#590 墓参りとEOの社長
明日から近衛家に行くので、今日の内に俺は本物の両親のお墓の掃除と墓参りに向かう。
掃除道具と提灯、盆花、線香立、線香、チャッカマン、蝋燭を持っていく。
俺が墓に着くと先客がいた。誰だろう?スーツ姿だから大人だろうけど…父さんの知り合いかな?
するとその人は俺に気が付いた。俺は頭を下げると向こうも応じてくれた。五十歳後半ぐらいだろうか?やはり父さんの知り合いみたいだな。
「こんにちは。父さんのお知り合いの方ですか?」
「父さんということは君が誠吾君かい?」
「そうですけど…」
「そうか! いや~、大きくなったなぁ」
どうやら俺はこの人と出会っているらしい。残念ながら記憶にない。
「おっと…君はまだ赤ちゃんだったから記憶にないかぁ。これから墓掃除かい?」
「はい。それと先に墓参りをしようかと」
「そうかい…しっかりしているね。流石、賢吾の息子だな。あ、これからするなら私も手伝おう。いや、手伝わせてくれないかい?」
賢吾は父さんの名前。ついでに母さんの名前は、一桜という。謎の人は墓掃除を手伝ってくれたので、一緒に墓参りをした。
その後、俺はある喫茶店でこの人と両親の話をすることにした。
「好きなものを頼んでくれていいよ。私の奢りだ」
一度は言いたいセリフをさらりと言われた。こういう大人になりたいものだ。そして俺はこの人の正体を知る。
「自己紹介がまだだったね…私は、佐伯 龍太郎。今はエリュシリオン・オンラインというゲームを作っている会社の社長している」
「えぇ!? エリュシリオン・オンラインの会社の社長!?」
「ふふ。予想通りのリアクションだな」
あ!この人、実は知っていたな!だって、俺はエリュシリオン・オンラインを小柳さんからプレゼントされている。事実上この人からプレゼントされたようなものだ。
「ふぅ…どうして父の墓にいたんですか?」
「君のお父さんとは、学生時代から付き合いでね。高校生まで一緒でゲームばかりしていたんだよ。大学では違う道に進んだけど、付き合いは大人になっても続いていた。まぁ、親友の仲と言ったところかな?」
父さんにそんな人がいたとは知らなかった。
「因みにこのお店は賢吾と一桜さんが出会った場所だったりする」
俺は水を吹き出す。嘘ぉおおおおお!?
「その様子じゃあ、聞いてないみたいだね。賢吾はウェイトレス姿の一桜さんに一目惚れしてね。ここでプロポーズしたんだよ」
衝撃の事実!なんか知りたく無かったかも!いかん…リリーたちにウェイトレスをさせている俺はヤバイんじゃないか?凄い今更なことだけど。
「血は争えないよねぇ」
だぁ~!ゲームでの俺のことも知ってやがる!この人!社長の権力反対!プライバシーの侵害だ!
しかし知っているなら俺は聞きたいことがあった。
「あの…ゲームのことで質問していいですか?」
「何かな?」
「俺、女の子ばかり当たるんですけど、偶然なんでしょうか?」
最初の頃から持っていた疑問だ。いくら称号を持っていても俺の異常性ぐらい理解しているつもりだ。
「偶然とも言えるし、必然とも言える」
なんか哲学的な返しをされた。どういう意味だろう?いや、問題は必然要素があるってことだ。セフォネやファリーダのことか?何か違う気がする。
「質問はここまでにしておこう。あまりゲームのことを話すと売れなくなってしまうからね」
「…売れているんですか?」
「さぁ? どうだろうね?」
答えてくれないか…売れてないとゲームが終わることになる。そうなると俺はリリーたちと二度と会えなくなるだろう。出来れば、ずっとこのゲームは続いてほしいものだ。
その後、注文したザッハトルテを食べながら話をした。プロポーズのセッティングをした話や結婚指輪を選ぶのに相談された話など聞いて、父さんの意外な一面を知った。
中でも俺が産まれた時に自慢しまくった話や俺の名前を決めるのに目にクマが出来るまで悩んだ話は嬉しかった。
更に父さんは重度のゲーマーであることが判明した。
「君とはある意味対極かな? 流れに身を任せるより、徹底的に分析して、最短で一番強くなるにはどうすればいいか考えるタイプだった」
「俺も一応考えてますよ?」
「君の場合は現状でどうすればいいか考えているだろう? 賢吾の奴はあの時にはこうなっているから、作戦はこうだと最初から決めていた。それで相手に何もさせず、倒すのを楽しんでいたな…」
社長さん、父さんの被害者だな。すると社長さんに電話が来る。
「すまないね…そろそろ仕事に戻らないといけない」
いやいや、仕事あったの!?
「すみません! 時間を使わせてしまって」
「はは! 構わないよ」
本当に大丈夫なんだろうか?社長の事なんて全然知らないからわからない。だけどどうしても質問したいことがある。
「あの…最後に二つだけ質問していいですか?」
「いいとも。何かな?」
「一つはゲームについてで申し訳ないんですけど、何か色々イベントが終わるタイミングとかがおかしいという指摘があるんですが」
「それはそうだろうね。それについての答えを敢えて言うなら君たちの言うそれは普通の概念に囚われているから発生している。そして我々は普通を良しとしない。これを答えとさせてもらおうか」
言い切ったよ…この社長さん。つまり今までの変なことは全て計算して作られたってことだな。
「最後の質問は何かな?」
「俺の両親は幸せだったんでしょうか?」
社長さんが目を見開くと目を瞑り考える。そして口を開く。
「難しい質問だね。彼らは生きていた時は間違いなく幸せだったと思う。だけど不幸な事故で幼い君を残してしまったことは後悔しているだろうね」
「だけど君は両親の死を乗り越えて、今ゲームを仲間と楽しんでいる。私にはあいつの自慢げな声が聞こえる気がするよ。『どうだ! 誠吾は凄いだろう!』ってね。だから今の君の姿を見たら、彼らはきっと幸せに思うと私は思うよ」
「そうですか…ありがとうございます」
「私にはこれぐらいしか言えないからね」
お金を置き、席を立った社長は思い出したように言った。
「楽園での冒険を楽しんでくれたまえ。きっと天国にいる彼らもそれを望んでいるだろうからね。では、いつかまた出会う日を楽しみにしているよ。誠吾君」
また出会えるのかな?社長なんて中々会えるものじゃないと思うけど、社長は本当にわからん。ただ俺は出会えて良かった。それだけははっきり言える。




