#519 闇のホークマンとマッサージ
決闘分夕飯に遅くなったから、佳代姉たちに怒られた。夕飯を作ってくれて、待たせたんだから当然だ。お詫びにコンビニのアイスを買いに行ったから結構ログインは遅くなった。
いよいよホークマンの村だ。メンバーはリリー、ブラン、イクス、ノワ、セフォネにした。
リリーとブランは連戦だからしっかり回復と料理を食べさせる。
ぶっちゃけリリー、イクス、ブランでこちらの戦力は万全だ。ホークバレーの夜にはドラゴンゾンビとかいたからな。他のアンデッドモンスターの報告も受けているがこのメンバーなら負けないだろう。
俺は謎の神殿からホークマンの村がある山に行ける抜け道を教えてもらっているので、そこを通る。人が一人通れるぐらいの抜け道だ。そこを通ると山はもう目の前なのだが、新しいスケルトンが現れる。
ボーンソルジャーLv27
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ボーンナイトLv32
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ボーンキングLv37
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
全員武器を持ってやる気満々だ。
「タクト」
「あぁ。リリー、ブラン任せる」
「「うん(はい)!」」
まぁ、相手になってない。ボーンナイトがリリーの攻撃を盾で受けると盾は破壊され、星になる。
ソルジャーたちはブランに殺到する。するとブランは槍を掲げる。
「聖域!」
綺麗に消えてなくなりました。
だが、ボーンキングは流石に手強いみたいだ。最もリリーたちとまともに戦闘が出来るという話でだが…。
「聖櫃!」
「グランドスラッシュ!」
ボーンキングは聖櫃で弱体化し、リリーの一撃で剣を破壊され、吹っ飛ばされた。それじゃあ、解体をするか…俺は背後から不自然な風を感じ、隣にいたリリーを腕に抱え、横に飛ぶ。
「えぇ!? どうしたの? タクト?」
今のはなんだ?
「タクト!? 顔に傷が!?」
ステータスを見ると僅かにダメージと猛毒の状態異常になっていた。
「…何かいるぞ。イクス」
「レーダーに反応ありません。マスター」
イクスのレーダーをすり抜ける敵か…グリムリーパーの割には殺気すら感じなかったぞ。どちらかと言うとフクロウ系に近い。
そういえばサバ缶さんが何か言っていたな。
「…ブラン、強制を使ってくれ」
「はい。強制!」
しかし攻撃が来ない。撤退した?いや…このピリピリした空気はまだいる。
『今から照明弾を使って敵を炙り出す。たぶん戦闘になるから気をつけてくれ』
『わかった!』
『準備は出来ています。マスター』
『どんと来いなのじゃ!』
俺はインベントリから照明弾を取り出し、空に投げ、火のルーンで照明弾を使用する。
照らされた夜空にそいつらはいた。
レイブン?
? ? ?
黒い羽を持ち、手には鉤爪を持っている。一言で言うなら黒いホークマン。するとレイブンたちが一斉に襲ってきた。
「迎撃します」
イクスがエネルギーガンの乱れ撃ちをするが残像で躱される。更にこいつらは俺たちではなく、ブランを狙った。
「強制!」
「…無駄だ。雷気弾!」
「きゃああ!?」
ブランの強制を無視して側面から攻撃だと!?しかも話したぞ。
「…影潜伏」
「…逃がさん。雷気弾!」
ノワに雷の玉が放たれる。俺はそれを縮地で移動し、スカーレットリングで斬り裂いた。
「…ほう」
「悪いがノワをやらせるわけにはいかないな」
「では、守ってみるがいい」
目の前のレイブンが手で合図をする。すると夜空の四方から雷気弾が降ってきた。味方を伏せていたのか!
