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フラれ勇者は大公女に復讐できない  作者: ヒロ猫
後悔する大公女
14/21

第二話

お一方に評価していただきました!

ありがとうございました!!


しばらくは色恋沙汰に関係のない、血なまぐさい戦闘シーンになります……。

苦手な方はお気を付けくださいませ。


 勇者からの返事が来てすぐにソニア達は場所を移動した。

 魔族がいるのは、ヒーストル村近郊のリーワース湖だ。そこで繭を作って覚醒を待っている。繭の状態では、どれほど攻撃しても効果は無い。繭が破れて目覚めた瞬間を討つのが魔族討伐の基本だった。

「ユーフィア、エイミリア、ジャスリン。結界を頼みます」

 3人の娘は、魔法使いの才能があった。特にジャスリンの伸びは著しい。この3人に、この一帯に結界を張ってもらう。例え戦闘に敗れたとしても魔族を足止めできるように。隣国の魔族を討った勇者が引き返してくるまで、この一帯に魔族を封じ込めておけるように。

 3人の娘達は、魔力の籠った魔道具を四方に埋め、呪文を唱える。

「イーデリック殿、オーガス、ニコラーク、ダーレント。あなた達は攻撃を。誰が死んでも攻撃を続けなさい」

 この部隊で、最も高い攻撃力を持つのがオーガスだった。イーデリックも強いが、如何せん実戦経験が少なかった。よってレベルも低い。オーガスやニコラーク、ダーレントほどの経験はなかったのだ。それでもこの4人が飛び抜けて強い。

「ローマイク、アントム、マルコット、メレデリック、イーディ、ジェラム、レイモンは魔法使いを庇うことを最優先になさい。わたくし、ミュリーラ、ユーフィア、ジャスリン、ニコラウン、ルドレンダをです」

 魔法使いが女性であることが多いわけでは無い。ただ公女隊に入隊する酔狂な人間が、女性だったり身分の低い者であったりしただけだ。だがどちらにしても女性でかつ魔法使いである人間は攻撃されることに弱い。盾は必要だった。絶対に。

「ルドウェン、エグバート、メレデリック、マドリーン、トラヴィスは遊撃に回りなさい。薬草を多めに持って、回復をしつつも攻撃の隙を逃がさないように」

 機動力に優れる者を遊撃に回し、そうしてソニアは言葉を切った。

 視線を感じる。

 ギル、ダンカリー、ジェフリー、ハンナ、メロディス、ボビー、パット、ヒュー。

 これが普通の魔物なら、彼らにも出番はある。だが今回の相手は魔族だ。実戦経験が少なく、つまりはレベルも低い彼らにとって危険が大きすぎる。

「あなた方は、ヒーストル村で待機を命じます」

 戦闘に必要な物資はすでに運び込んだ。狩人であるイーディらには矢を、体力を回復する薬草や魔力を回復するのに必要な魔法の聖水も持ってこられるだけ持ってきた。だから非力な彼らにはこれ以上ここにいさせてはならない。

「ですがソニア様――」

 悪く言えば馴れ馴れしい、よく言えば人なつこいパットが反論する。その言葉に被さるような絶叫。

「ソニア様、繭が――!!」

 繭が激しい明滅を繰り返し始めていた。

「攻撃の準備を!!あなた方は後ろに下がっていなさい!!」

 既に彼らを気遣う余裕は失われた。

 いつでも魔法を放てるよう、詠唱を開始する。魔法使い達はそれにならい、ミュリーラが全員の防御力を上げる魔法を紡ぎ終えた。ふわり、と肌が温かくなる感触に、呪文の成功を感じる。

 主要な攻撃役である4人が最前列に、その後ろや横に遊撃隊が、そうして魔法使いを守る盾の騎士、そうして魔法使い達。そして去れとの命令を聞けなかった後方支援班が。

 次の瞬間に巨大な火の玉に包まれた。



 火の玉が消えた瞬間、立てていた人間は少なくはなかった。

 目覚め立ての魔族が放った魔法を切り裂いて最前線の騎士達は善戦していたし、ソニア達魔法使いも大半が耐え抜いていた。が、犠牲は早くも小さくはなかった。

 後方支援班の8人は、その一撃で沈んだ。まだ生きている。まだ息の根はある、という希望だけを持ってソニア達は魔法を打ち続けた。

 ソニア達を守っていたメレデリックとイーディは、倒れたまま動かない。彼らもまた息はあると信じた。信じるしかなかった。そうして遊撃隊のルドウェンとトラヴィスはよろめきながらも立っていた。

