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そう思っていても、体が動かない。魅入られたように、熱っぽいアルの瞳から目が離せなかった。
……夢。夢よね。これは、夢。
………………夢なら、ちょっとくらい流されてもいいかなー……
ぎしり、とソファがきしむ。ゆっくりと降りてくる唇が、小さく呟いた。
「リシィ……」
え?
「ストーップ」
と、そこへ不機嫌そうな声がわりこんだ。その声を聞いた瞬間、アルは思い切り苦虫をつぶしたような顔になる。そのまましばらく目を閉じて固まっていたけど、諦めたようにため息をついて起き上がった。
「いたのか」
「いたのか、じゃないよ、この不良息子。今日はおとなしくしてろって言ったのに……」
あわてて私も体を起こして声の方に視線を向けると、半開きになったドアにもたれて、金髪の少年が一人、腕組みしながら立っていた。眇めた様子でアルを見ているその目は、お世辞にもご機嫌とは言い難い。
たしなめるような口調の割に、彼はアルより若かった。私と同じくらいの歳かな。
「悪かったよ」
「ったく。まあいいけどね。どうやって刺激しようかとは思ってたから、手間がはぶけて。どんな様子?」
その問いに、アルは肩をすくめながら苦笑した。
「全然」
「そう」
その少年は、淡々と話しながら近づいてくると、ソファーの背もたれに腕をかけて、くい、と私の顎に手をかけて顔を仰向かせた。
「なによ」
私は目をそらさず、不躾な視線を睨み返す。
あれ? この人金髪なのに、瞳が黒い。
「ふうん。なかなかいい目をしてるね、奏子」
「え? 私のことを……?」
「知っているよ。君のことはね」
探るような目つき。薄く笑みを浮かべたその顔を、なぜだか私は少しだけ怖いと思った。
「私の何を知っているのかしら。お互い、楽しくなるような理由ならいいんですけど」
私の挑戦的な言葉を聞いてその人は、くりん、と驚いたように目を見開いた。
「こら、勝手に触るな。これは俺のだ」
言いながらアルが彼の手をはらう。アルにはらわれた手を気にするでもなく、その少年はにっこりと笑った。
その顔は、さっきとはうって変わって、ずいぶん人懐っこくなった。
「これは失礼」
そう言って彼は、ソファーを回って私の目の前に片膝をつく。そうして、さっきアルがしたように、うやうやしく私の手をとると礼の形をとった。




