奇跡
飲み会から3ヵ月が過ぎた。
アリスさん? あの子は良い子で可愛いとは思ったが、俺的にはそれだけだったからな。
結局あの後は会うことも無かったのでそのままだ。
その後以降は特に何事も無く過ごしている。
まぁ、気持ちが楽になったのか、少し趣味らしきことをする様になったのは良い傾向かもしれない。
「今日は部屋の片づけでもしようかな。」
もうしばらく部屋模様替えもしてないし、気分を変えるついでに思い切ってやってみるか。
どうせなら本格的に掃除もしてしまおう。
まずは断捨離から行うことにする。
要る物、要らない物を仕分けしてしていく。
そしてタンスの奥に段ボールが置いてあるのを見つけた。
いや、正直に言えば置いて有ることは知っていた。中身はアリシアの着替えだ。
「どうしよう。これ…」
アリシアが帰って来たときに無いと困るよなと思って取っておいた…すまん、ウソ付いた。
これらを捨てたら二度とアリシアと会えなくなるのでは無いだろうか? との恐れから捨てられなかったのだ。
箱を開けると、アリシアに買ってあげた私服2着と、…コホン、替えの下着が入っていた。
何だよ、何もして無いからな? だいたい未使用品も…って何言ってんだ? 俺は…はぁ。
「だけど、そろそろいい加減にしないとなぁ…」
この間帰省した時にも、彼女がどうのとか結婚がどうのとか言われたしな。
まだ早いとは言ったが、「あんたはデレデレしてると何時までも結婚しなそうだからね。」とか言われた。
さすがは母親だ。俺のことをよく知ってる。
「と、とりあえず捨てる方に置いて後で考えるか。」
俺は部屋の片づけを続けた。
・・・・
「やっと終わったぁ~」
部屋の整理が済み、随分と雰囲気は変わった。
後は要らないゴミを捨てるだけだ。
「・・・・」
俺はゴミ用の段ボールを見つめている。
「…そうだな。捨てるか。」
俺は捨てることを決断した。
右手の薬指のリングを外そうとした瞬間、部屋の有る一点へと空気が集まる様に動き、光り始めた。
「!! これって、もしかして!?」
カッ!
フラッシュを焚かれたような光が溢れ、俺は思わず目を瞑る。
光が落ち着き、俺は目を開けると…
「…成功…かな?」
そこに黒いローブを羽織った1人の女の子が居た。あれは!?
忘れもしない! あのときより少し成長したアリシアがそこに居たのだ!!
「アリシア!」
「ヨシカズさん? ヨシカズさん! ヨシカズさん! ヨシカズさああぁぁぁ~~~ん!!」
アリシアが俺に飛び掛かって抱き着いて来た。
「もう会えないかと思ってました。うわああぁぁぁ~~~ん!!」
「よしよし、もう大丈夫だ。」
俺は優しくアリシアの頭を撫でてあげるのだった。
「おかえり、アリシア。」
「だだいま帰りました。ちょっと遅刻しちゃいましたけどね。えへへへっ♪」
アリシアが涙を流しながら笑顔でそう言ってきた。
「そうか、アリシアは相変わらずおっちょこちょいだな。」
「うん、うん、うん。」
こうして俺達は再び出会うことが出来たのだった。