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「初めまして、レイディ。ユーキ・ロールテリング・ド・グリフォルドと申します。どうぞ、ユーキ、と。アルとはいとこにあたります」

 クラスメイトがやったら笑ってしまうような挨拶なのに、この人がやるとまるきり自然な仕草で全然気障っぽさを感じさせない。

 いとこ、か。そう言われれば面差しが似ていないこともない。


「乃木……奏子、です」

 ついつられて、まぬけな自己紹介をしてしまう。

 と、その少年……ユーキにとられていた私の手の平が、前触れもなく、ぴり、としびれてあわてて手を離す。

 なに? 今の……静電気、みたいな。


「で? どうすんだよ、アル」

 私の行動を気にするでもなく、軽い調子に戻ったユーキは、立ち上がってアルを見た。

「どうするって?」

「奏子だよ。見たところ、同意してここにいるわけじゃなさそうだけど?」

 言われて、はた、と気づく。

 私、おもいきりパジャマじゃない! とてもじゃないけど、外に出る格好でも初対面の人の前に出る格好でもない!


 思わず自分を抱きしめた私に、アルが苦笑した。

「今更だよ。気にすんな」

「そういうわけにはいかないわよ! こ、こんな立派なお屋敷に来るなら、ドレスとまではいかなくてもそれなりにスーツとか……」

 早口で言った私に、アルとユーキが同じタイミングで吹き出した。

「なるほど。……気に入ったよ、奏子。でもとりあえず、今夜はお帰り」

「ユーキ」

 笑っていたアルが、とたんに顔をしかめた。その顔を見返して、ユーキは微笑む。

「わかっているだろう、アル。ことは慎重にすすめなければいけないことを」

 そう言ったユーキの顔は、目だけが笑ってなかった。ぞくり、と背筋が冷たくなる。

 やっぱり、この人ちょっと怖いかも。

 しばらくユーキを睨んでいたアルは、小さくため息をついた。

「わかったよ」

「いいこだね。今回のペナルティについては、よおく考えておくから」

 げんなりしたアルに笑いながらそう言ったユーキは、す、と私に向かって手を出した。


「おいで。帰る前に、奏子に見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの?」

 無意識のうちにその手を取ろうとしたら、横からアルに手を握られた。

「触るな、っつの」

 すねたようなその表情に、状況も忘れて、私は少しだけ笑ってしまった。


  ☆


 その扉の向こうには、地下へと続く短い階段があった。薄暗いその階段の終わりには、古びた扉が見える。

 ユーキが開けてくれた扉の前で躊躇していると、アルが先にたって階段を降り始めた。突き当りにはもう一つ扉があって、その前で立ち止まると、アルは中へとそれを押し開ける。


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