表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねらわれた童貞学園  作者: どどど、童貞ちゃうわ
7/24

第7話 童貞、売るよ!

本日二度目の更新です。

 翌日の昼休み。

 屋上で弁当を広げる俺の前には、阿津鬼と碗力のふたりも一緒にいた。


「おう碗力、テメエの昼飯は購買のパンかよ」

「誰っすか君? 自分、君みたいなDQNドキュンなんて知らないっすよ」

「んだとゴラァ!? この阿津鬼様を知らねーだと? もう少しでS組代表になりかけたこのオレをぉぉ!」

「知らないっすよ。クラス代表にもなれない程度の実力しかないのなら、自分が知り用ないじゃないっスか」

「言ってくれるじゃねぇーか……っんならオレ様がテメェの脳みそに忘れられない思い出刻みつけてやろうかぁ!? ああん!?」

「やれやれ、っスね。そんな雑魚みたいなセリフしか言えないなんて……耳障りだし目障りなだけっス。これ以上キャンキャン犬みたいに吠えるっていうのなら……凍らせるっスよ?」

「おもしれぇ……やってみろや!」

「後悔……するっスよ」


 睨み合いながら立ち上がる二人。

 俺は慌てて二人の間に体をねじ込み、仲裁に入らざるを得なかった。


「や、やめっ、やめろってふたりとも! ケンカなんかするなって!」

「ジャマすんなぁ富国ぅ! このデブを“キョーイク(教育)”してやんだからよぉ!」

「富国君、そこをどくっス。こんな前世期の遺物みたいなDQNは、氷像にして晒し者にしてやるのが一番なんス」

「だ、だからやめろって! 校則にも『私闘は禁止する』って書いてあるだろ!」


 おでこをくっつけて睨みあう二人をなんとか引き離し、落ち着かせる。


「落ち着けよ阿津鬼、ケンカなんかするな」

「でもよ富国、そもそもアイツがこのオレ様のことを『知らない』なんてディスりやがったから――」

「碗力は自分の心を凍らせていたから、言葉通りの意味で他の生徒のことなんか知らなかったんだよ。ほら、碗力はクラス代表になった俺のことも知らなかったんだぜ?」

「それは……そうだけどよぉ……」

「それから碗力、」


 俺は体の向きををくるりと入れ替えて、こんどは碗力のほうを向く。

 碗力の両肩に手を置いてから、諭すように話す。


「ダメだろ碗力、そんな言いかたしたら誰だって怒るって。そんなんじゃ『友だち』をつくれっこないぞ」

「いや、でもっスね――」

「『でも』もへちまもなしだ、碗力。いいか、友だちを作りたいならまず自分が変わる必要があるんだよ。親しき仲にも礼儀あり。自分が言われて嫌なことは相手にも言っちゃダメなんだよ」

「…………そっスね。富国君の言う通りっス」


 碗力がコクリと頷き、思いつめた顔をする。

 いままで誰にも愛されてこなかった碗力は、ちゃんとした人間関係の築きかたを知らないのだろう。


「そう、そうなんだよ。碗力の言いたいことは俺も分かってるぜ。確かに阿津鬼はDQNだ。見た目も中身も生粋のDQN。おまけに売れ残った童貞だ。お世辞にも生きていていい人間とは言えない」

「…………テメェ」


 お近づきにはなりたくないから、そこで拒絶するのは簡単だ。でも、それでは前へと進めない。

 相手のことを理解し、そして自分のことも理解してもらわないと、『友だち』になんてなれるわけがないんだ。


「オイコラ富国ぅ。誰がいつ自分テメメェの童貞売ってたんだぉ? ああん!?」

 俺はもの凄い形相でメンチを切ってくる阿津鬼を無視したまま、続ける。


「でもな、そんな売れ残った童貞DQNな阿津鬼でも、いいとこもあるんだぜ。全裸になった俺にジャージ貸してくれたり、代表戦の前に、対戦相手である碗力のこと教えてくれたりさ」


 風俗で童貞を捨てるにしても、相手()とのコミュニケーションは必須なはずだ。

 だからこそまずは友だちを作り、会話のやり方を学んでいくべきなんだ。

 俺は童貞だけど、そう思う。


「それに……それに、俺たちみんな童貞じゃないか! 同じ童貞同士、きっと仲良くなれるはずなんだよ。友だちになれるはずなんだよ! だから碗力、それに阿津鬼、お前たちふたりも友だちになってほしい。俺が……お前たちと戦いを通して友だちになれたようにさ!」

「……チッ、テメェがそー言うんじゃ仕方ねーなぁ」


 阿津鬼が舌打ちしながら、手で頭をボリボリかく。

 まだ短い付き合いだけど、闘った俺だからわかる。これは阿津鬼の照れ隠しなのだ。


「阿津鬼君……DQNなんて言って申し訳なかったっス。自分、いままで誰からも愛されたことなかったから、その……“友だち”の作りかたとか……わからないんス。そんな自分でよかったら……友だちになってほしいっス!」


 頭を下げる碗力に向かって、阿津鬼が右手をさし出す。


「オラ、“ダチんこ”になる握手だ。さっさと握りやがれ」

「――――っス!」


 そっぽを向いたままの阿津鬼の手を、碗力が強く握りしめる。

 その目には、うっすらと涙が滲んでいた。


「ところで富国よぉ、」


 碗力と握手し終わったあと、阿津鬼がもの凄い形相で俺を睨んできた。


「さっきは黙って聞いてたけどよぉ、テメェなにさりげなくオレにディスり入れてんだよ!」


 額に何本も血管を浮かび上がらせた、すげーメンチだった。


「まあまあ、そんな怖い顔すんなって。『いい意味で』、だよ。阿津鬼は『いい意味』でDQNだし、『いい意味』で童貞だ。もちろん、生きる価値がないって言ったのだって、いい意味でだぜ?」

「い、『生きる価値』って――テメェさっきはそこまで言ってなかっただろうがぁ!」

「あれ? そうだっけ?」

「ぶっ殺す!!」


 この後、“友だち”となった俺たち三人は談笑と拳を交えながらそれぞれ昼食を取り、昼休みを過ごしていったのだった。

次は12時更新です。


【BBA紹介コーナー】

・幽麒麟凜

彼氏いない歴:〇〇年

名前の由来:勇気凛凛

備考:主人公の担任。出逢い厨。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