#787 スサノオVS八岐大蛟
スサノオは手に持っている剣を振ると暴風が神魔毒を吹き飛ばす。
そんなスサノオに俺は文句を言う。
「タイミング良すぎだろう…」
「中々頑張っていたからな。毒の流れを塞き止めず、変える判断は良かったぞ」
「そりゃどうも」
「不貞腐れるな。ちゃんと守ってやっただろう?」
それはそうだけど、必死に頑張っていた俺の身にもなってくれ。絶対に時間経過して直ぐに助けに入らなかったよ。この神様。すると八岐大蛟の首がスサノオに迫る。
「シャー!」
「叫ぶなよ。耳がいてーだろうが! 神水!」
八岐大蛟の頭を片手で止めてしまった。そして蹴り飛ばす。スサノオの手と足には水が纏われており、毒が手足に届いていない。
「あの酒で眠らない所を見るとある程度、耐性を持ちやがったな…ま、今回はちゃんと戦闘して勝ってやるよ。おい、召喚獣たちを下がらせろ。巻き込むぞ」
俺は全員を引かせると八岐大蛟は当然のように逃げるセチアたちを攻撃しようとした瞬間、スサノオが全ての首を攻撃する。
速っ!?全く分からなかったぞ。しかしスサノオの攻撃でびくともしてない八岐大蛟の首も大概だ。
「酔いは冷めたかよ。殺し会うぜ?」
「「「「シャー!」」」」
八岐大蛟の全ての首が戦闘体制になり、二人の戦闘が始まった。八岐大蛟は全ての首から神魔毒ブレスを放ってくる。スサノオは動かず、風を纏って神魔毒を防ぐ。
すると神魔毒が俺たちや村に降り注ぐのだが、俺たちや村全体を覆う神障壁で神魔毒は防がれた。
「神雷!」
「「「シャー!」」」
スサノオが強烈な神雷を落とすが八岐大蛟に効果がなく、八岐大蛟もスサノオに黒雷を落とすが効果がない。
「ち…厄介だな。ま、関係ねーか。雷で俺様に勝てると思うなよ? 雷轟!」
無数の雷が八岐大蛟に連続で落ちる。しかし八岐大蛟はそれを食らいながら岩を飛ばしてくる。それをスサノオは蹴り返すと雷速の岩が八岐大蛟の口に入る。そしてスサノオが剣を構える。
スサノオの剣に稲妻が帯びて、青く発光すると空気がまるで地震ように震える。
「雷神熱閃!」
スサノオの剣は一瞬で八岐大蛟の首を刎ねた。つえー。しかもただ斬っただけじゃなく、首が焼き斬れて溶けている。そして追撃の万雷が八岐大蛟を襲った。
雷の電熱で焼き斬ったのか?この巨大な首を?なんて技だ。しかも八岐大蛟の首が治らない。動いているから治そうしているみたいだが、出来ないみたいだ。
この結果に八岐大蛟は怒る。海、暴風、雷、石、神魔毒のブレスを連射してくる。それをスサノオは風でガードする。
「そんなもん俺には通用…む」
「シャー!」
八岐大蛟は流星群を使い、無数の隕石が落ちてきた。
「神嵐!」
隕石に暴風が触れると塵となる。隕石を塵にする風ってなんだ?
