#974 ゴールドパンプキン漁
ハロウィンのケーキを味わった俺はログインし、リリーたちのご飯を注文するとまたカボチャ料理のフルコースだった。
「おーにーくー」
「おーさーかーなー」
「スーキールー上ーげー」
「せーんーとーうー」
これを見たリリーたちが壊れた。するとセチアが注意する。
「皆さん、失礼すぎますよ。こんなに美味しい料理の数々なのに」
「セチアちゃんにとってはそうだよね!」
「料理にお魚が出ないし、こんな呪いまで受けて散々ですよ!」
「はいはい。みんな落ち着け。聞いただろう? ここでは野菜ぐらいしか育てられないって」
調味料や食材などは魔女が提供しているらしい。不老不死でもお腹が減るし、魔女にとって何か不都合が生じるからだろう。恐らく魔女が得ている力が関係している可能性が高い。
調味料などがいいならお肉とお魚もありそうなものだが、魔女は徹底的なベジタリアンであることが判明した。どれだけお願いしてもお肉とお魚はくれないとホテルの人が言っていた。
「おのれ、魔女め。タクトの血までカボチャの味にするとは許せないのじゃ!」
「次はわたしの番です。マスター」
「あなたたちはいいわよね…タクトさえいればいつも美味しい料理を食べれるようなものなんだから」
「俺は料理じゃないぞ。ファリーダ。二人は首を傾げるな。違うから」
ご飯を食べ終わった俺たちはフィールドに集まり、そこでシャローさんたちが考えた作戦を聞き、全員がポジションに付く。
まずは巨大な網を張るグループ。これはアルさんと雷電さんたち、漁師たちが担当する。次に網から逃がさない役と網の中にカボチャたちを誘導する役。これは俺を含むルークたちで挑む。俺からはグレイと虎徹、優牙を選んだ。
そして最後は囲い込む先でカボチャたちを逃がさない為に封鎖スキルを使う満月さんというフォーメーションを組んだ。
「ごめん! 逃がしちゃった! あ! また!」
「この! くそ! どんどん逃げられるな!」
「綺麗に俺たちを避けているな…」
「ラスト一匹よ! あいつだけは逃がさな…失敗ね」
最初の漁ではゴールドパンプキンを捕まえることが出来なかった。
「魚より賢いですね…まさか平気で召喚獣に向かっていくなんて予想外でした」
「そう聞くと凄いシュールよね…」
「集魚灯のようなものがあればいいですけどね」
集魚灯は光で魚を集めるライトの事だ。確かに一か所に集めることが出来れば成功率は格段に上げるだろう。罠にも引っかけやすいしな。
「掲示板にもその意見はありましたけど、現時点でバームブラックから得られるアイテムにそういうものは見つかってないですね。逆に幽霊たちが逃げ出すアイテムや狙われなくなるアイテムがありますね」
「ん? 逃げ出すアイテムって使えませんか?」
「え? そんなアイテムをどう使うつもり」
「いえ! 使えますよ! 追い込み役の人たちからゴールドパンプキンが逃げてくれるなら、この漁は成功するはずです」
寄って来るのが問題で失敗したわけだからな。こうしてチロルたちに配られたアイテムがこちら。
ロザリオのコイン:限定アイテム
効果:幽鬼が逃げ出す
持っているだけで幽霊モンスターが逃げ出すお守りのコイン。
これを持って、再挑戦すると結局ゴールドパンプキンは捕まえることが出来なかったがこれは召喚師たちの連携が原因だ。自分が担当するポジションと連携をしっかり話し合い、三度目の挑戦に挑む。
「いい感じです!」
「満月たちが見えて来たわよ! 後、少し! 集中を切らさないで!」
「どうやらいい感じにいっているようだな。全員構えろ! ゴールドパンプキンを一匹も逃がすな!」
「「「「おぉ! 封鎖!」」」」
満月さんたちに突撃するゴールドパンプキンだったが封鎖スキルの壁にぶつかり、跳ね返る。この隙に網で囲い込んだ。その瞬間、カボチャの捕獲が成立し、自動的にカボチャたちは解体される。
「「「「よっしゃー!」」」」
「「「「やったー!」」」」
俺たちが喜んでいると満月さんが言う。
「喜んでいるところ申し訳ないが網から出してくれるか?」
「「「「そうでした…」」」」
確実に捕まえるために満月さんたちごと捕まえることにしたことを失念していた俺たちだ。そしてもう一つ失念していたことがある。俺たちの前に黄金が集まり、巨大なカボチャが姿を見せた。
ゴールデンパンプキンキングLv65
ボーナス限定モンスター 討伐対象 アクティブ
そう。ボスの登場だ。そしてゴールデンパンプキンキングが不気味に笑む。
「ガァアア!」
危険を察知していたグレイがゴッドブレスを放つとゴールデンパンプキンキングをすり抜けてしまう。
「カボカボカボ! …カボ」
グレイを笑ったゴールデンパンプキンキングが光を放つ。叡智がそのスキルを捉えた。
「自爆の上位スキルだ! 逃げろ!」
「ゴールデン!」
そう言いながら自爆した。これにはみんながツッコミを入れる。
「「「「カボ以外に話せたのか!」」」」
散々カボという声を聞いて来たから言いたくもなる。ツッコミを入れれるくらいなんだから被害は最小限だ。グレイなどが上手く生産職たちを助けている。
「これだけゴールドじゃなかったのはこれがしたかっただけですかね?」
「でしょうね。ゴールドと叫びながら自爆するより、ゴールデンのほうがいいでしょうから」
運営も大変だ。そう思っていると俺の目の前にゴールデンパンプキンキングが現れる。しまった!
