#661 シルフィ姫様の結婚条件
翌日、俺は起きると昨日のグラン国王の話がすぐに過る。
これはやばい…重症かもしれない。洗面所で見ると酷い顔をしていた。ゲームのNPCでこうなるとは俺はどうしようもないレベルにいるようだ。
顔を洗い、朝食を食べて、ゲームにログインする前に顔を叩き、気持ちを切り替えてログインする。
ベッドから起きあがり、部屋のドアを開けるとリリーたちが集まっていた。
『じー…』
「な、なんだ? どうしたんだ? みんな? 今日は会議までの時間はみんなに使う予定だぞ?」
「それよりも昨日の話です! 失礼します!」
全員が強引に部屋に入って来る。
「何かありましたよね?」
リリーたちの能力に戦慄を覚える。
「驚いているけど、声をかけても上の空なら誰でも気づくわよ」
「私でも何かあったことがわかるほどでしたよ? 主」
「タクトはん、昨日帰った時のこと覚えとりますか?」
…覚えてないな。
「タクトって、こういうのは結構抜けてるよね」
「まぁ、わかりやすいほうが私たちにとってはいいことです」
「そうじゃな。それで何があったのじゃ?」
「話してくれるよね? タクト」
俺はみんなに昨日のことを話す。
「えぇ~!? タクト! シルフィ姫様と結婚しちゃうの~!?」
「そんなのダメです! 絶対にダメ!」
「え? ダメなの?」
「…リリー、結婚のことを知りませんね?」
頷くリリーに頭を抱えるイオン。なぜ最初にあんなことを言ったんだろう?きっとノリだな。
「いいですか? 結婚というのは一生の愛を誓って一緒に生活することを言うんですよ」
「そうなの? じゃあ、リリーとタクトが結婚したら、ずっと一緒にいられるの?」
「そうなり、ちょっと待ちなさい。リリー!」
「むむ~!」
たぶん結婚しようとか言い出しそうとしたな。するとファリーダが話す。
「落ち着きなさい。これはグラン国王が先手を取ったってことよね? タクト」
「そうだ。だから正式に決まったものじゃない。とりあえず国際会議の場ではこういう話があるから、他の国の人とはお付き合い出来ませんという状況を作り出すためにグラン国王様が考えたことだ」
『なんだ~』
「ホッとするのは早いわよ。昨日のタクトの様子を忘れたの? つまりそういうことを考えるように言われたってところかしら?」
ファリーダは名探偵だな。
「そ、それでタクト先輩はどうするつもりなんですか?」
「全然答えが出ていない状況なんだよな…これが」
『…』
リリーたちの視線が痛い。
「ただこういうのは俺だけで悩んでてもな。相手の気持ちもわからないし」
「ならすぐに聞きに行こう!」
え?今すぐ?
「そうですね! あたしたちもシルフィ姫様の気持ちを知りたいので、一緒に行きます!」
「…ん」
「なんだかわからないがみんなで突撃だな!」
お城に攻め込むような言い方はやめてくれ。ユウェル。
「逃げてはダメですよ。マスター」
「逃げないって」
『…』
本当だからジト目はやめなさい。こうして俺はシルフィ姫様と昨日のことで話すことになった。
「私はタクト様のことは好きなので、結婚についてはタクト様が良ければしたいと思います」
『むむむ~』
ストレート。やばい…嬉しさや恥かしさやごちゃごちゃしている。大ピンチ。
「ただ私と結婚するためには条件があるんです」
『条件?』
そんな話、聞いていないな。
「その感じですとお父様から聞いていないんですね。実は私と召喚獣たちは結婚しているんです」
まぁ、ピンクダイヤモンドから大体のことは分かっていた。ん?ちょっと待て…この場合はどうなるんだ?既に結婚している相手とお付き合いするってことは不倫するってこと?これってやばいんじゃないか!?
「ふふ。召喚師と召喚獣との結婚は意味が違いますから大丈夫ですよ」
『意味が違う?』
全員が首をかしげる。
「はい。召喚師と召喚獣の結婚は愛を誓うと言うより、召喚主と一生共に生き、支える誓いという面が大きいんです。もちろん愛を誓う場合もありますから安心してくださいね」
『うん(はい)!』
「ここで問題となるのは召喚師の結婚を召喚獣たちが受け入れることが出来るのか? ということです。タクト様の場合ですと私の召喚獣たちは皆さんの強さを認めてはいます。私を助けてくれましたから。ただ強さを認めた上で自分たちの力より下だとも思っています」
それはそうだろう。だって、次の進化か下手したら、もう一段上の進化なんだもん。しかしこれで話は読めた。
「つまり自分たちより弱い男との結婚は認められないってことですか?」
「はっきり言うとそうなります。つまりタクト様が私と結婚するためには私たちと決闘で勝利しなければいけません」
そこでインフォが来る。
『特殊クエスト『シルフィ姫の結婚』が発生しました』
特殊クエスト『シルフィ姫の結婚』:難易度SSS
報酬:シルフィ姫の結婚することが出来る。
シルフィ姫と決闘で勝利せよ。
はい、無理だ。
「何度決闘しても一度でも勝てばたぶん許可をくれると思います。その変わり、私も召喚獣も本気で戦いますけどね。今から決闘をしますか?」
「俺は今日、用事がありますから失礼します。帰るぞー。みんな」
「そこは挑んで来るべきところだと思います!」
魔神大戦でその実力を披露したシルフィ姫様に勝てると思うほど、馬鹿ではない。俺は知っている。シルフィ姫様はあの戦いで使った切り札は封印石召喚と神召喚だけ。
つまりバースト系は使っていないんだ!この状況で戦うことは時間の無駄だ。なんか気持ちは晴れたし、このままお店めぐりに行くとしよう。