「まだまだ…おっと。危ねー。危ねー」
スサノオは八岐大蛟の目から放たれる光線を雷の速度で躱していく。見ると光線を浴びた草木が石化している。更に山から八岐大蛟の神通力に操られた木や岩が飛んでくる。
「は! 閃電!」
スサノオは雷の速度でそれらを破壊すると八岐大蛟は尾を振ると神魔毒を圧縮した斬撃を飛ばしてくる。
「うざったい尾だな! 雷神熱閃!」
スサノオは剣を連続で振るうがどの攻撃も八岐大蛟の尾を切断することが出来なかった。
「ちぃ! 姉上の剣は取り除いたはずなのにこの固さかよ! く!」
スサノオが尾の一撃を剣で受け止める。すると他の尾がスサノオに殺到する。
「お前…まさか俺様に勝てるなんて思ってねーよな? 神水! おら!」
スサノオは最初と同じように水を手に纏わせると八岐大蛟の尾を握る。そしてスサノオは尾を握ったまま空に上がって行くと八岐大蛟が封印されていた山が崩壊し、八岐大蛟の身体が初めて姿を見せた。
首と尾がちゃんと八つあるな。八岐大蛇は股が八つあるから八岐大蛇と名前が付いたのだが、ここで股が八つあるなら頭の数は九つになるという人がいる。これは間違いで八岐大蛇の頭は八つで合っている。
なんでも股という字は分岐しているそのものを指している言葉で首の間をカウントしているのは間違いらしいのだ。因みに八岐大蛇と九頭竜を同一視している人もいるが八岐大蛇を倒したのはスサノオで九頭竜を倒したのはヤマトタケル。この二人は全くの別人なので、同一視するのは少し無理がある。面白い説なんだけどね。
そんな誤解されそうな八岐大蛟が空に運ばれていくとスサノオはその巨体を片手で振り回す。めちゃくちゃなパワーだ。
「おぉらぁぁぁ! ぶっ飛びやがれ!」
スサノオが投げ飛ばすと八岐大蛟に剣を向けるとスサノオが青く発光し、青い稲妻を発生する。
「雷神蒼嵐波!」
特大の青い光の奔流を中心にその周囲を蒼い稲妻と荒れ狂う暴風が纏っている一撃が八岐大蛟に直撃すると俺たちの位置から見える八岐大蛟が封印されていた山とは別の山に落ちた。
「これを受けてまだ生きてるか…呆れた蛇だな。それなら俺も本気を出してやるよ。天羽々斬、伝説解放!」
やっぱりあの剣は天羽々斬だったんだ!漢字表記は色々あるが元は十拳剣と呼ばれている剣で八岐大蛇を退治した時に名前が天羽々斬になったそうだ。感動していると天羽々斬からとんでもない虹色の神気が放たれる。
「我が一撃は空を裂き、天を割る! 天空雷覇斬!」
スサノオが振るった一撃は八岐大蛟が落下した山を切断…いや、斬撃は桜花の彼方にまで達し、桜花の国を真っ二つに割った。俺たちはスサノオの神障壁で守られているが攻撃の余波で周辺の景色が吹き飛んだ。
「なんじゃこりゃあああ!?」
「なんなんですか! あの人は! 環境破壊なんて規模じゃないですよ! タクト様!」
「俺に言われても困るんだが!」
「腹に溜まった力を久々に使えてすかっとしたぜ! お前たち、どうだ? 俺様の強さはすげーだろう! ん?」
自慢げに降りてきたスサノオが視線を斬ったところに向けると強烈に吸い寄せる風が発生した。
「あ、やべ。時空ごと斬っちまった」
今、何かとんでもないこと言わなかった!?つまりこれは斬られた時空の狭間に吸い寄せられているのか!?やばいって!どうするの!これ!桜花全滅エンド?俺は何もしないからな!
すると周囲がとんでもなく明るくなると空から巫女姿の女神が登場した。あの女神様は!
