映画
「映画鑑賞をしよう」
朝食をとり終わるとすぐに先輩がそういった。
「映画鑑賞ですか」
先輩と一緒に映画館に行くところを知り合いに見られたくないな。
「あぁ、もちろん映画館では無く。ここでだ」
僕の考えていることが顔に出ていたのか先輩は言った。
「ならいいですけど。いまから借りに行くんですか」
「いや。こんなこともあろうかと、家から持ってきた」
先輩はそう言うと、がさごそと自分の箪笥を漁りだした。
その時、黒い透けた生地の見てはいけないものが見える。
「せ、先輩は準備しててください。その間に僕は食器を片づけておきます」
上ずった声が出てしまったが、気にする余裕がなく僕は赤い顔のまま慌てて、台所へといき扉を閉める。
☆
無心に食器を念入りに洗うことで気持ちも、食器も片付けられたので先輩のいる部屋へと戻った。
「準備は出来てるぞ」
先輩はペンギンのぬいぐるみを抱きしめて言う。
「あっ、はい。で、何を見るんですか」
尋ねると、先輩はその映画のパッケージを見せてきた。
そこには、おどろおどろしいゾンビが書いてある洋画のようだ。
よりによって、ホラーですか。
「なんかもっと違うものは無いんですか」
「怖いのか。怖いなら変えるが」
「べ、別に怖くはないですよ。でも、変えてくれるのならやぶさかでは無いですね」
「なんだ、そのツンデレ風は。まぁ怖くないならこのままでいいだろう」
先輩は意地悪そうな顔を浮かべている。
うぅ・・・。どうしよう。
怖いけど、見てみようかな。
一人では絶対見たくないが、今は先輩もいるしまだ朝だし。
「見てみようかな」
「そうか、では見よう」
先輩はすごくいい笑顔だった。
☆
それから、二時間ほどで映画は終わったのだが案外僕は平気だった。
というのもそのゾンビ映画が血がプシャーとなったりトマトみたいになってたりしてたけど、なんだか思った以上に作りも感が高くあまり、映画に感情移入ができなかったからだろう。
あと部屋が明るかったからかな
「なぁ。トイレへと行きたくないか」
ただ、隣にいる先輩はどうやら駄目だったらしく青い顔をしてがたがた震えていた。
「えっと。大丈夫ですか」
「あぁ、大丈夫だトイレぐらい一人で行けるとも」
「いえ別にトイレの話はしてないですが、怖いなら付いていきますが」
「だ、だから大丈夫だっと言っている」
そう言い先輩は恐る恐るとトイレの方に向かって歩いていく。
「あんなに怖いとは聞いてないぞ。高崎めぇ」
先輩が小声で言ったその言葉は聞こえないふりをしといた。
お読みいただきありがとうございます