#625 群島探索
俺たちが調べた結果、群島エリアは全部で十個の島を確認にした。
「この数だと分かれて調べたほうがいいですね」
「ですね。俺はこれまで通りシャローさんたちと組む。ルークたちは分かれて調べてくれ」
『はい!』
というわけで俺とシャローさんたち、ルークとチロル、フェルトとララ、烈空さんとコゼット、アロマとタクマの五チームにそれぞれ決めた島の探索に向かう。
俺たちは一番大きな島を任された。メンバーはイオンとリアン、クリュスはそのままでグレイと虎徹を投入した。これなら何が起きても大抵は大丈夫だろう。
俺たちが海岸に船を止める。
「ここも入り江と言えれば入り江なんですけどね」
「リアン、どうだ?」
「マーメイドの気配は感じませんね」
外れか…まぁ、他が当たりかも知れないし、今は進もう。
島の中は熱帯雨林のようなジャングルだった。現時点でそれだけだ。サーベルで道を開いてくれているシャローさんの仲間がふと言った。
「なんか俺たち、漁師というか海賊になっていないか?」
「冒険家もこんなことしてるイメージだな~」
「アマゾンの漁師とかならこういうことをしているかもしれませんよ」
流石に武器を持っていないと危ないからなぁ。それにしても引っかかる。
「モンスターが出てこないな」
「蛇や蜘蛛とか出てきそうなんですけどね」
「俺たちは最近、毒草モンスター祭りでしたよ」
「人力戦車の奴ですね。コーヒーにはお世話になっています」
知られているんだな。どうやら彼らもコーヒー愛好家らしい。そんなどうでもいい会話をしているとジャングルを抜ける。
ジャングルと抜けた先にあったのは、藁、木、レンガで出来た三つの大きな家だった。このシチュエーションは有名だな。
『三匹の子豚?』
そう…童話の三匹の子豚のシチュエーションだ。そして自然と全員がグレイを見る。
「ガウ?」
まぁ、グレイには意味不明だろうな。三匹の子豚は簡単に言うと三匹の子豚が藁、木、レンガを作って狼が息を吹きかけて家を壊していくストーリーだ。しかし最後のレンガの家を壊せず、三匹の子豚はその家で幸せに暮らすストーリーだったはず。
しかしここで色々な話が出てくる。
「あれ? 狼って諦めるんでしたっけ? 確か熱湯でやけどをして逃げていく話じゃありませんでした?」
「俺は狼と三匹の子豚が和解して、一緒に暮らす話だった気がするんだが?」
全員が首をかしげる。これはモデルとなった話を色々子供向けにアレンジした結果、同じ童話でも終わり方が変化することがよくある。問題はオリジナルがどんな話だったかだ。それは誰も知らなかった。
「そもそもあの大きさが変ですよね…罠の香りが凄いですよ」
「だな。明らかにボス出てきますよって感じだ」
しかし童話では三匹の子豚は基本的にやられ役なんだよな。とりあえず全員武装して、順番の通り藁から入ってみる。
『ごめんくださ』
「あん?」
オウルデストサン・オーク?
? ? ?
巨大なオークがいた。
『子豚じゃない!』
「あぁん! なんだてめぇらは!! 俺は立派なオークだ!」
俺たちはオウルデストサン・オークの衝撃波で外まで吹っ飛ばされる。というかあいつの家、今ので木っ端微塵だぞ。狼じゃなくて自分で壊したりなんかしていいのだろうか?
そんなこと考える場合じゃないか。思っきり巨大な包丁のような剣を持っているからやる気満々だ。
「やるぞ!」
「「はい!」」
俺たちが飛び出した時だった。木の家とレンガの家を壊して別のオークが出てきた。
セカンドサン・オーク?
? ? ?
サードサン・オーク?
? ? ?
「「どうした! 兄ちゃん!」」
お前らも家を壊して出てくるかい!しかも大きさが逆だ!なんでサードサン・オークが一番でかいんだよ!後、手に狼を持つな!グレイが引いているだろうが!
「兄ちゃん、美味そうな狼がいる」
「馬鹿! それよりも女だろうが!」
「ん? よく見れば美人じゃねーか。さては俺様に婚約」
「「「違います(うわよ)!」」」
イオンとリアン、クリュスに完全拒否だ。
「「ならおいら」」
「「「違います(うわよ)!」」」
落ち込む三匹の巨大オーク。しかし戦況は結構厳しいな。そう思っていると地面が揺れ出す。こんな時に地震!?ギルドが言ってたやつ…いや、違う!これは明らかに足音だ。
俺たちの後方でジャングルの地面が盛り上がり、サードサン・オークを上回るオークが出現した。
マザー・オーク?
? ? ?
いやいや…ちょっと待てよ。これはもう撤退案件だろう。
「私の子供を悲しませたのはだ~れ? あら?」
マザー・オークは俺とシャローさんたちを見る。凄く嫌な予感がする。
「いい男の人間たち! 結婚して~」
突進してきた。
『お断りします!』
俺たちはなんとか回避した。
「あんたたち、手を貸しな!」
「「「はい、ママ!」」」
「撤退するぞ! 全員集まれ! テレポーテーション」
全員が触れ合い、転移しようとしたが不発する。
「逃がしゃしないよ! ここは私の島! 人間の男が私と結婚もせずに逃げれると思うな~!」
マザーオークのスキルか!魔力よる阻害とは別系統のスキルみたいだな。こうなると走って逃げるしかない。
「逃げるぞ!」
「スクナビコナまで撤退します!」
俺たちは全力ダッシュで逃げようとするとそれをみたマザーオークが叫ぶと森から無数のオークが現れた。森でモンスターに遭遇しなかったのはこういうことか!
