#937 災禍の化け猫
今日で毎日更新は終わりです。以降はまた一日置きの更新となります。
獣魔ギルドで暫く休憩しているとリリーたちが飛び込んで来た。
「「「「大丈夫(ですか!?) タクト(さん、様、お兄ちゃん)」」」」
「大丈夫大丈夫。というかチロルはどんな報告をしたんだよ」
俺の呟きに後から入って来たメルたちが答える。
「タクト君がクエストのし過ぎで倒れたって聞いたけど、どういう事かな? タクト君」
「説明して欲しいな。兄ちゃん」
「…うん。とても詳しく聞きたい」
チロルめ。よりにもよって一番言っちゃいけない言葉を聞かせたら、いけない三人に聞かせてしまったな。
「クエストのしすぎで倒れたわけじゃないって。敵の強さと初めて試したコンボ技に予想外のデメリットがあっただけだ」
「え? また新しい技を作ったんですか? タクトお兄ちゃん」
すぐに恋火が反応する。本当は黙っていたかったが、言うまで納得しないだろうから説明した。
「永劫回帰にそんなデメリットがあったんだね」
「普通の敵はそんなことになる前に死んじゃうから誰も気付いていなかった感じ?」
「…そうだと思う。でもたぶん途中で刀を落とすことは出来ると思うよ」
「それはしたくありませんでした」
爺さんの訓練のせいもあるけど、武器を手放すのは敵を倒した後であるべきだ。敵を倒していないのに武器を手放すことは相手の油断を誘うなどの目的がない限りはするべきじゃない。
「つまりまたタクト君は無茶して倒れたわけだね」
「兄ちゃん、全然反省してないね」
「…うん。これはお仕置きが必要」
「リリーもする!」
なぜリリーも加わる。しかし次々参加者が増える。
『リターン』
俺は自室に逃げ込み、リオーネを召喚すると進化先を確認する。
キャスパリーグ
キャスパリーグはアーサー王伝説に登場する猫。キャスパリーグとアーサー王が戦う話ではエクスカリバーの攻撃をキャスパリーグは一度耐えて、アーサー王に深手を与えている。結局アーサーに倒されてしまうのだが、別の話ではアーサー王は殺されたという話もある。強さは疑いようがないだろう。
問題はこのゲームではどんな存在かだ。説明を見てみよう。
キャスパリーグ…人間に捨てられ、人間への憎しみを蓄積した怪猫。通常時は普通の猫で人間の悪意を察知すると人間に災禍の齎す存在に変貌する。幻獣の中でもトップクラスの凶暴性を誇っており、あらゆる鉱物を引き裂く爪と聖剣の攻撃をも止める毛皮を持っている。
エクスカリバーとは書かないか。まぁ、この話もアーサー王が持っていた剣というだけでエクスカリバーじゃない説もあるぐらいだからな。
説明から見ると人間の悪意を察知しなかったら、大丈夫って事か。どこまでが悪意なのかが難しいところだな。まぁ、そこは探っていくしかないな。
「タクト! いることは分かっているよ! 開けて~!」
「逃げ場はありませんよ! タクトさん! 大人しく私たちにお仕置きされてください!」
逃げ場がないと決めつけるのは良くないな。イオンよ。
「まずいの! お兄様は聖域の島に逃げ込むつもりなの!」
はい。よくできました。
『テレポーテーション』
聖域の島に転移した俺はリオーネを進化させる。
名前 リオーネ カーバンクルLv32→キャスパリーグLv1
生命力 164→214
魔力 252→302
筋力 70→250
防御力 48→218
俊敏性 166→216
器用値 100→150
スキル
浮遊Lv10→神足通Lv10 噛み付くLv1→噛み砕くLv1 堅牢Lv1 気配察知Lv14→天耳通Lv14 危険予知Lv16→第六感Lv16
他心通Lv1 空虚Lv1 重圧Lv1 光速激突Lv1 鉱石感知Lv6
採掘Lv9 透過Lv5 虚空切断Lv1 金剛装甲Lv1 万物切断Lv1
