その後
結局アリシアが帰ってくることは無かった。
次の日、俺はショックの余り仕事を休んだ。
とてもじゃ無いが仕事に行ける状態では無かったためだ。
「どうすれば良いんだ…」
俺は頭を抱えて葛藤する。
「そうだ! もう一度アリシアを召喚すれば!」
例の本を使って…って、あの本はアリシアにあげてしまったんだった!! 何てこった…
うろ覚えで魔法陣を書いて呼び出しをしてみたが、当然と言うかやっぱりと言うか、魔法陣には何の反応も無かった。
・・・・
あの後も悪魔召喚の情報を集めてはみたが、役に立ちそうな物は何も見つからなかった。
ついでに言うと、どの召喚術を試してもアリシアはもちろんのこと、悪魔自体も召喚することは出来なかった。
例の本を手に入れた骨董市にも行ってはみたが、やはりあの本を売っていた人はもちろんのこと、同じ様な本を見つけることは出来なかった。
半年色々と手を尽くして頑張ってはみたが、結局どうしようも無く、俺はアリシアのことを泣く泣く調べることを諦めることにした。
俺の生活は元に戻った。
・・・・
アリシアが消えてから1年が経過した。
一時期は酷かったが、ようやく俺も普通の生活を送れるようになった。
会社と家を往復する以外は、必要最低限の買い物するだけの生活が普通と言えるのかは微妙な気がするが…
ただ、灰色な毎日が経過する日々を送っている。
変わったことと言えば、俺はカレーが食べられなくなったってことだ。
恐らく無理をすれば食べることが出来るかもしれないが、アリシアを思い出して泣いてしまうので俺は食べることをしなくなった。
・・・・
アリシアが消えてから2年が経過した。
俺は仕事以外の趣味を一切しなくなった。
その御蔭で、仕事の業績は右肩上がりになり、俺は若くして係長に出世したが、俺にとってはふ~んとしか感じなかった。
そして上がった給料も使う予定が無く、貯まっていくだけなのは何とも言えない感じがする。
・・・・
アリシアが消えてから3年が経過した。
仕事人間の俺を見かねた同期の佐々木が女の子を誘って飲み会を開いてくれた。
行きたくは無かったのだが、佐々木の顔を立てて参加することにした。
「それじゃあ、言い出しっぺの俺が仕切らせて貰います。乾杯~!」
「「「「「乾杯~!」」」」」
男子3、女子3の飲み会が始まった。
「まずは自己紹介だな。俺は佐々木 亮太、25歳で只今彼女募集中で~す!」
「「「わ~!」」」
「僕は清水 たちゅあ…ごほん、達也です。同じく25歳です。宜しくお願いします。」
「噛んだ? 可愛い~!」
「えっと、俺は木村 良和。同じく25歳です。宜しく。」
「こいつ俺と同期なのにもう係長なんだぜ? 羨ましいぜ。」
「すご~い!」
「ちょ! 個人情報を勝手にバラすな!」
「何だよ、女の子に知って貰う場所なんだからそれくらい良いじゃんかよ。」
「まあ良いけどさ。」
「じゃあ、次は女の子の番な。右から宜しく~」
「え~鈴木 瞳です。24歳です。よろしく~」
「瞳ちゃん、彼氏は~?」
「え~、ないしょです。」
「何だよそれ~」
「良いでしょ、はい次。」
「藤崎 望です。23です。宜しくです。あ、彼氏は居ません。」
「「おぉ~!!」」
「じゃあ、最後は私ですね。山下 アリスです。日系ハーフですが、見た通り殆ど日本人と変わりないのでハーフとしての恩恵はありませんでした。」
「もしかしてアリスちゃんのその毛って地毛?」
「あ、はい。染める必要が無いので痛まないし、お気に入りだったりしてます。」
確かに茶髪で綺麗な髪をしている。
ふと、アリシアもこんな髪質してたなぁ~と思い出した。
「ちょっとお手洗いに行ってきますね~」
そう言って女性陣が席を離れた。
即座に佐々木が声を掛けてきた。
「木村、お前アリスちゃん狙いだろ?」
「いや、そんな訳じゃないけど。」
「何だよ、ジッと見てたじゃないか。興味が有ったと思ったんだけど?
あ、俺は瞳ちゃん狙うんで宜しく~」
「あ、ずりーぞ、俺も瞳ちゃん狙ってたのに。」
「じゃあ、勝負だな。」
「恨みっこなしだぜ?」
佐々木と清水がジャンケンを始めてしまった。
俺は特に気になる子は居なかったからどうでもいいけどさ。
ただ失礼がない様には気を付けるつもりだ。
「おまたせ~」
そのタイミングで女性陣が戻ってきた。
「ね~ね~、何のジャンケンしてたの?」
「ん? あ~えっと、そ、そう、今日の奢りの勝負だったんだ(汗)」
「今日は男性陣の奢り!? やった~♪」
「ちょ、それは勘弁してくれ~」
「あはははっ、冗談だって♪」
・・・・
「良和さんって料理作られるんですね、凄いです!」
「いや、趣味程度だから大したものじゃないよ。」
「そんなこと無いです。私のお兄ちゃんなんか放っておくとカップラーメンばっかり食べてるんですよ?」
「それは酷いな。」
「でしょ?」
俺は何故かアリスさんに気に入られていた。いつの間にか名前呼びに変わってるし…女の子と話しているのは楽しいから良いけどさ。
「ごめん、ちょっとトイレ。」
「いってら~」
用を済ませてトイレを出ると、そこにアリスさんが居た。
「お、どうした?」
「良和さん、このまま出ちゃいませんか?」
アリスさんが扉の向こうを向いてそんなことを言ってきた。
「いや、勝手に抜けたら他の人に悪いし、飲み代とか払って無いしね。」
「ぶぅ~」
アリスさんが脹れているが、しょうがないと思う。
「あっ…」
「どうした?」
「い、いえ、何でも有りません。」
何だろう? 俺の右手を見ていたみたいだが、ひょっとしてこれか?
俺の右手の薬指にはアリシアとのペアリングが輝いていた。
女々しとは思うが、外すことが出来なかったのだ。
・・・・
「じゃあ、今日は有難う~」
「またやろうね~」
「ばいばい~」
お店の前で解散となり、女性陣と別れた。
俺は今佐々木と一緒に駅に向かって歩いている。
「木村、アリスちゃんと良い感じだったじゃん。」
「そうか?」
「連絡先とか聞いたのか?」
「いや?」
「馬鹿かお前! 何で聞かなかったんだよ!!」
「有ったばかりで連絡先を聞くのも失礼じゃないか? それに…いや、何でも無い。」
「失礼って…はぁ、駄目だこりゃ。」
「溜息付かれるほどか? それより佐々木はどうだったんだよ?」
「俺? 俺はバッチリだぜ? 今度遊びに行く約束もしたしな。」
「いつの間に…」
「まあいい、今度会った時には聞いとけよ!」
「…心に留めておくよ。」
こうして飲み会は終了した。
俺も久々に楽しい時間を過ごせたので、参加出来て良かった。




