第四話「サンタの正体を突き止めろ」
「だったら俺達でそのファントムの正体を暴いてやるよ!」
いつになくイイ笑顔で言った広猟に未谷も俺もポカンとした後「あ、これは言い出したら止められないやつだ。」と悟り、広猟の提案を飲んだのだった。
未谷は説得する手間を惜しんだが為、俺はその台詞に「そのどこの馬の骨とも判らない野郎をきっちり退治しといてやるよ!」とルビが振ってあったのに気付いたが為。
20XX年12月24日12:00
「もろびとこぞりて、迎祀れ。
久しく待ちにし、主はきませり。
主はきませり。
主は、主は、きませり…。」
大聖堂からパイプオルガンの音色と共に歌声が漏れ出す。
昼間の合唱会は周辺の小中学校を始め、キリスト系の幼稚園からの参列者が殆どな為、日本語の讃美歌が大聖堂に響き渡る。
厳かな雰囲気に満ち満ちた大聖堂。
それに対するは、さっき未谷の隠れていた木の覆い茂る物陰に隠れる俺達。
…はっきり言おう、シュールすぎる。
「…なあ、これ俺も参加する必要あったか?」
「はあ?お前、俺がここで一人でいたら完全に不審者だろ?
でもお前も居ることで怪しさ半減だ。」
「寧ろ倍増していると思うのは俺だけか?」
誰にも見られないよう小声で喋っているから、更に怪しさ倍増だ。
本当なら今頃合唱会昼の部を最前列に居座り、合唱会夜の部まで余韻を楽しむ為耳をかっぽじって聞き入って堪能しようと思っていたのに…。
男の俺から見ても素直に可愛いと思える聖歌隊制服に身を包んだ未谷を目の前にしている筈が、現実はぶつぶつ呪詛を吐いている広猟の隣で隠れているなんて…。
「はあ…。」
「!!しっ!大上!!」
「ああ?何だよ?」
「……誰か、来た。」
コツコツコツと革靴が石畳を蹴る音と共に、何か固い音も聞こえてきた。
固唾を呑んでファントムと呼ばれる人物の登場を待ち構えていると、そこに現れたのは―――。