#763 賄賂の成果とヒポグリフの強さ
侯爵を体当たりでぶっ飛ばしたヒポグリフに騎乗しているアストルフォは俺を見る。
「ってあれ? 君は! …大丈夫?」
名前を思い出せないのかよ!
「ご覧の通りあまり大丈夫じゃないな…でも助かった。どうしたんだ? 確かランスロットたちと別れて砦の防衛をしていたよな?」
「それがいきなりヒポグリフが空間転移を使っちゃったんだよ」
これはひょっとして?
「もしかしてお肉のお礼か?」
「ピィ!」
まさか賄賂としてあげたお肉で助けて貰われるとは思ってなかった。義理堅い奴だな。するとヒポグリフが前足でピースをする。何かの要求?これはあれだな。
「…この前食べたお肉を二枚食べたいのか?」
「ピィピィ」
ヒポグリフは頷く。正解らしい。それで助かるなら俺に選択肢はないな。チロルたちがルインさんたちにお願いしていたから問題はないはず。
「わかった。助けてくれるならお腹いっぱい食べさせてやるよ」
「ピィーーー!」
「わー!? ボクが乗っているのに~!?」
俺の言葉にやる気を出したヒポグリフは夜空に飛び上がるとその強さを見せつける。ヒポグリフが黄金に輝くと黄金の光の衝撃波が連続して発生する。これはジークの光衝撃波の上位スキルか?
すると黄金の光の衝撃波を浴びたドラゴンたちが叫びをあげながら消滅していく。これはまさか…フィールドの全敵に対する攻撃!?なんて力だ…今ので地面にいた奴らがいなくなったぞ。
しかしこれだと敵は謎のスキルがヒポグリフを襲うことになる。するとヒポグリフは太陽の輝きを放ち、敵の能力を無効化する。あ、通用しないんですね。心配してすみませんでした。
「「ギャオーーー!!」」
二体のディザスタードラゴンがドラゴンブレスを使ってくる。流石にこいつらはさっきの攻撃じゃ倒せなかったのか。
「ピィ!」
放たれたドラゴンブレスは空間歪曲に吸い込まれるとディザスタードラゴンの真上から落とされる。
「ピィーーー!」
「もうわかったよ。ヒポグリフ。行くよ! 連携だ!」
ヒポグリフは叫ぶと黄金の炎に二人は包まれ、アストルフォが持っているランスに高速回転する黄金の炎が宿るとディザスタードラゴンに光速で突っ込む。ヒポグリフとアストルフォはディザスタードラゴンの胸を貫通…いや焼き抉った。更に雷の追撃が発生する。
ヒポグリフは空中で向きを変えるともう一体のディザスタードラゴンも背後から突進すると同じく抉り、ディザスタードラゴンたちは消える。
強いとは思っていたけど、滅茶苦茶強いぞ。ヒポグリフ。するとぶっ飛ばされた侯爵がフォールンエルダードラゴンに乗り、ヒポグリフとアストルフォに挑む。
俺はその行動に疑問を持った。俺を仕留めるなら今というチャンスを逃すのは変だ。俺を仕留めたいが恐らくヒポグリフが助けに入るからフォールンエルダードラゴンに乗ったってことなんだろうけど…それは変だな。暗黒召喚師と同じ能力なら召喚獣には強いはず。実際ヴィオレを圧倒した。
こいつの能力はまさかフォールンエルダードラゴンの上じゃないと発揮されないのか?それならこの行動の説明が付く。俺は自分の考えをまとめながらチョコレートを食べる。
これで魔力と僅かに満腹度が回復したので、起き上がるとこの場にいる全員を召喚石に戻す。すると頭から召喚石が落ちてきた。
「なんで? ぷよ助の召喚石?」
生きてたんだ。良かった…でも何故頭から落ちてきたんだ?
俺は疑問に思ったが考える時間がなく、急いでヴィオレのところに向かう。するとそこには悔し涙を流しているヴィオレの姿があった。
空では二人の対戦が勃発していた。まずフォールンエルダードラゴンが六枚の翼から紫の光線を放つ。
「来るよ! ヒポグリフ!」
「ピィ!」
ヒポグリフが攻撃を躱すと紫の光線はヒポグリフを追尾してくる。そしてヒポグリフに命中したかに見えた瞬間、ヒポグリフの姿が消える。次の瞬間、ヒポグリフはフォールンエルダードラゴンの顔の前に現れると前足の爪で目を引っかき、その勢いで回転すると後ろ足でフォールンエルダードラゴンを蹴った。
そして再び空間転移し、追尾してきた光線を躱す。この結果に侯爵は苛立つ。
「なんだ!? あのグリフォンは! フォールンエルダードラゴン! 何をしている! あんな奴、さっさと殺せ!」
「君は騎兵に向いてないね。この子も可哀想に…」
槍をヒポグリフに置き、剣を抜いたアストルフォがフォールンエルダードラゴンの背に現れた。
「私が騎兵だと? 残念ながら私は召喚師だ」
「尚更ダメじゃん。騎兵でも召喚師でも相棒は大切にしないと信頼関係は生まれない。信頼関係がない騎乗しか出来ない人にボクとヒポグリフは倒せないよ」
「抜かせ!」
侯爵がアストルフォに襲いかかると転移でいなくなる。アストルフォはヒポグリフに乗っていた。
「どうやら時間稼ぎはこれで十分みたいだ。それじゃあ、ボクらは美味しいご飯が待っているから帰らせて貰うよ。ばいばーい」
「何!? 待て! 貴様! ええい! フォールンエルダードラゴン! 殺せ! あいつを殺すんだ!」
フォールンエルダードラゴンが息を吸い込む中、アストルフォは俺とヴィオレの元に来る。
「転移させるのは君とこの子でいいのかな?」
「他の部隊はどうなっている?」
「ヒポグリフの烈日で雑魚は蹴散らしたからその隙に撤退したみたいだよ」
烈日はあの全体攻撃スキルのことか。向こうの戦場まで効果が及んだんだね。それなら撤退が出来るだろうな。
「それなら俺たちだけでいい。頼む」
「任せて! ヒポグリフ!」
「ピィ!」
俺たちが転移した瞬間、フォールンエルダードラゴンのドラゴンブレスがその場を焼き払った。
ヒポグリフの転移で難を逃れた俺たちはお城の広場に転移した。俺は急いでメルたちに状況を説明して、メルたちの撤退が完了を知らせるようにインフォが来る。
『二刀流のレベルが15に到達しました。二刀流【カウンタークロス】を取得しました』
『恋火の神道魔術のレベルが20に到達しました。神道魔術【祈祷】を取得しました』
『和狐の仙術のレベルが20に到達しました。仙術【自己再生】を取得しました』
『セフォネの鎌のレベルが30に到達しました。鎌【イレイズスライサー】を取得しました』
『白夜の風魔法のレベルが30に到達しました。風魔法【ダストデビル】、【フライ】を取得しました』
『白夜の風魔法が疾魔法に進化しました。疾魔法【ソニックブーム】、【スーパーセル】を取得しました』
『ロコモコの光魔法のレベルが30に到達しました。光魔法【リフレッシュ】、【フラッシュバン】を取得しました』
『ロコモコの光魔法が神聖魔法に進化しました。神聖魔法【セイント】、【ブレス】を取得しました』
随分倒したけど、レベルアップはなし。これは殆どヒポグリフが倒したせいか。ヴァインたちも結構倒しているはずだからこれは仕方ない。元々経験値目的じゃないし、死ぬ可能性が高かった任務を普通に帰れただけ、良かったと思わなないといけないだろうな。




