あとがき、というか解説、というか、今後の見通しというか、「うつほ」萌え語りというか
最終回の「あとがき」の欄ではちと重くなりそうなんで別途に解説です。
さてまず。
何でこの話をやろうと思ったか。
単純です。
「うつほ物語」の萌え話をできる人が周囲に誰もいなかったからです。
だってこの話、ホントに面白い。
無駄に物の描写とか多いとかいうことはあるけどまあそれはブランド品を並べて書いた昔のなんとなくクリスタル的なものだと思うし。
まず。
・男性キャラはやたら多くて性格も立ってるし。
(天才・ストーカー・いい人・転校生・スケベ・へたれ・俺様等)
・やってることは人間くさい。
(兼雅とーちゃんは息子に言われてしぶしぶ仲忠母以外の妻のとこに日を決めて通うし、そもそも仲忠だって妻がお産で死にそうな時には「女一宮が死んだら僕も死ぬ!」なんて言っちゃうんだし)
・時には何かおいおいBLか的な友情もあるし。
(結婚してもう何年にもなるのに妻からツンされて困った仲忠くんは涼くんとこへ行って一緒のふとんに寝るし)
・女性がただ居るだけではなく強いし。
(大姫である仁寿殿女御の発言は父親に重要視されるし、政権交代の時一番この一族で気丈だったのはあて宮だし)
ともかく滅茶苦茶面白い古典なのに、知られてないのが悔しくてたまらなかったんで、「できたら読んで!」という紹介のつもりなのです。
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で。
今回この話の種本となっているのは、
岩波書店版『宇津保物語 一〜三』(日本古典文学大系巻10-12、河野多麻校注)です。
小学館の全集(重い!)の方が上下で対訳載っているのですが、岩波版の方が、「読み物として面白かった」ので採用。
つか、何よりも、ワタシ自身がこちらの版で、注釈のみで何となく楽しく読めてしまったというのが大きかったです。河野多麻せんせいはきっとこの物語に萌えてたとしか思えない校注のつけっぷりです。
ワタシはこの岩波版を京都の「古本まつり」で一冊300円の3巻セットで買ったんですね。
それがことのほか面白かったので、もう書き込み書き込みしながら読みました。
ただこの二つで、名前の表記や「どっちが涼の奥さんになるか」とかそういう点が違うんですが、ワタシはあえてこっちに統一しました。
なので、小学館版では正頼さんちの男子は「*澄」なんですが、ここでは岩波版の「*純」を使ってます。
また、話の中で重要キャラにしてしまった(……この時期の女性キャラの動きは鈍いので)十の君「今宮」ですが、岩波では彼女が涼の奥さんになります。
ですが小学館のでは十四の君「さま宮」(順番が繰り上がって、けす宮が十三の君になってる)なんですね。
研究としてはそっちなのかもしれませんが、何というか、ここは仲忠が女一宮と結婚するという予定から、その親しい歳の近い叔母、ということにしたかったのです。
ただしこの話、その古典の方では、巻が進むからといって、そのまま時間が進む訳でもない。
まずは以下が岩波版の巻名。全20巻。ウィキからコピペしつつ。
1.俊陰
2.忠こそ(ただこそ)
3.藤原の君
4.嵯峨院
5.梅の花笠/別名:春日詣、桂
まずワタシはここまでを「設定」「過去のこと」とすることにしました。
特に1.2.3.は全く独立した三つの話として読めます。
1.は仲忠くんのお祖父さんに当たる清原俊陰が海外に渡ってあれこれする話ですし、そちらの方で有名です。ですがその一方で、仲忠くんとその母上のおはなしでもあるのです。
俊陰中心の話で作ったといえば、諏訪緑さんの「うつほ草子」があります。オリエンタル風味で面白いです。
ですがワタシはあくまで仲忠くん中心の、青春グラフィティとして作りたかった訳です。
2.「藤原の君」に出てくる、とんでもない男性キャラクター達。諏訪さんとかは流れ的に無視してる部分ですね。
求婚譚としても、バラエティにあふれすぎてます。
同母妹に焦がれて本当に死んでしまう仲純くんだの、焦がれてるとしながら何の実際的行動に出さない実忠とか、紹介したくてたまりませんでした。