『『『『アクセラレーション』』』』
俺は全部斬り裂き、話したレイブンに斬りかかるが空に逃げられる。
「…撤退するぞ」
『はっ!』
何!?リリーたちと戦っていたレイブンたちが撤退する。
「…お前たちに警告する。ここより先はホークマンの領域。踏み込むと言うなら次は殺させて貰う」
そういうとレイブンのリーダーとおぼしきレイブンも撤退した。
「なんだったの? タクト」
「警告から読み取るならあいつらはホークマンの村の防衛部隊という感じだな…ブラン、みんな無事か?」
「は、はい。すみません…我が主」
「不意討ちだったんだ。仕方無いさ」
とりあえずボーンキングたちを解体すると全て外れた。
「どうしますか? マスター? 強行突破しますか?」
「いや…やめておこう。元々ホークマンの村には友好目的で来たんだ。ここで突っ込んだら完全にさっきの奴等とは殺し合いになる。俺たちも引こう」
「えぇ~」
「つまらんのぅ」
リリーとセフォネは不満げだ。セフォネは久々の戦闘だから尚更かもしれないな。
「さっきの奴等の戦闘について部屋で話を聞かせてくれ。全員で情報を共有しよう」
「任せてタクト!」
「イエス、マスター」
「任せるのじゃ!」
俺たちはホームに戻った。それを夜空から見ている者たちがいた。
「…隊長、奴等撤退しました」
「だろうな…」
「何故撤退したのですか? あんな奴等、俺たちなら」
「気楽なものだ…」
リーダーのレイブンはタクトと正面から敵対した。
『あの目…あの殺気…間違いない。あの男は俺たち側の人間だ』
故に先程から震えが止まらない。
『もし戦っていたら、どちらが強かっただろうな…』
そう思ってしまうのは彼が紛れもなくホークマンである証明だろう。
「夜のこの町を守るのが俺たちの仕事だ。敵を倒すのが目的ではない。殺し合いがしたいならホークマンになればいい」
「いえ、それは…失言でした」
「わかればいい。村に引くぞ」
『は!』
レイブンたちは村に帰った。
一方俺はリリーたちからレイブンの話を聞いた。レイブンの最大の能力はステルス性にあることがわかった。
イクスのレーダーをすり抜け、残像や幻影でイクスの射撃に対処してきたらしい。
武器は毒ありの鉤爪のみだったが、あの様子だと待機していた中に弓とかいそうだな。
「タクト、嬉しそう」
「あぁ…ものの見事に作戦に引っ掛かったからな」
ステルス性の部隊を伏せるあの作戦、撤退を決断するタイミング…俺が求めているのをあのレイブンは全て持っている。是非仲間にしたいものだ。
『むぅ~』
リリーたちがむくれる。
「どうした?」
「マスターが今まで見たことないくらい楽しんでいるからです」
俺は刀での真剣勝負もいいが、どちらかと言うと策と策がぶつかり合う戦闘のほうが楽しさを感じてしまう。だからこそ三国志や戦国時代が好きなんだよね。名軍師同士の戦闘とか最高だと思う。
「ん~…じゃあ、時間もあるし、みんなには特別に俺が考えている作戦を早めに説明しておこうかな」
俺は紙に色々書きながら説明した。
「流石タクトじゃな…考えることがえげつないのじゃ」
「まだ煮詰め切れてないけどな…これでレイブンの重要性はわかっただろ?」
『うん(はい)!』
そのためにはレイブンの情報を集めないとな…まずサバ缶さんに聞くとどうやらレイブンはまだ誰にも出会っていないらしい。
「タクトさんがそこまで目をつけるなんてよほど強いんですか?」
「イクスでも補足できない敵ですから…多分これから始まるイベントの鍵になる種族だと思います」
「理由を聞いても良いですか?」
「敵に悪魔がいるならこちらの夜の飛行戦力が少ないんですよ」
フリーティアの主力であるグリフォンとホークマンの飛行戦力は夜では明かりがないと厳しい。夜で明かりをつけたら、居場所がバレバレだ。狙い撃ちされるだろう。
「なるほど…確かにいるといないとではだいぶ違いが出そうですね…では情報を集めますか?」
「俺がします。ホークマンに知り合いがいますから、ただ騎士たちの訓練は任せて、大丈夫ですか?」
「夜は大丈夫なんですが、朝、昼は人数がどうしても少なくなりますね。それでも夏休みですからだいぶマシですけどね…出来ればやって貰いたいです。レベルアップのスピードが違いますから」
そこは因幡の白兎をメルたちが識別すれば済む問題だ。まぁ、時間が許す限り頑張ってみよう。
その後、俺は和狐に約束のマッサージをしてログアウトした。
リリーたちが気になって和狐の自室を覗くと顔を真っ赤にして、枕に顔を埋める和狐の姿があった。するとリリーたちの気配を感じた和狐はリリーたちを見る。
「…うち…もうあかん…」
そして倒れた。
『あわわわわわ』
和狐の今までとは異なる色っぽさを感じたリリーたちは戦慄したのだった。