加護無効Lv1 魔力枯渇Lv1 魔力回復Lv1 魔霧Lv1 光吸収Lv1
闇転移Lv1 空間支配Lv1 魔素支配Lv1 魔素ブレスLv1 神魔毒ブレスLv1
風魔法Lv22 火魔法Lv22 土魔法Lv22 水魔法Lv22 光魔法Lv22
闇魔法Lv18 雷魔法Lv24 氷魔法Lv24 神魔毒Lv1 金剛爪Lv1
疾走Lv5→疾駆Lv5 空振Lv1 先制Lv20 暗視Lv19→精霊眼Lv19 封印の魔眼Lv1
光線Lv16→死滅光線Lv16 即死Lv1 道連れLv1 霊力Lv6 魔素化Lv1
格納Lv9 反射Lv3→全反射Lv3 宝石投擲Lv4 宝石解放Lv5 宝石創造Lv1
魔素解放Lv1 狂戦士化Lv1 逆鱗Lv1 起死回生Lv1 捨て身の一撃Lv1
覇撃Lv1 破壊の加護Lv1 幻獣の加護Lv1
物凄いステータスが急上昇したぞ。いや、今までのリオーネが低かったんだろうな。
進化したリオーネは額に宝石があるブリティッシュショートヘアとなった。目は金と青のオッドアイで毛並みに灰色だ。子猫じゃないのが少し残念だ。それではスキルチェックをしよう。
金剛装甲は体をダイヤモンドの硬さにするスキル。これと光吸収でエクスカリバーの一撃を防いだのかな?
魔素支配は魔素を支配するスキルで魔素化と併用するとクエスティングビーストのように斬られた足から魔素を出して攻撃することが出来る。また斬られた足を魔素化してくっつけることも可能。
次は俺がクエスティングビーストとの戦いで最も警戒した武器のスキルを封じて来た魔眼。それが封印の魔眼だ。どうやら装備品全てを封印可能でまた魔法や敵のスキルも封印することが出来るみたい。弱点としてはどれか一つしか封印出来ないということと魔眼スキル共通の見ないと発動出来ない点だ。
道連れはがしゃどくろとの戦いで見たスキルで自分を倒した者を即死されるスキルだ。リオーネの場合はがしゃどくろより遥かにたちが悪い。捨て身の一撃を放ち、死亡すると道連れが発動。自分は起死回生で生き残るというコンボが成立している。しかも起死回生が無くなり、死んでも幻獣の加護の効果で五分後に蘇生することが判明した。つまりリオーネは加護を封じて倒さないと死ぬことはないということみたいだ。不死身ほどではないが恐ろしい加護だよ。
最後は嬉しい生産スキルである宝石創造。これは金属創造と同じで一日一個食べたことがある宝石を生産するスキル。ということで早速パライバトルマリンを上げて生産して貰った。これで確認終了。
「にゃ~」
「ん? どうした? リオーネ?」
俺が帰ろうとするとリオーネがなんと後ろ足二本で立ち、前足二本で何かを被るジャスチャーをする。
「もしかしてフードの中に入りたいのか?」
「にゃ!」
それだ!と言わんばかりに指を指された。現実でこれが出来る猫がいたら、凄いな。ということでリオーネをフードに入れて、ホームに帰ると怒ったリリーたちが突撃してくる。
「ちょっと待て! リオーネがフードに」
「「「「問答無用!」」」」
危険を察知したリオーネが魔素を噴出し、俺の背後に漆黒の巨大な猫の姿で出現する。毛を逆立てて宝石が真っ赤となり、綺麗だった両目も真っ赤になる。大変怒っているようだ。それもそうだろう。もしあのままリリーたちがぶつかっていたら、リオーネは潰されていたからね。
「「「「え…」」」」
「シャー!」
「「「「ご、ごめんなさい!」」」」
リオーネの威嚇の前にリリーたちは逃げ出した。今まで魔王などと戦って来たリリーたちでもいきなり現れた化け物には逃げ出すか。ちょっと安心した。逃げ出すときには逃げ出さないと生き残れないからね。
今日はこれでログアウトする。アーレイたちは上手くやったか明日聞くとしよう。