平安時代からストーカー粘着気質はいるんだよ、とか、だけど何故か「馬鹿な奴ほど愛される」とか、そういう何とも言えない人々のこととか。
藤英の、たぶんこれは作者のメアリ・スーじゃねえか、と思える部分とか。
ともかく男性キャラが生き生きとしている訳です。
無論「三奇人」上野宮・三春高基・滋野真管は言わずとも。ただし個人的には上野宮は、孫王の君の父親であることから、も少し「ただの馬鹿」じゃなく、何か「馬鹿と思われてるけど」なひとにしたかったと。
3.「忠こそ」は本当に彼だけのサイドストーリー、継子いじめの話ですから、のちのちに仲忠くんと石帯の話が出た時に使おうと思ってます。
ところでこの「こそ」なんですが。
原文中ではあて宮やけす宮とかでも「あてこそ」「けすこそ」の様に、親とかから言われる「……ちゃん」とかそういうものらしいんですが。どうにも語感が合わないので、あて宮、忠君という風に変えました。
4.5.は前三本をベースにして話を始めた、という感じですが、時間軸的にだぶっている部分が多いので、これも「過去にあったこと」扱いにしました。
つまり、今回の話は、
6.吹上〔上〕
7.吹上〔下〕
からワタシは始めた訳です。そして、
8.祭の使
9.菊の宴
10.あて宮
ここで一端キリにしました。
ここまでが仲忠くん達の、結婚とか政治とか関わってくる前の若者、友情とか青春とかそういうのだけでやってこれた時代だと思ったからです。
仲忠くんの友人、仲純くんは亡くなり、仲頼くんは出家してしまいます。彼等は仲忠や涼よりやや年上ということもあるんでしょうが、その純粋さから世俗から消えざるを得なかったと思います。良く言えば。
悪く言えば、現世を生きるには弱すぎて、ドロップアウトした、とも言えます。
仲純くんはその後、あて宮の心に影を落とすし、仲頼くんの出家先は友人達のオアシスとなったりします。
で、この宴のとこで「青春は終わった」という感じで締めたかったと。
で、次回からは、
11.初秋/別名:相撲の節会、内侍のかみ(ないしのかみ)
です。
ここでは仲忠くんの母上が中心です。
母上――― 俊陰女とも称される彼女が、菊の宴で琴の琴を演奏し、尚侍に任命される話です。
あまり長くはならないです。
タイトルもまあ…… わりとまんまなものをつけるでしょう。
それが終わったら、今度は仲忠くんの「結婚/新婚ものがたり」になります。
仲忠くんと涼くんは同時に結婚することになります。それぞれにあった人を。
と、同時期に仲忠くんが清原の土地で「先祖の蔵」を開けることによって、祖父・俊陰の日記を発見、その内容を帝に講読する――― すなわち、俊陰の物語をここで語ることになります。
仲忠くんも「いぬ宮」という女の子のお父さんになってもうめろめろです。
12.田鶴の群鳥/別名:沖つ白波
13.蔵開〔上〕
14.蔵開〔中〕
15.蔵開〔下〕
ここまでは一応2006年の辺りで作ってあります。
それに、この辺りはもう時間の流れがそのままするすると進みますので、構成を考える必要性があまり無いということもあります。
その後は、新たな読解作業が必要なんでテンポ落ちるでしょう。
楽しいてんすが。
16.国譲〔上〕
17.国譲〔中〕
18.国譲〔下〕
ここでは東宮への譲位、政権交代に関するどたばたが繰り広げられます。
一応多少の暗躍もない訳ではないですが、基本的にのらりくらりとしたものです。
ちなみにこの時仲忠くんの第二子ができるんですが、難産で、もう大変。
ここんとこはもうぜひ。
そして最後。「音楽の話」のフィナーレにふさわしい、琴の琴の継承に関する話です。
19.楼上〔上〕
20.楼上〔下〕
いぬ宮がある程度の歳になったので、清原の土地に楼を建てて、そこで一年みっちりと母とも離れて、仲忠母から手ほどきをうけるという話。
最後は発表会って言うか…… お披露目? そして不思議なことが起こる、と。
仲忠くんにとって全てのことが大団円、という。
2006年には頓挫してしまったのですが、今は格別他に書きたいものもないので、最後まで行けたら、と思っております。
それでは今回はお読みくださってありがとうございました。
そしてこの先もよろしかったらぜひ。




