第三話「今宵この場所で」
最近キャラが迷走しだしていますが、気にしないで下さい。
「なーにやってんの?み・づ・き!」
そして多分に息を含んだ問い掛けを未谷の耳元に囁きかけた雪月は、吃驚した未谷に声にならない叫びと共に、盛大に突き飛ばされたのだった―――何故か俺も巻き込みつつ。
20XX年12月24日9:45
「~~~何すんだ、未谷!」
「そ、それはこっちの台詞!!
何すんのよ!雪月!大上!!」
「俺は何もしてねぇ!!」
取り敢えず即座に否定して上に乗っていた広猟を押し退ければ、流石に悪いと思ったのか未谷の表情が曇った。
でもそこで謝罪しないのが未谷らしいところで、すぐさま続けて起き上がった広猟に詰め寄り一通り責め立てる。
「で、弥月はここで何してたの?」
「う、うん、実はね…。」
一通り責め立てて気が済んだのか、いやにしおらしくあんなとこに居た理由をとつとつと話し出した。
なんでも声楽部に伝わる七不思議に、ファントムに愛された歌い手は、クリスマス合唱会の日人知れず一輪の花が贈られる、というものがあるらしい。
学校の怪談にあるような七不思議なのかと思ったら、時々間が空くこともあるが、実際に贈られる歌い手はいるそうだ。
で、未谷は毎年ファントムから花を送られているのだが、本当にファントムが実在する訳が無い。
今年こそ花の贈り主を突き止めてやる!と、控室のある大聖堂に隣接する小屋(といっても一戸建て並の大きさはあるが)の入口を見張る為隠れていたらしい。
「そう言えば弥月ってお化けの類が苦手――って言うか怖いんだったよな…。」
「な、何言ってるのよ!大体、今の文明社会においてお化けなんて存在する訳ないじゃない!
そ、それにほら!やっぱり貰ってばっかりだと悪いし、お礼位言いたいし!!」
慌てて弁明する未谷の姿は正に“語るに落ちる”と言った様で何だかキュンッとくるが、それが広猟の手によってだと思うと、軽く嫉妬心が燻られて少々悔しい。
それに、そのファントムとやらも気に入らない。
こっちは惚れた女に気の利いた一言も贈れないってのに、そいつは花を贈ってるだと…?!
「てか、こんなとこで油売ってんなら練習の一つでもしとけよ。」
ここで「外は寒いから喉の為にも室内にいろよ、未谷の歌う讃美歌楽しみなんだ。」位言えればいいのに、広猟曰く“つんでれ”な俺はいつも憎まれ口を叩いてしまう。
予想した通り機嫌の悪くなった未谷がキッと睨んでくるのに軽い自己嫌悪とショックを受けつつ、肩や頭に引っかかっている葉っぱを取ってやる。
「ま、言い方はキツイけど大上の言う通りだよ。
まだ日の出てる時間とは言え外は寒いんだし、中で誰かが来るのを待ってた方がいいんじゃない?」
「…それは昨年やって逃げられたから……。」
その直後だった。
未谷と、フォローしてくれた広猟に軽い劣等感と嫉妬心を募らせ未谷のしょんぼりした声に再びキュンッとした俺に、広猟がとんでもない提案をしたのは。




