コーディネート
「お客様、少し宜しいでしょうか?」
待つこと数十分、先ほどの店員がやってきて声を掛けてきた。
「何でしょうか?」
「お連れ様の服を選ばせて頂きましたので、ご確認をお願いしたいのですが。」
思ってた以上に早かったな。
「分かりました。」
「では、こちらへどうぞ。」
そう言って連れて行かれたのは試着が出来る小部屋だった。
へぇ…試着室じゃなくて、こんな部屋も有ったんだ。
そして、そこにはジャージ姿では無く、すっかりと見違えたアリシアが立っていた。
「ど、どうかな?」
アリシアが恥ずかしそうに聞いてきた。
秋らしいブラウンのフレアスカートに白いシャツ。その上に淡いピンクのカーディガンを羽織っていた。
「おー、似合うじゃ無いか。」
「そっかな? えへへっ♪ もう1着はこれね。」
ハンガーに掛ったままだが、チェック柄のプルオーバーに黒のパンツを体の前に持って来て見せてくれた。
さすがに目の前で着替えることまではしないみたいだ。
「ほぅ、こっちも雰囲気が変わって良い感じじゃん。似合ってるぞ。」
「ホント? で、部屋着って言われたのがコレ。」
こっちはシンプルに白と灰色のスウェットタイプの服だ。これなら冬でも着れそうだし問題無さそうだ。
「うん、良いんじゃない? これ全部で幾らですか?」
俺が店員に聞くと、メモをしていたらしく、リストと値段を見せてくれた。
「ふむふむ、下着や靴下とかを含めて全部で26,136円か、思ってた以上に安かったな。」
「いかがでしょうか?」
「大丈夫です。あ、今着ている服ってそのまま着て行っても良いですか?」
「では、タグの方を切らせて頂きますね。」
「宜しくお願いします。」
俺は会計を済ませ、お店を出た。
「ヨシカズさん、服ありがとうございます。」
「まぁ、何時までも俺のジャージ姿ってのも可哀相だしな。」
「そうですか? 今まで来ていた服より着心地も良かったですし、あれでも構いませんでしたよ?」
「俺が気にするの。」
「…はい。ありがとうございました。」
アリシアは嬉しそうな顔をで喜んでくれた。
「それにしてもブラジャーでしたっけ? あの下着って初めて付けてみたのですけれど凄いんですよ!
ほら、跳ねても安定しているし、それに先っぽが擦れなくて大丈夫なんですよ!
後、ショーツ? もピッタリしていて動きやすいんですよ!」
アリシアはそう言ってぴょんぴょんと跳ねて見せた。
すると、小ぶりでもぽよんぽよんと揺れる胸は眼福だ。
「そうか、良かったな。」
昨日の夜に洗濯するのに確認と言うか見えてしまったのだが、確かにブラジャーみたいな物は無かったし、下はなんかゴワゴワしたズボンを切っただけの物だった。
そりゃあ着心地も肌触りも色々と違うだろうさ。まぁ何にせよ喜んでくれて良かった。
「それじゃ、次は靴屋だな。」
俺はXYZマートへと行くことにした。
「うわっ、すっご~い!!」
ここでもアリシアの目は興味津々だ。
レディース物の靴と言うと、どんなのだ? 必要が無かったからあまり気にしたことが無かったんだが…
うわっ、こんなにも厚底のサンダルって歩きにくそう…と言うか歩けるのか? 他にはパンプスや、ローファー、ハイヒールにブーツと色んな種類が有るな。
「アリシアは、どんな靴が良いんだ?」
「う~ん、これなら元々履いていたのと似た様な感じの靴なので、履きやすそうですね。」
アリシアが選んだのは足首まで有る革のショートブーツだ。値段は…3747円か。
「それだけで良いのか?」
「え? そんなに沢山買って頂けるんですか?」
「思ってた以上に安かったからな、あと1足くらいなら良いぞ。」
「え、じゃ、じゃあ、ヨシカズさんが履いているのと同じ感じのが良いです。」
「スニーカーか、だとするとこの辺りか。」
色んな種類のスニーカー売り場へとやってきた。
「あ、これが良いです。」
デザインは少し違うが、今俺が履いているのに似た感じのスニーカーだ。
何となくお揃いだと照れくさいな…
「それが良いのか?」
「はい♪」
「そ、そうか。じゃ、じゃあそれにするか。
…っとその前に、アリシアの足のサイズを測るか。」
俺は足のサイズを測るための板の所に行き、
「アリシア、これに足を乗せてくれ。」
「あ、はい。」
アリシアがサンダルを抜いて板の上に足を乗せた。
俺は踵を合わせて足のサイズを測る。
「23.5cmだな、よし! ちょっと待ってろ。」
俺はアリシアの足のサイズのショートブーツとスニーカーを取りに行く。
「ほら、確認するから履いてみろ。」
「うん。」
アリシアがゴソゴソと靴を履いている。
「ピッタリ!? 凄~い!!」
「そんなに驚く事か?」
「え? だって靴ってオーダーメイド以外だとキツイか緩いかしか無いからね。
だから、出来合いでピッタリって凄いんだよ!!」
「あー向こうだとそんな感じなんだな。あ、そっちの靴はどうだ?」
「うん、こっちもピッタリだったよ~♪」
「どこかキツイ所とか、当たって痛い場所とかは無いか?」
「うん。大丈夫~」
どうやら問題無さそうなので購入することにした。
服屋と同様に履いて帰ることを伝えるとタグを切ってくれた。
どうやら履いていくのは俺と同じ感じのスニーカーらしい。
「お揃い~♪」
「そ、そうだな。」
嬉しそうにしているアリシアを見ているとちょっと照れくさくなった俺であった。