箸
スマホのアラームが鳴り、目が覚めた。
昨夜は寝るのが遅かったが、それでも目覚めは良かった。
アリシアも目が覚めたみたいだ。
「おはよう。」
「おはようございます。」
少し照れくさいが、しっかりと顔をみて挨拶出来た。
さて、朝食を作るとするか。
「アリシア、ご飯を炊くことが出来るか?」
「多分大丈夫だと思います。」
「じゃあ任せるよ、俺はオカズを作ることにするわ。」
「任せて下さい!」
横目でアリシアの作業を確認しながらオカズの用意をする。
「んー、シャケの切り身で良いか。」
シャケの切り身を2つ取り出し、コンロの魚焼きにセットし、火を点ける。
大根を擦って、皿の隅に盛っておく。
後は味噌汁が欲しいな。朝から作るのも面倒だしインスタントで良いか。
ケトルに水を入れてお湯を沸かす。
アリシアの方を確認すると、しっかりとお米を洗い、水を入れて炊飯ジャーへセットしていた。
どうやら1度見た物については問題無さそうだ。
お湯が沸いたのでお椀にインスタント味噌汁の素を入れてお湯を注ぐ。良い匂いだ。
シャケも焼けたので皿へと移し、味噌汁と一緒にテーブルへと運ぶ。
「しまった、ご飯が炊ける前にオカズが出来てしまった。」
ご飯が炊けるまで後10分は掛かる。
「どうしますか?」
「どうしようもないから、待つしか無いかな。」
「あ、そうだ! ヨシカズさん、お箸を使ってみたいです!」
「確かお客用の箸が有ったな。それを使ってくれ。」
「はい。」
食器棚の引き出しから使ってない箸を取り出してアリシアへと渡した。
漆塗りの紅色の箸なので丁度良かった。
「わぁ! 綺麗な色です。
ありがとう、ヨシカズさん。」
ふと思いついたので、小皿を2枚用意して、片方にビー玉を入れてみた。
本来だったら大豆とかの豆が良いんだろうけど、家には無いから仕方がない。
それをアリシアの前に置いた。
「これは何ですか?」
「箸の練習用と思ってさ、このビー玉を掴んで隣の皿に移してみると良いよ。」
「やってみます! えっと、菜箸の持ち方と一緒で良いんですよね?」
「ああ。」
アリシアが箸を持って、一生懸命ビー玉を掴もうと頑張っている。
「うぅ…難しいです。ヨシカズさん、お手本見せて貰って良いですか?」
「いいぞ。」
アリシアから箸を受け取り、ビー玉を掴む…掴む…掴む…むむっ?
「掴めませんね。」
これは思ってた以上に難しいぞ? ざらざらして角ばっている割り箸なら掴めそうな気がするが、丸い箸だとツルツル滑って上手く掴めない。
何度か挑戦していると、掴めた! と思ったら落ちた…
「ヨシカズさんでも難しいんですね。」
「うっ…面目ない。」
その時、ご飯が炊けた音がした。
「ほ、ほら、ご飯が炊けたぞ!」
俺は誤魔化すことにした。
茶碗にご飯をよそってテーブルに運ぶ。
「じゃあ食べようか。」
「私箸に挑戦してみます。」
アリシアはやる気だ。頑張れ。
「あれ? 掴める?」
なんとアリシアは箸使いをマスターしていたみたいだ。
どうやらビー玉が難しすぎただけだったみたいだ。
朝食を食べ、着替えて身支度を済ませた俺は会社に行くことにする。
「じゃあ、アリシア後は宜しくな。」
「任せて下さい。」
「お昼は悪いがご飯で適当に食ってくれ。
もしオカズを作るのが無理なら、あそこの缶にふりかけが入ってるから、それをご飯に掛けて食べてくれ。」
「ふりかけ?」
「オカズを細かくして乾燥させたものだな。結構うまいぞ。」
「わかりました~」
「じゃあ行って来る。」
「いってらっしゃい~」
にこやかに手を振って送り出してくれるアリシアを見て、俺は気分よく会社へと出発するのだった。




