校の教師よ」
「わぁお、名門ですね」
ティムは少し眉を吊り上げる。
「そう。名門。」
ティムはパンをたべつづけた。
「で、あなたはクヴァールの結界も管理してる」
「ええ、そうよ」
その声はすこし自慢げだった。
「ところで、あなた15歳でしょ?学校はもう決まったの?」
ティムは声をあげて笑った。
「学費がないんですよ。それに親もいない、魔法も基礎しか使えない、、、まあ、行けるなら行きたいですけど」
「ただあなたには精霊がある。伝説級の精霊を普通に出せる魔力量もあるだろうし、試験くらいうけてみたら?」
「全く解決になってないですよ」
スープの入っていた皿を持ってシンクに歩いて行くティムの背中はまだ幼く、どこか儚げだった。
「ドロップ」
セラの耳には小声でそう囁くティムの声が聞こえた。
「ドロップ?」
「ちゃ?」
その可愛らしい声の主はティムの陰から姿を見せた。
スライムのような姿をしたその生き物はセラを見つめた。
「もう一体いるのね、、」
「何か言いました?」
「それ、精霊?」
セラが指をさすとティムがドロップをみる。
「水の中位精霊、ドロップです。」
セラはパンを食べ終わった。
「そろそろ帰るわ」
「そうですか。家を出て道をまっすぐ行ったら街に出れます。お気をつけて」
セラは立ち止まった。
「、、、あなた、クヴァールに来なさい。ただでさえ数の少ない精霊使いがこんなところで細々と生活してるなんて勿体なさすぎる。私が推薦してあげるわ」
ティムはおぉ、と眉を上げた。
「いいんですか」
「もちろん。また連絡するわね」
セラは去って行った。その背中を見送った後、ティムは家に入らず、裏庭へと向かった。
「イグニス。やろう」
ティムがそういうと空中に暖炉の中で燃え上くらいの小規模な炎が現れる。その炎から体を出したのは炎の上位精霊、イグニスだった。
硬い鱗と大きな翼を持つその体はまるで小さか可愛らしいドラゴンだ。
イグニスは生い茂る芝の上であぐらをかいたティムはの頭に着地する。
ティムは目を閉じてゆっくりと呼吸をする。
イグニスは少年の気持ちが落ち着いたのを確認してから全身を力ませた。
その瞬間、イグニスの口から炎が漏れ出した。
「君がその目でたしかめたのか?」
「えぇ。もちろん」
クヴァール魔法学校の校長室。天井は高く、ステンドグラスの窓から異質で不気味な光が差し込んでいる。その光を浴びるように一段高く置かれた玉座のような椅子にはクヴァール魔法学校で最も権威をもち、最も恐れられる人物が座っていた。
「にわかには信じがたいな。15歳の子供が皇位精霊?出現させた瞬間魔力が枯渇するだろう。」
「でも彼は私の目の前で精霊を出しました」
校長はため息をついた。
「わかった。そこまでいうなら彼の家に試験官を送ろうか」




