#520 レイブン情報集めとホークマンの村
翌朝、朝食を食べ終えログインした俺はナオさんからメールが届く。
『ブラックダイヤモンドの指輪が完成しました。今日の夜にはお店にいますので、取りに来ていただけませんでしょうか?』
ナオさんは現在大忙しだから仕方無いだろう。ギルドの人たちや俺以外の召喚師からの注文も受けている。他にも細工師はいるのだが、一番人気は断トツでナオさんだ。やはりイベントで俺とリリーたちの指輪を作ったことが大きい。
他の細工師も優秀なんだけどね…原因は俺の島の素材なわけなんだけどね。宝石や真珠を使いたい放題のこの状況は細工師たちにとって、夢のような状況だろう。目指せナオさん越えを果たして貰いたいものだ。
俺が下に降りるとリリーたちからマッサージについて追及を受けた。話すより体験したほうがいいのだが、それは和狐が全力で止めた。
「みなはんにはまだ早いどす!」
『えぇ!? ずーるーい!』
まぁ、議論を続けててくれ。俺はお城に向かった。
目的はフリーティア所属のホークマン、エアティスさんからレイブンのことを聞くためだ。
「朝練の最中に押し掛けてすみません」
「構いませんよ。タクト殿の話なら何か意味があるのでしょう。して話とは?」
「実はレイブンについて、お聞きしたくて」
「レイブン!? まさか戦ったのですか!?」
やはり知っているみたいだな。
「奇襲を受けただけです。少し戦闘にはなりましたがお互いに引いてその場は納まりましたよ」
「そうですか…それは良かった。全く…あいつらは命がいらないのか?」
いやいや、かなり強かったよ?それに俺が殺人者みたいに思われているのは心外だ!思いっきり人斬ってるけど!
「それで彼らはホークマンでいいんですか?」
「はい。最も乱暴者で村では嫌われていますね」
ん?あのレイブンは村を守っているんじゃないのか?
「村を守っているのに嫌われているんですか?」
「はい? 彼らが村を守っている? ご冗談を。彼らはずっと村から外れた場所に住んでいるだけですよ」
はい、変だね。エアティスさんはレイブンたちが夜外に出て、村を守っていることを知らないみたいだ。
「そうですか…所でホークマンの村の夜の守りはどうなっているんですか?」
「一応結界で守られていますが私が知る限り襲撃にあったことは一度もありませんね。まぁ、標高の高い山にガルダ様の加護もありますから、モンスターたちは近づけないんです」
絶対に違うね…恐らくレイブンたちがモンスターを撃退してるんだろう。しかもホークマンたちには黙って…何か理由があるとみた。
「ホークマンの村に行きたいのですが」
「それなら私が案内しましょう。マケマケ神殿はご存じですか?」
あれ、マケマケなんだ…モアイ神殿だと思った。マケマケはイースターの神話で人間を創造した最高神だ。そりゃ神殿ぐらいあって当然だ。
モアイは完全に油断させるトラップだな。後でみんなに教えてあげないとね。
「知っています」
「では…訓練もありますから昼の15時からで大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
これでホークマンの村に入る準備は出来た。
次に俺は騎士たちの訓練を見る。
昨日のレベルアップのおかげで騎士たちはシルバーウルフぐらいなら自分たちだけで倒せるようになっていた。
ただ問題は武器の扱いが恐ろしいほど、下手だ。最初の頃のリリーたちより遥かに酷い…これはてこ入れしないといけないな。
「今日の訓練は俺と一対一で戦って貰う」
『えぇ!?』
「本気で戦わないから安心していい。ただお前たちは全力で来い。武器は自由。もし俺にダメージを与えられたら、報酬にお前たちのリクエストに答えてやろう」
『しゃー!!』
騎士たちのやる気ボルテージがMAXになった。彼らはリープリッヒの常連でリリーたちのファンらしい。結果報酬はファンの子が作った手料理ということになる。すると当然軍師志望の騎士たちは聞いてくる。
「あの…我々は?」
「君たちにはこれ」
俺は将棋セットを出す。
「なんですか? これは」
「将棋というゲームだ。ルールはこの紙にある。君たちにはルールを見て、対戦して貰う。対戦相手を選ぶのは自由だ。ゴネスとの戦争が始まる前日までに一番勝率が良かった人には同じ報酬だ」
「ただし同じ勝率の場合は報酬は無しだ。気をつけるようにな。後、他の人の訓練の時はそっちに集中すること。いいな?」
『はい!』
