#473 魔塩と救援クエスト
翌日の朝、ご飯を食べてからログインする。すると俺の部屋にはリリーたちがいた。結局昨日のままか…俺の体は完全にホールドされているので、全員を起こす。
さて、外の様子はどうだろうね?昨日感じていた雨風は感じないが、いかんせん真っ暗だ。そこで違和感を覚える。夜は真っ暗なのは普通だが、朝でこれは変だ。板で窓は閉じたが、隙間から日の光が全くないのは明らかに不自然だ。
すると玄関にみんなが集まっていた。
「おはよう。どうかしたのか?」
「おはよう、タクト君。それが玄関の扉が開かないのよ」
何?試しに開けてみるがびくともしない。引いてみるが板があり、それがびくとも動かないんだよな。
魔法はやはり使用できない。さて、どうするか…このままでは出れないぞ。
「まるで玄関が雪で埋もれているみたいだね」
メルの例えがしっくりするな…そこで閃いた。
「和狐、式神で外の様子を見れないか?」
「やってみます。式神」
紙の式神がドアをすり抜ける。どうやらうまくいったみたいだな。
「なんどす…これ?」
「どうした? 和狐」
「街中真っ白になっとります。このドア…というか家全体が白い塊に覆われとります」
白い塊?雪とは考えられないが物質なわけだ。ならば手がある。
「召喚! ぷよ助!」
ぷよ助が現れる。相手が物質ならぷよ助の敵じゃないだろう。
「ぶよ助、ドアごとでいいから分解してくれ」
ぷよ助がくっつき分解を始める。そこで閉じ込めていたものが何かわかった。
魔塩:レア度? ? 品質?
魔素と混じった塩。固まると日の光を通さないほどの遮光性と魔法でもビクともしない硬さを誇る。更にマナを乱す効果もある。食べると魔素に犯されるので、食べることはしないこと。
出たよ…魔素。しかしぷよ助は順調に溶かしていく。そして遂に魔塩の壁を突破した。
「よくやったな! ぷよ助! やっと外ーー」
外の光景を見ると和狐の言ったとおり一面真っ白だ。フリーティア城も魔塩に包まれている。景色はきれいだが、これは酷いな。
みんなも外に出ると絶句する。
「ちょっと待って…これ、どうするの?」
確かにこれを全部溶かすとは考えたくないぞ…
「まずはお城に向かいましょう。タクト君」
「はい。あ、ぷよ助。分裂してくれ」
ぷよ助が四つに分裂する。
「ぷよ助を持って魔塩の処理をしてくれ。アーレイはギルド、ルークは獣魔ギルド、烈風さんは他のプレイヤーの救出をお願いします。魔塩を突破できたら、アーレイとルークも町の解放に動いてくれ」
『わかった』
俺たちはそれぞれバラける。
俺はフリーティア城に着くと扉から激しい音がする。どうやら力ずくで突破しようとしているみたいだな。
「タクトです。これから扉を開けますから離れてください!」
何度も叫ぶと音が止む。
「ぷよ助、頼む」
ぷよ助が分解していく。流石に時間がかかっていると救援でアウラさんが以前召喚したウェルシュドラゴンと共に来る。
「お待たせ。後はあたしたちがするわ」
ドラゴンブレスで一撃。俺の苦労って一体…
そんなこと思っていたが方法はどうあれ扉を開けることに成功した。扉が開くと兵士たちから歓声があがる。しかしその歓声は外の光景を見ると絶句に変わる。
町中白一色に変化していたら、そうなるのは当然だろう。
「この白いのはなんだ?」
「魔塩と呼ばれる物みたいです。食べると魔素に犯されるそうなので、注意してください」
「あっぶねーな。とりあえず対策を考えねーと。お前らが使ったのはそれか」
俺はスライム、アウラさんはドラゴン。酷い差だ。
「そいつらで町を救えるか?」
「…町が吹っ飛ぶわね」
「俺も溶かしてしまうと思います」
「実際にギルドの扉を溶かしたものね」
ガルーさんが頭を抱える。とにかくお城に入り、対策を考える。
「魔法が通じず、武器もダメならアイテム的な解決策を講じるしかないですね…」
「しかしどんなアイテムが効果があるのかわからない」
「こういうのはエリクサーラピスの領域だからな…世界中がこの有様ならさぞ儲かるだろうな」
ガルーさんの言う通り作れたらいいんだが、ミールの聖水でもまるで効果を示さなかったからお手上げだ。するとルインさんに連絡が入り、その情報を伝える。
「どうやら錬金術が有効みたいです」
「錬金分解か! 使えるやつは少ないが一つでも多くの対策が増えるのは助かるな」
そんな技があるんだね…こわ。
「物質変形や物質変換でもいけるみたいです」
物質変形は魔塩の形を変えることで扉を開ける方法で物質変換は魔塩は普通の塩にして、除去する方法だ。
「一番良さそうなのは物質変換ですね。ただの塩になったら、洗い流すことも可能でしょうから」
「ただ問題は物質変換は個に対するスキルだったはずです」
「時間はどうしてもかかるか…しかしそれでもやるしかあるまい。ワシからクエストを出そう」
インフォが来る。
『依頼クエスト『フリーティアの魔塩を取り除け』が発生しました』
依頼クエスト『フリーティアの魔塩を除去せよ』:難易度C
報酬:お金(成果により変動)
町を壊すことなく魔塩を除去せよ。
まぁ、これは出番が無いかなーと思っていたら、伝令のホークマンが来る。
「緊急報告! 現在ブルーメンの港町が凶暴化したモンスターの群れに襲われています!」
「なんだと!? 至急騎士団を向かわせろ!」
「それが魔法が使えず、グリフォンたちの厩舎が魔塩の影響を受けていて、ホークマンしか向かえません!」
「ッ!? しまった…」
なるほど…そうきますか。
「私たちなら召喚師がたくさんいるので、すぐに救援に迎えます。ね? タクト」
「はい」
「すまない…頼めるか?」
「お任せください」
俺が返事を返したことで再びインフォが発生する。
『依頼クエスト『ブルーメンの港町を救え』が発生しました』
依頼クエスト『ブルーメンの港町を守れ』:難易度B
条件:フリーティアにいるプレイヤー参加可能、助っ人NPC参加可能制限なし。
報酬:結果により、報酬に変化あり。
凶暴化したモンスターたちからブルーメンの港町を守れ。
何気に初めてのギルド規模の戦闘になるな。気合を入れていきますか!と持っていたら、メールが来る。差出人はリーシャさんだ。
『アクアスで凶暴化したヒュドラが暴れています! お願いです。助けてください』
メールを見たからインフォが来る。
『依頼クエスト『水樹の町アクアスを守れ』が発生しました』
依頼クエスト『水樹の町アクアスを守れ』:難易度B+
報酬:結果により、報酬に変化あり。
凶暴化したヒュドラから水樹の町アクアスを守れ。
こちらは個人クエスト…ほっとくわけにはいかないよな。
俺はルインさんに状況を説明して、俺はアクアスに向かうことした。ギルドのみんなはブルーメンの港町に向かう。これがある意味、最初のギルド『リープリング』の初陣となった。




