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階段をおりたアルが、車のドアを開ける。いつも裏にとまってた左ハンドルの青い車、ここのだったのか。
「どうぞ」
助手席のドアを開けてくれる。
素直にそれに乗って、運転席に乗り込んできたアルに聞く。
「アル、運転できたの?」
「俺にできないことはありませーん」
リズムをとって答えると、キーを回す。軽い音がしてエンジンがかかると、手馴れた仕草でギアをいれた。マニュアルの車って、乗るの初めて。それを言えば、車の右側に座って見える風景ってのも新鮮だけど。
「ユーキも乗れるの?」
さっき、車使うかどうかって聞いてたっけ。
「一応。あいつは免許ないけどね」
「ってことは、アルは免許持ってるの?」
「でなければ乗れないだろ?」
「どうやって免許取ったの?」
「どうやってって……普通に」
教習所通ったってこと? アルが?
「なんでそこで笑う?」
その理由に想像がつくのか、幾分むっとしながらアルが聞いた。
「想像の通りよ。だって、アルが普通に教習所通ったって、なんだか不思議」
はい、教官、とか言っているのかしら。それとも、いつもどおりにえらそうだったのかしら。
笑いながらそう言うと、アルも苦笑して。
「普通と言っても、日本じゃないぜ。俺の持ってるの国際免許だから」
「国際免許? どこでとったの、そんなの」
「本国にいた頃にね」
「そういえば、アルとユーキって、どこの生まれなの?」
「どう見える?」
つっこんで聞いてくる私に、いたずらっぽく笑いながらアルがこっちを向いた。
「ハンドル! ハンドル!」
「そうだな……生まれはトランシルバニアとか言った方がそれらしい?」
「ホントに吸血鬼、ならね」
「ま、大体そこらへんだよ」
言いながらまた前を向いてアクセルを踏み込む。すべるように進む車は、結構なスピードでカーブを曲がった。
「ねえ、どこ行くの?」
「天気もいいし、ちょっと遠出しよう」
一体、どこへ連れてかれるやら。
☆
「きゃあああああああああ!」
ものすごい勢いで滑り降りるコースターに、思い切り声をあげる。
たっのしー!!
私達は、海沿いの遊園地に来ていた。日曜日だったけど思ったよりすいていて、ジェットコースターなんか乗り放題!
「奏子、こういうのは平気なんだ」
「なんで?」
三回目のジェットコースターから降りたところで、アルが感心したように言った。
「高いところ苦手だって言ってたから。これ、結構高いところまで登るだろ?」
「ジェットコースターなんて高いとこは一瞬だし、しっかりと足がついているところなら割と平気なの。どっちかというと、あれの方が苦手」
私は、向こうに見える観覧車を指さした。それを見てアルが、にやりと笑う。
しまった。
「あ、あの……!」
「よし。じゃあ次はあれ」
喜々として、アルは私の手をとった。
「やだー! やだってば!」
「大丈夫、大丈夫。俺がついてるから」
私の抗議の声もむなしく、アルは私をぐるぐるまわるその乗り物に引きずって行った。
「つ、次はあれよ」
青い顔して地面に降り立った私は、観覧車の中から目をつけていた乗り物を指さす。おびえる私に満面の笑顔だったアルの顔が、そのまま固まった。
「……あれ?」