「一点強行突破するぞ! 捕まりたく無かったら、全力でついてきてくれ!」
『はい! ギルマス!』
俺たちはオークの包囲網を突破しようとするとグレイに異変が起きる。グレイの攻撃でオークを倒せないのだ。これはあいつらの能力か!しかもグレイを戻せない。それでも見捨てるという選択肢はない。
俺は聖剣グラムを取り出す。こいつらの手加減は無用だ!
「全員、伏せろ! はぁああ!」
俺が回転して聖剣グラムを振るうの周囲のオークたちが多乱刃で倒される。
『すご…』
「イオン、リアン、グレイ、虎徹は前の道を切り開いてくれ。シャローさんたちはイオンたちの援護をお願いします。クリュス、ここで少し時間を稼ぐぞ」
『はい!』
俺とクリュスがマザーオークたちと相対する。
「ママ~。美味しそうな狼がいないよ」
「おだまり。仲間を逃がすために私たちと戦おうとなんていい男じゃないか! 捕まえて遊んでたおしてやるよ!」
「生憎そう簡単には行かないな!」
俺が聖剣グラムを振るうと多乱刃がマザーオークたちを襲う。三匹の子豚たちには効果があったがマザーオークには攻撃が効いていない。これは狒々と同じパターンだな。
更に三匹の子豚たちの生命力が全回復する。これもマザーオークの能力か。こうなるとマザーオークから倒すしかないな。
「残念だったね~」
「そうかな? クリュス、いきなりで悪いがいけるな?」
「もちろんよ! お父様! 氷竜解放!」
クリュスが氷竜偃月刀を振り回すと吹雪が吹き荒れ、ブリザードドラゴンが現れる。
「はぁああ!!」
「何よ! それは!」
クリュスが飛び出し、周囲のジャングルを凍らせていく。マザーオークは向かい打とうとするが、クリュスが狙ったのは足だった。ブリザードドラゴンのオーラがマザーオークに触れると氷結する。
そのまま三匹の子豚たちも凍らせる。そして広がったのは氷の世界。これが氷竜解放の効果である氷獄の効果だ。周囲に極寒の世界に変え、敵を世界ごと凍らせるスキル。規模が全然違うな。
しかしどうやら簡単にはいかないらしい。マザーオークの目が赤く光ると氷の世界が揺れる。
「呆れたわね…これで生きてるなんて」
「俺の切り札は効かないだろうし、ここまでだな。逃げるぞ」
「えぇ!」
俺たちが逃げ出し、暫くすると氷獄を解除したマザーオークの怒りの声が聞こえたが、既に追いつくのは不可能だ。俺たちはスクナビコナに乗り込み、島から脱出した。俺たちはここに誓おう。この島には二度と来ないと。
「助かりました。タクトさん…色々な意味で」
「シャローさんたちもイオンたちを援護してくれて、ありがとうございます」
イオンたちから邪魔なオークをスピアガンで倒してくれたから安心して道を開けることが出来たと言っていた。それを伝えるとシャローさんたちは嬉しそうだ。あまり戦闘面では活躍出来ない職種だから仕方ないのかも知れない。
それにしても酷い島だった…いつもは自信と誇りに満ちているグレイがすっかり自信喪失だ。
「俺もマザーオークを倒せなかった。誰にだって得手不得手がある。それを補ってこその仲間だ。あまり引きずるなよ? グレイ」
「ガウ!」
なんかいつかあの豚どもをボコボコにしてやるっていう気概を感じる。それぐらいがちょうどいいだろう。さて、他のみんなは無事だろうか?
結論から言うとみんな酷い目にあった。ルークとチロルは謎のメロンだらけの島だったがそのメロンが口があるメロンモンスターで追いかけられたらしい。
それだけなら俺たちのほうが酷いと思うんだが、森の中でこのメロンモンスターの笑う声が聞こえ、全員が混乱状態となり、同士打ちが相次いだらしい。ルークの頬のビンタの後が生々しい。これ以上は聞くのは野暮だろう。
フェルトとララは燃える靴を履いた魔女に追いかけられたらしい。
「この世で一番美しいのは私よ~! って言って毒りんごや毒ナイフを投げられました…」
「最初は戦おうとしたんですけど…おばあちゃんとは思えないくらいの武闘派で、召喚獣たちがやられました」
こちらは恐らく白雪姫に登場する継母だな。詳しく聞くと妖刀虎を巨大毒包丁で圧倒し、逆立ちからの回転蹴りなどを披露したらしい。このゲームのお婆さんキャラはみんな強いな。二人の様子からかなり怖かったのがわかる。
烈空さんとコゼットはちょっと意味不明な感じになっていた。二人が太っていたのだ。
「森に現れた魔女に…うぷ…呪いをかけられたんだよ」
「皆さんの話を聞く感じだとヘンゼルとグレーテルではないかと…うぷ…こんなことになるならお菓子の家を食べさせて欲しい」
太った状態で追いかけられ、体中傷つきながら必死に逃げたらしい。
アロマとタクマは全身ベトベト…スライムの島だった。もう何が起きたか全員察した。花火ちゃんと堕天使ちゃんは失意のどん底だ。イオンとリアンが慰めていた。
しかし全部が全部ではないが童話をモチーフにした島が多いことから人魚姫の話があっても不思議ではない。ただ人魚姫の話は切ない恋物語なんだよな。でももう人魚姫には出会ってるし、大丈夫かな?
そんなことを考えながら俺たちは他の島を目指した。




