#591 近衛家と将来
衝撃の出会いをしたが家に帰った俺は荷物を纏める。今日から俺は近衛家に帰ることになる。予定では三日間泊まり込む予定だ。
戸締まりをしっかりして、電車に乗り懐かしい近衛家に帰ってきた。
「ただいま~」
「兄ちゃん! とわ~!」
「…理沙ちゃ~ん?」
タックルしようとした理沙が止まる。
「お、おかえり…」
あぁ…これは泊まり込みを怒られたな。
「ただいま。義母さんもただいま」
「おかえりなさい。誠吾君。ごめんなさいね。娘たちが押し掛けて」
「夏休みですから大丈夫ですよ。バイトは出来ませんし」
「そう! あたしたちは兄ちゃんがバイトをしないかチェックを! …ごめんなさい。嘘です」
優しそうに見える佳代姉たちの母さんだけど、怒らすと非常に怖い。俺もバイト事件では随分怒られた。
「部屋は前の部屋を準備してあるから使ってね」
「はい」
懐かしい俺の部屋に行く。荷物の整理をしてから下に降りるとみんながいた。
「ただいま。義父さんもただいま」
『おかえり』
「おかえり、誠吾君。少し見ない間に雰囲気が変わったね」
この人が佳代姉の父さん、近衛 英二さんだ。穏やかな人だけどしっかりしているこの家の大黒柱だ。この人も怒らすと非常に怖い。
「バイトをしてないからかも」
「はは。それは良いことだね。また倒れられては私は君の両親に顔向け出来ないからね」
多分俺の雰囲気が変わった原因はリリーたちだと思うが言わない。バイトやめてゲームばかりしてます!なんて言ったら、どうなるか恐ろしい。
佳代姉たちも絶対に話していないだろう。あまりゲームに肯定的な人ではないからな。その癖に俺が誤魔化したことでニヤニヤしているのがむかつく。
「それとすまなかったね。娘たちが押し掛けて」
「それは大丈夫ですけど、寂しくなかったですか?」
「…ペットを飼おうか真剣に考えたよ」
ペットなら小さいジークがオススメ!なんて言ったらアウト。大丈夫、堪えた。
「せい君はトカゲが好きなんだよね~」
「あれ? 狐じゃないの?」
「…兄様はフクロウ好き」
「それはゲ」
佳代姉たちめ。危うく義母さんの口からゲームという単語が出そうになったじゃん。ギリギリ止めたけど…よくバレてないな。
「ん? 誠吾君はペットを飼うつもりかい?」
「流石に飼わないよ。大人になったら、考えるかも知れないけど」
もし飼うとしたら、ネコかな~。フクロウは気にはなるが間違いなく難易度が高い。育てられなくなって捨てることにはなりたくないから、飼うとしたらよく考えないとね。
「まぁ、それはそうだろうね。そういえば誠吾君はもう高校二年生か…将来について、考えているのかい?」
「色々なバイトをしましたけど、さっぱりですね…両親が残してくれたお金があるので、大学には行くつもりです」
俺が大学に行くためのお金だ。これを使わなかったら、俺は両親に怒られるだろう。
「それがいいだろうね。大学出ないと稼ぐお金が全然違う。高校三年生は受験のことで大変だろうからそろそろ将来やりたいことや行きたい大学を決めておいたほうがいいよ」
「はい」
「せい君は私の大学だよ、お父さん。決定事項」
勝手に決めないでくれ。因みにこのやり取りは高校の時にもした。俺が今の高校に行くことが決まり、一人暮らしをすることになったから父さんと佳代姉たちが大喧嘩して大変だったんだ。
「ご飯食べたかったから、自分で作れば?」
あの時の佳代姉の絶対零度の視線には流石の義父さんも固まっていたな。思い出したら、こっちまで寒くなる。
「俺の父さんはSEだったんですよね?」
「あぁ。具体的に何をしていたかは知らないけどね。知っていても私はパソコンで資料を作るだけで手一杯なほどだから聞いてもさっぱりだっただろうね…気になるかい?」
「少し…ただ俺も具体的にどんなことをする仕事なのか理解してないから時間があるときに調べるつもり」
「そうするといい。後悔がないようにちゃんと調べるんだよ」
こうは言ったが、時間なんていつできるやら…ゲーム辞めたら、出来るがそこまでして調べるつもりはないんだよね。
「兄ちゃん、ゲーム作るの?」
「SEはゲームだけじゃないよ? システム全般を作る仕事だからロボットや車、会社の業務システムとかかなり仕事の幅が広い仕事だね。だから色々な知識が要求される職種のイメージがあるかな」
「…兄様なら凄いシステムを作りそう。日本沈没」
未希?なぜSEの話から俺が日本沈没させる話に飛んだんだ?
その後、お昼を食べながら学校のことを話した。成績表を見せて、夏休みの宿題も終わっていることを話すと満足げだ。セーフ。
さて、二階に行くとゲームの準備をする。なんか新鮮だな。ここでゲームをするのは…鍵をしっかりかける。見付かるわけには行かないからね。いつも以上に警戒しないと行けない。
すると佳代姉たちが入ってくる。
「そういえば夏祭りはどうする?」
「あぁ…忘れてた。三人は行きたいのか?」
「んん~…せい君が一緒に行ってくれるなら優先するかな?」
あまり行きたくなさそうだな。無理もない。この夏祭りは俺たちにとって苦い思い出であり、今の俺たちの関係になるきっかけとなった事件だったからな。俺はあの日のことを思い出す。
次回はようやく誠吾と佳代たちの過去話です。




