第三話
お一方に評価していただきました!
ありがとうございました!!
ニコラークが魔族に斬りかかり、反撃しようとする魔族の爪をジェラムが弓矢で牽制する。騎士達が飛び退いた空隙に間髪入れずルドレンダが火球をたたき込んだ。
徐々に魔族の体に血が滲み、息遣いが荒くなる。
再び、オーガスとイーデリックが斬り込んでいった。
「クハハハハッ」
唐突に、魔族が笑い始めた。二人の精鋭の剣を、空中に羽ばたいて逃れる。そう、魔族に翼が生えていた。飛び退くのが半瞬だけ遅れたレイモンを、すれ違いざまにそいつの爪が切り裂いていった。
ソニアは空に舞い上がった魔族に風の魔法をぶつける。風で翼を切り裂いて落とすつもりで。魔族の両目がカッと赤く光ったのと、そいつの翼を風が切り裂いたのはほとんど同時だった。
「――ソニア様っ」
ドンッと、ソニアを突き飛ばしたルドレンダが爆発に巻き込まれた。血まみれになって倒れ伏す彼女の頬には微かな笑み。
「ルド!!」
ダーレントがルドレンダを守るように魔族と対峙する。だが彼女は、もう。
「ミュリーラ、ルドを頼むっ!!」
ダーレントが叫びながら魔族に斬りかかる。ダーレントが編み出した九重斬り。魔族を捕えて切り刻む……!
グシャ、と魔族が倒れた音が響いた。ダーレントはすぐさまルドレンダに向き直って、力を失った彼女を抱きかかえる。ミュリーラも泣きそうになりながらルドレンダに呪文を詠唱する。
「オーガス、止めを――」
魔族は倒れただけだ。死んだわけではない。だからソニアはオーガスにそう指示を出し、ソニアの言葉無しでその可能性に気づいたオーガスが魔族に剣を突き立てようとしたその時。
「オモ、シロイ」
魔族の呟きは、ダーレントの胸を吹き飛ばした火球にかき消された。
「てめぇぇぇっっ!!」
ニコラークはいつでも冷静だった。いつでも冷静なその男が、盟友を失って激昂した。守りを全て捨てて魔族に突きかかる。魔族の胸を、ニコラークの剣は確かに貫いた。
「ク、ハハッ」
返す手で魔族はニコラークの首をはねた。その背中をオーガスが貫く。そいつの首を、イーデリックが斬り飛ばす。魔族の首は、クルクルと中を舞い、最後の瞬間に赤くその目が光った。
「ジェラム!!」
魔族は、ジェラムの体を細切れにしてようやくその活動を終えた。
「――燃やしましょう」
ジェラムの肉片と一緒に魔族の首を、ソニアは燃やした。
「――生きて、生きて!生き返って!!」
ミュリーラが亡霊のように彷徨いながら、倒れ伏した仲間に回復魔法をかけていく。
「――なんで俺が、生きてるんだ……」
座り込んでイーデリックは打ちひしがれ、オーガスは黙り込んだまま、息のある者をミュリーラと共に探していた。
ソニアの体に、否、ソニアを含めた4人の体に淡い光が灯る。魔族を倒したせいで、驚くほどレベルが上がっていく。ソニアの頭に、強大な呪文が幾つも閃いては定着していく。さらには回復魔法まで。
「わたくしは、弱い……」
手に入れたばかりの強力な火の魔法で、魔族の死体を焼ききる。
「オーガス。生存者は」
答えは分かっていた。ミュリーラは泣き続けていたから。一度も途切れなかった。
「――いません」
オーガスが感情を露わにする所など、それこそ見たことがない。だがそのオーガスの声も、やや掠れていたように聞こえた。
「……焼きましょう。彼らの遺体を貶めることだけは、許しません」
不幸な死者の体を使う魔物もいる。だが燃やしてしまえばその危険性はない。ただ、仲間が本当に死んでしまったと、ソニアが納得しなければならないだけで。
悲痛に漂うミュリーラの泣き声を聞きながら、ソニアは仲間であった体に火をつけていった。
生き残った3人のレベルは20以上。イーデリックだけが16だったが、彼は侯爵家伝来の優秀な装備を身に纏っていた。
ニコラークでもレベルは19。
「わたくしが、殺した……」
公女であるソニアが隊を率いて魔物を討伐することに、批判は多かった。その全てに屈したつもりはない。だが、全力で公女隊の実力を底上げすべく行動してきたわけでは、ない。もっと実戦に連れ出し、レベルを上げていれば戦死者は減った。
後方支援班を最初からヒーストル村に置いていれば犠牲者は減った。
ソニア自身がレベルを上げ、強力な魔法を手にしていれば戦死者は少なかった。
「なんて、無能な……」
ソニアの仲間達が、煙を上げて燃えていく。煙を見上げていたソニアの顔に、雨のひとしずくが降りかかる。
雨は恵みだった。
泣く権利も、悲しむ権利も剥奪されたソニアだったが、この雨に紛れ込ませることができたのだから。死者を悼む心を。
読んでくださってありがとうございます!
……もう人が死ぬのは終わりです。
ヒュー×ルドレンダ←ダーレント、という構図なんてなんで考えついちゃったんだろう……。