将棋は時間がかかるゲームだ。更に俺は将棋の攻め手など一切教えていない。しかも同じ勝率は許されない。さて、どうなるか楽しみだ。
それじゃあ、俺はフリーティアから支給された訓練用の剣を取り出す。
「じゃあ、訓練を始めようか」
「うおぉぉ!」
「大振りをするな。踏み込みが浅い。握りが甘い。下がるな。剣を落とすな。背中を見せるな。気合いが足りない。背筋を伸ばせ。視線を反らすな」
数分後、全身叩かれ、積み上げられた騎士たちの姿があった。
「難易度が高すぎる…けど恋火ちゃんが一生懸命作った手料理」
「でも、イオンちゃんの手料理のため」
「和狐たんの家庭料理」
『もう一度、お願いします!』
予想以上にリリーたちの料理効果があったようだ。しかし彼らの努力は届くことはなかった。それでもダメなところを少しずつ直している。
後は俺が用意した抜け道に気付けるかどうかだ。
一方軍師組は将棋に大苦戦。考えれば考えるほど、時間が過ぎていく。今回は時間のルールはないが、勝率が物を言うから大変だ。
いち早く攻め手、守り手を考えるかが勝敗の鍵だろう。王様を互いに逃がした勝負とか悲惨だ。と金を量産して、勝負が付かなくなったからな…これはただの時間の浪費になってしまう。
お昼を食べたあとも勝負が続き、約束の時間で俺はギルメンにバトンタッチした。そこでマケマケの情報を伝えると絶句していた。頑張って攻略を目指していたからな。
その後、マケマケ神殿でエアティスさんと合流し、ホークマンの村に向かった。
すると途中でホークマンたちに止められたがエアティスさんのお陰で無事にホークマンの村に到着した。
道中で確認したがガルダの加護はホークマンの村がある山周囲を飛行禁止にする効果みたいだ。
村の姿は本当にマチュピチュにそっくりだな…違いは村の中央にある鳥人の像だ。
「これはこの村を作ったガルーダの王の像です」
ガルダとガルーダは別なんだ。どうやらガルダが神様でガルーダはホークマンの進化先みたいだな。
現実ではガルダの別名がガルーダとなっている。ガルダはインド神話に登場する炎の様に光り輝き熱を発する神鳥であり、ヴィシュヌ神の乗り物として登場する。
インド神話で蛇や竜とされるナーガ属を倒す鳥としても有名だな。
その後、村長と話したが若かった。二十歳ぐらいの顔や肉体で実年齢百歳越えているのは反則だろう。
これはガルダ神の加護が原因らしい。一生若い体で終わることができる。ある意味、人類が夢見る生活がここにはある。
そんなホークマンも一度絶滅しかけたらしい。原因がエクスマキナ。ホークマンたちが最初に喧嘩を売って、エクスマキナの容赦ない反撃にあい、絶滅しかけたらしい。
人間の国で生き残った数人のホークマンを像のホークマンが集めてこの村を作ったらしい。イクスを出すのはタブーであることは理解した。
村長の長話に付き合った甲斐があって、村に泊めてもらえることになった。そしてレイブンたちのことを聞いたがやはり村人もいいイメージを持っていないみたいだ。
「レイブンのことを知りたいのか?」
「村長さんはご存知なのですか?」
「あぁ…ちょっと家に来なさい」
そこで俺はレイブンたちの歴史を知った。まとめるとこんな話だった。
かつて勇者として生きたくないとガルダ神に反逆したホークマンがいた。ガルダ神はそれを認めたがホークマンとしての姿を代償として、支払うことになる。
その後、彼から産まれた子は全てレイブンとなり、村では差別されるようになる。
しかし歴代の村長は彼らも同じホークマンだと訴えたがそれは敵わず、せめて彼らに仕事を与え、報酬を払うことにした。
それが夜の町の防衛だった。これはレイブンの長の頼みで極秘の任務とされ、以後夜の村はモンスターに襲われることは無くなったそうだ。
「レイブンはなぜ極秘の道を選んだのでしょうか?」
「それは…直接聞いてみるといい。彼らは村の外れにある洞窟の中で集落を作っている。夜に行ってみるといい」
「なぜ俺に教えてくれるのですか?」
「年寄りの昔話に付き合ってくれたからね。それにあなたと彼らは似ている。闇を知りながら、その心には確かな正義がある。あなたなら彼らと対等に話せるかもしれないと思ったからです」
なるほどね…かなりプレッシャーだが、やるしかないな。
「夜に彼らと話してみます」
「頼みます」
俺はホークマンの村がワープゲートに登録されたのを確認して、フリーティアに戻った。夕飯までにリリーたちのレベル上げをまたしよう。




