わからない
自然と正義の視線が右腕の包帯を伺う。しかしそれがまずかった。
「それも気になってたんだけど、もしかしてその包帯が関係してる?」
『女の勘はジャックナイフより鋭いんですかあああああ!?』
実は話題を逸らされたことにも気づかず、正義はイタズラっぽい笑みを浮かべるチヒロから目を逸らした。
『ど、どうしよう!?ああ、そうだ!』
正義は閃いたアイディアをすぐさま口にした。
「チ、チヒロ姉の〔才能〕はどんなんだっけ?確か〔ステージ4〕になったんだよね?」
「私の?あ~、うまく言えないけど、強大な力かな?で?セイギのは?」
『くそおおおお!全く完全にブレないよこの人おおおおおおおお!?』
話題を逸らそうとした正義の思惑をアッサリ看破したチヒロに、「あ、ええっと」などと少年がどもる。するとチヒロの表情に僅かな変化。
「あの、もしかして・・・」
「は、はい?」
「・・・嬉しく、ないの?あんなに〔才能〕、欲しがってたのに?」
なぜだか不安そうなチヒロの声に、正義は戸惑いを感じながらも応える。
「た、確かに〔神さん〕の手紙が来たときは、本当に嬉しかったよ?さ、〔才能〕の育成カリキュラムがあるから、僕もこっちに出てきたんだし。でも・・・」
『・・・流石にロケットブースターは恥ずかしいよ。それにコイツは・・・』
正義が〔才能〕を見せたくない、羞恥とは別の理由を考えていると、チヒロの身体がスッと離れた。
そして、
「・・・そっ、かぁ~」
なぜだかヘコんだ様子のチヒロが道路標識の白いポールに腕をやり、ため息をついた。そうなる理由が正義にはわからない。
「ど、どうしたの?」
「あ・・・ううん、なんでもない!」
チヒロ本人もそれについて話すつもりはないのか、すぐに持ち直してまた正義の腕を取る。
「ホントに大丈夫?」
「うん!大丈夫!・・・だって、そう簡単な話じゃないもんね」
チヒロの言葉の意味はわからなかったが、正義はそれ以上追及することをやめた。
そして、
「あ」
大通りに出る横道に敷かれた横断歩道、そこで彼女に気づいた。