風呂
「お風呂ができていますので、入ってください」
「先輩、先に入って来てくださいよ」
「家主である君から入るべきだ」
先輩は何かを思いついたのか悪い顔をした。
嫌な予感がする。
「それとも、君は私の残り湯に入りたいのかな」
「何言ってるんですか。それじゃあ僕が変態みたいじゃないですか」
「だが、後で入りたがるという事はそういう事だろう」
濡れ衣だった。
「ただ、僕は男の後に入るのは嫌じゃないのかなと思っていまして」
「それこそ、何を言っているのかだ。昨日私は君の後に入ったのだぞ」
そういえば、そうだった。
あれよあれよと話が進み理解が追いつかなかった事もあり、配慮に欠けていたのだった。
「あの時は僕の配慮が足らなかったのです」
「そういう事にしといてあげよう」
先輩の悪い顔にイラッとした。
「それでだ。どちらも譲り合って話が進まないのであれば後はアレしかあるまい」
「あれですか」
理解はしていないがロクでも無い事だという事は解る。
「勿論。二人仲良く入るのだ」
「だ、ダメですよ何を言ってるんですか。破廉恥です」
先輩はからかっているのか、それとも本気なのか区別がつかない。
「何を言うか。古き良き時代から、混浴と言う文化は有るのだぞ」
「確かにありますが。恋人でも無い二人が一緒にとか破廉恥じゃないですか」
「それは違うぞ。混浴が破廉恥なのではない。混浴を破廉恥なものだと思っている君こそが破廉恥なのだ」
「な、何を言うのですか。僕は破廉恥ではありません」
先輩を睨みつける。
「そうだろうか。君にやましい気持ちが有るから破廉恥だと思うのだろう。それは十分破廉恥ではないのかな」
「やましい気持ちなんてありませんよ。むしろ、先輩の方にやましい気持ちが有るんじゃないですか」
「もちろんあるに決まっている。だが、私のは乙女のような可愛らしいものだぞ」
なんで、この人は自分の首を絞めるようなことを断言していしまうのだろうか。
「そもそも、乙女ならば、真っ先に混浴を進めてくるとは思いませんが」
「青いな。乙女とて願望はあるのだ。いつの時代の話をしているのだ」
たしかに、そういう女子もたくさん要るだろう。
「ですけど、やましい気持ちがある人とでは一緒に入れないでしょうが」
「それも、そうだな」
先輩はわらっていた。
先輩は馬鹿なのかそれともそうでないのか判断に困る。
お読みいただきありがとうございました。