「げ…姉上」
「天叢雲剣…国土再生!」
天叢雲剣から光が放たれ、全てが元に戻っていく。た、助かった。この女神が天照大神様!天皇家の祖とされている女神様だ。その女神様がこちらに降りてくる。ありがたや~。
「何逃げようとしているんですか? スサノオ」
「べ、別に逃げようとしてねーよ。それに言われた通り、八岐大蛟は倒しただろうが」
「確かに倒すように言いましたけど、国を滅ぼせとは一言も言ってません!」
「うっせぇな! また引きこもらすぞ!」
「残念でしたね! もう出来ませんよーだ! 出来ていたら、私はとっくに隠れてます!」
日本を代表する神様同士が喧嘩してますよ。まぁ、本気じゃないだろうけど。因みにこの話は有名な岩戸隠れの伝説のことだな。天照大神と一緒に服を作っていた天の服織女をスサノオが驚かして、死んでしまったことで天照大神が天岩戸に引き篭ったという伝説だ。
天照大神がいなくなったことで天が暗闇に支配されて、天照大神を天岩戸から出すために三種の神器である八咫鏡と八尺瓊勾玉などが作られ、天照大神を引きずり出すことに成功し、注連縄を岩戸の入口に張り、入れなくしたんだ。
因みにスサノオはこの事件で追放され、罪を償うためのたくさんの品物を天照大神に贈っている。その一つが最後の三種の神器である天叢雲剣だ。この剣は八岐大蛇の尾から出てきたとされているがなぜ八岐大蛇の尾から出てきたかは諸説ある。
元々天叢雲剣は天照大神の持ち物だったが、うっかり落として八岐大蛇が食べた説や当時は青銅の武器が主流だったが八岐大蛇が砂鉄を食べた結果スサノオの青銅の剣の刃を欠けさせる鉄製の天叢雲剣が誕生したという説などが有名かな。
「あーあー。姉上が元に戻したんだから別に良いじゃねーか」
「国を滅す攻撃を放ったことが大問題なんですけど…はぁ、とりあえず今は彼です。手伝わせたんですから、お礼はしないとダメですよ」
「わかってるつーの。ほらよ。俺様の神石だ」
大事なアイテムを投げて渡すなよ。どれどれ。
須佐之男命の神石:レア度10 素材 品質S+
須佐之男命の力が宿った石。天災級の嵐の力を内包した石で神としての力も宿っている。これを使った武器を作製するためには緋緋色金か青生生魂が最低限必要となる。
これでクエスト終了か…すると予想外の提案をされる。
「それとあの蛇の解体をしてくれ。また封印するのも面倒だからよ」
「そうですね。復活する度に私たちの国が滅びたら、私たちの存在に関わる大問題なので、お願いします」
「あぁん?」
結構言うな…天照大神様。まぁ、国を滅ぼされかけたんだからそうなるのも仕方ないかも知れない。ということでありがたく解体させて貰おう。天叢雲剣は手に入らないことは確定しているから別名の草薙剣とか来ないかな?ゲット出来たのがこちら。
八岐大蛟の蛇石:レア度10 素材 品質S
八岐大蛟の魂が宿った石。刀の素材として使用される。
八岐大蛟の尾:レア度10 素材 品質S
神をも殺す毒液に包まれている八岐大蛟の尻尾。尻尾とは思えない固さを誇り、その固さは通常の金属を越えている。毒液の除去もしないといけないため、鍛えるのが非常に難しい素材。しかし武器に出来れば極めて強力な水と地の力が宿った武器となる。
お、おう…自分たちで作れってことか。これはヤバそうなものが手に入ったぞ。というかこの二つをくっつけろと言われている気がする。すると忠告を受ける。
「その尾と石をくっつけるのはやめて下さい。復活しちゃうかも知れませんので」
「俺の神石ともやめておけ。相性最悪だからよ」
「同族嫌悪ですか?」
「よーくわかった。今から高天原に行ってやる!」
そういうとスサノオは雷速で消えた。
「こらー! もう立ち入らない約束でしょう! 挨拶もせず申し訳ありませんがこれで失礼します!」
天照大神は光速で追いかけていった。するとインフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント2ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント2ptを獲得しました』
『レベル30に到達しました。クラスチェンジが可能です』
これでクラスチェンジが来るんだ。ほとんど戦ったのはスサノオなのに…これはちょっと予定を変更しないといけないな。先にステータスポイントを俊敏値に振って、これで俺の残りスキルポイントは154ptとなった。
そして俺はクラスチェンジをするために一度ホームに帰ることにした。




