#250 引っ越しと公爵
俺はリープリッヒでモッチさんに事情を説明する。その後、俺たちはお引っ越しをする。ベッドはここに残しておくことにした。
元々はモッチさんの親父さんのお店だし、愛着もあるからな。お金にも余裕があるし、これでいいと思う。
ルインさんと相談してお店もモッチさんに返そうと思う。モッチさん、お店無くなって凹んでいたからな。
その後、ヘーパイストスを連れて、お引っ越しをする。
「す…凄い家ですね…」
「俺もそう思うよ。ヘーパイストスの鍛治場だが、ちゃんとした物を建てるか?」
「え!? いいんですか!?」
「あぁ。無駄に敷地が広いし、報償金をたくさん貰ったからな。ヘーパイストスが装備を作ってくれたおかげなんだから、任せておけ」
ヘーパイストスに凄く感謝される。まぁ、これも必要経費だろう。
引っ越し作業をしているとインフォが来た。どうやらリーゼが来たみたいだ。
俺がイクスとブランを連れて、玄関に向かうと知らないダンディーなおじ様とリーゼがいた。
「タクト! 早速遊びに来たのじゃ!」
「まだ引っ越し中なので、何もないですよ」
「はは…悪いね。娘は一度決めると止まらない性格でね」
娘ってことはやはりリーゼのお父さんか。
「初めまして、召喚師のタクトです。娘さんとは仲良くさせていただいています」
「君のことはリーゼや兄から聞いているよ。リーゼの父、ハンズだ。よろしく頼むよ。フリーティアの英雄殿」
「…その呼び名は決定なんですか?」
「はは! リーゼが言っていた通りの人間だな! 今のうちに馴れておいたほうがいいぞ? それだけのことを君はしたのだからな」
俺だけがしたわけじゃないのに…とにかくわざわざ家に来てくれたので、家の中にご案内する。
「すみません…こんなものしか用意出来なくて」
「いやいや。噂のドリンクを出して貰って悪いね。さて、今日は君にお礼と話があって、来たんだ。まずは娘を助けてくれて、本当にありがとう」
あぁ。リーゼを助けたお礼のためにわざわざ来てくれたのか。
「頭をお上げください! 俺はリーゼを助けたかったから助けただけですから」
「それでも娘の命が助かったのは事実だ。それに娘を成長させてくれた。これはそのお礼だ」
ハンズさんが出したのは謎の石だった…なんだこれ?識別してみる。
?の封印石:レア度? 封印石 品質?
?が封印された石。
うーん…謎アイテムだ。ハンズさんが説明してくれる。
「これは強力な召喚獣が封印された石なんだそうだ。君が召喚師を続けるならいつか君の力になってくれるはずだ」
こんなアイテムがあるのか…恐らく召喚魔術でこれを使うものが来るんだろうな。大切に保存しておこう。
ハンズさんが改めて話をする。
「今回の事で君はフリーティアの貴族から注目の的となった。特に召喚獣の強さは君も理解しているだろう?」
「はい」
リリー、イオン、ノワの竜化、セチアの精霊召喚、恋火と和狐の獣化が代表だろう。
「そしてその力を利用としようとするとする者が沢山いるはずだ。そこでこれだ」
ハンズさんが取り出したのは連携を記したスクロールだ。
「私と連携を結めば、フリーティアの貴族はもちろん他の国からも君たちを守ることが出来る」
「…そういう話をするということは既に動きがあるんですね?」
「まぁ、そういうことだね。ライヒ帝国、ヴェインリーフ、ウィザードオーブ、エリクサーラピスはエクスマキナと魔法剣について、既に圧力をかけてきている」
早すぎだろ…ライヒ帝国とヴェインリーフは武器に感心が強いからそうなって当然だな。ウィザードオーブも魔法に関係がある魔法剣に関心がありそうだし、エリクサーラピスも錬金術師の国なら魔法剣に興味を持っても、おかしくはない。
「ドラゴニュートなどは問題にならないんですか?」
「あれは人間に到達不可能な領域だからね。到達不可能に挑むより可能性があり、より軍事力になるものを選ぶものさ」
そういうもんか…しかしエクスマキナの武器はエクスマキナにしか作れないし、専用の武装だ。俺の魔法剣もセチア曰く俺にしか作れない。
きっとこのことは知らないし、教えても信じないんだろうな。
「この連携の話…グラン国王様の判断ですね?」
「君は賢いね…いくら英雄勲章を与えても、君たちはフリーティアの軍属ではないから、もし君たちに何かあっても、国として動けないんだよ」
俺たちの立場はフリーティアを拠点にしている冒険者だからな。
「そこで私と連携する話が出てきた。私はグラン国王様の弟でね。私の連携相手なら、国として動きやすいという判断だ」
なるほどね。もう国のいざこざに巻き込まれることが確定している流れだが、回避不可能なら先手を取るしかない。
「お話はわかりました。俺としては受けたいと思いますが既に連携相手がいるので、相談させて貰えますか?」
「そうか。では答えが決まったら、私に連絡をしてくれたまえ。もし連携を受けて貰えるなら手続きは私がしておくよ。これが私の連絡先だ」
ハンズさんとフレンドになり、ハンズさんたちは帰っていった。
その後、引っ越しをしていると貴族たちが次々来る。はっきり言おう。うざい。
「タクト…大丈夫?」
「あの…顔が怖いですよ? タクトさん」
「リリー、イオン…あいつら、消してくれないか?」
うざったい貴族ラッシュで闇落ち寸前の俺をリリーたちが必死に宥めるのだった。