「ゴールデン!」
『テレポート』
俺はなんとか回避した。危なかった。するとまた目の前に現れた。今度は星震を放つがグレイ同様で通らない。結果、また逃げるわけがだが、しつこく追ってくる。
「なんという爆弾カボチャ…」
「助けに入るべきでしょうか?」
「そうだな…」
皆が考え込んでいるとゴールデンパンプキンキングが現れた。
「「「「逃げろー!」」」」
「ゴールデン!」
俺はこの隙に武器とアイテムを取り出す。
「さぁ。こい! 爆弾カボチャ野郎! 真っ二つに割ってやる!」
俺がそう言うとやってこない。物凄く恥ずかしい。
「…舐めるな」
神瞳でゴールデンパンプキンキングの動きを補足し、ゴールデンパンプキンキングの出現に合わせて装備したマテリアルリングを向けるとマテリアルリングの光を浴びたゴールデンパンプキンキングは怯んで逃げ出す。やはりあの攻撃を外しているのは幽鬼の加護が原因か!
みんなが次々攻撃を仕掛けるがゴールデンパンプキンキングは攻撃を全て躱して逃走していく。そこで優牙が動いた。
「ワオーン!」
優牙の月食を受けてゴールデンパンプキンキングは暴走状態となる。結果、逃走スキルが封じられることとなった。生産職にゴールドパンプキンを捕まえる方法があるように戦闘職にも倒す手段があるとは思っていたけど、暴走の状態異常とは思ってなかった。
暴走状態のゴールデンパンプキンキングはプレイヤーのみんなに突進しながら俺に向かってくる。
「虎徹!」
「ガウ!」
虎徹と超連携が発動し、訓練した連携技が決まる。しかし倒すことが出来なかった。それでもみんなの攻撃の時間を作るのには十分。全員の攻撃が入り、倒すとインフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント3ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント3ptを獲得しました』
ステータスポイントは俊敏性に回して、残りのスキルポイントは199ptとなった。これだけスキルポイントを貯め込んでいるプレイヤーは少ないだろうな。
今回の戦闘で俺を含めて参加したみんながレベルアップした。かなりのカボチャモンスターを倒してきたけど、グレイたちは二レベルアップだ。これはおかしい。
「ゴールデンパンプキンキングとゴールドパンプキンはボーナスモンスターでもあるようですね」
「やっぱりそうですか」
「間違いないです。物凄いレベルアップしましたから」
皆が喜んでいる一方で俺は優牙を呼ぶ。
「まさか暴走を効く事を知っていたのか? 優牙?」
もし知っていたなら俺たちはもっと早くゴールドパンプキンを倒すことが出来たことになる。
「ガウ? ガウゥ~」
優牙は首を傾げてから顔に片手を乗せてあちゃーのポーズを取った。そして手を少しずらして俺の顔を確認するとまた同じことを繰り返す。可愛いけど、それを見ていたグレイに怒られることになった優牙である。そんなことをしているとルインさんが急に叫んだ。
「どうしたの? ルイン姉。折角みんなが喜んで」
「時間よ! 時間!」
「「「「時間? あ」」」」
大規模な漁を三度もして、時間があるはずがない。ましてやボス戦までしたからな。
「「「「やばい!」」」」
俺が代表してゴールデンパンプキンキングを解体すると金カボチャ百個が手に入った。これで呪いを受けたみんなをだいぶ回復出来るはずだ。そして急いで砦攻略と俺が考えた悪巧みの準備を始めるが残念ながら時間がなく、砦攻略は作戦無しのごり押し攻略をすることになった。