「ミュリーラ!」

 詠唱の合間に、ミュリーラに指示を出す。細かい指示を出さずとも意図はミュリーラに通じ、彼女が詠唱を開始する。間に合え、と念じた祈りも空しく、次の魔族が弱り切った獲物を切り裂く。

「トラヴィスっ!!」

 二人の少女から恋い慕われているトラヴィスを妬む者も多かった。そうした一人であるエグバートが悲痛な叫びを上げた。上半身を切り裂かれて倒れ伏したトラヴィスはピクリとも動かない。中衛まで切り込んできた魔族を、精鋭のニコラークとダーレントが挟み討つ。両脇から斬りかかった二人でも、魔族の体を僅かに切り裂くばかり。反対に斬りかかってきた魔族の長い爪を、ダーレントはギリギリ食い止めた。

 ソニアが魔族に氷の刃を突き立てる。魔族の肩に突き立ったそれを、魔族は煩わしそうに振り払った。その隙にイーデリックが魔族の背後から斬りかかる。それを察知したのか、魔族は軽く地を蹴って空中に逃れた。そうして降り立つ先には回復魔法もこなす元神官のニコラウンが。

 あわや、という所でニコラウンを庇ったのはアントムだった。魔族の爪を止めるアントムの後ろからマドリーンが魔族の首を狙う。

 瞬間、魔族の目が赤くカッと光った。

「――っ!!」

 爆発は小規模だった。だが、その爆発でアントム、マドリーン、ニコラウンが血まみれで地に倒れた。

「このぉっっ!」

 エグバートとローマイクが斬りかかる。その彼らの足元に現われる禍々しい魔法陣。

「退きなさいっ!」

 ソニアが魔法陣を散らそうと烈風を呼ぶ。が、その魔法陣から飛び出した、巨大な何者かの牙が二人を切り裂く方が早かった。そうしてその凄惨な光景に一瞬動きが止まった魔法使い達に向けて、魔族は水の礫を飛ばす。

「きゃぁぁぁぁっっ」

 幾つもの水の礫が、ユーフィアとエイミリアの腹を突き破った。どうにか風の盾で凌いだジャスリンが、親友二人の血だらけの姿に呆然となった。

「ジャスリン!!気をつけ――」

 叫ぶようなソニアの声は途中で途切れ、音にならない吐息が洩れた。

 心底嬉しそうな魔族が、ジャスリンに向けて打った炎の球が、彼女を一瞬で飲み込んだ。彼女を守ろうと走り込んだマルコットと共に。

「――姫、後ろに」

 ソニアでさえ棒立ちになった、その瞬間にオーガスがソニアを後方に誘導する。その声でソニアは己を持ち直す。

「攻撃を続けなさい。わたくしが死んだとしても」

 そうして詠唱を始める。

 魔族の魔法には耐えられても、そいつの持つ毒々しい爪に敵う気がしない。だから近寄られたら終わる。距離を意識しながらソニアは詠唱を続ける。ミュリーラも、ルドレンダも。騎士達は魔族の目に注意しながら猛攻を加えた。

 しばらく、といってもソニア達には長い時間に感じられた。その長くて短い時間、公女隊はようやく魔族との戦いで小康状態を得た。誰も死なず、傷ついてもすぐに癒やせる戦いが続く。少しずつ、魔族の体力を削っていく。このままいけばあるいは、そうソニア達の胸に希望が宿り始めていた。



 生き残ったのは、この時点で9人。

 女性魔法使いのルドレンダ、騎士ニコラークにダーレント、狩人であったジェラムとレイモン、ソニアの騎士オーガスと侯爵家次男イーデリック、ソニアの盟友ミュリーラと、そうしてソニア。

 魔族を倒すのには、まだ犠牲が必要だった。



読んでくださってありがとうございます!!


いっぱい死んでる……辛い。

定員30人にするんじゃなかったです……。

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