2章-34話 目指せ精霊ダンジョン①
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陽輪村アルカの宿屋にて。
昼食を終え、部屋でゆっくりと休みながら、アシュレイは机の上に広げた依頼書を眺めていた。
レアエネミーである夏影鳥を大量に狩り、
さらには、グリフォンの上位個体であるヴォルグリフォンの討伐まで行った。
今回の遠征で得られた素材はどれも貴重なものばかり!
討伐報酬と合わせて臨時収入が金貨三〇〇枚も手に入った。
皆んなで山分けしたとしても、かなりの大金になる。
さらに天使と戦う上で重要な、闇属性強化スキルを付与できる素材がこんなに大量に。
合成素材として使って、余った分は魔道具にしたっていい!
「……うん」
アシュレイはとても満足そうに頷いた!
今回の遠征は大成功だったと言っていい。
「よし!」
意気込みを込めて立ち上がりルク達を見渡すと、次の遠征について考える。
「次は何狩る?」
…………。
………………。
しかし、ここで何か忘れている様な?
そんな違和感が胸の奥に引っかかる……。
「あれ?」
僕達ってそもそもここに何しにきたんだっけ?
数秒考えた後、アシュレイはゆっくりと顔をしかめた。
「…………違う」
「ん?違うのか?」
狩りという言葉に反応したルクが立ち上がり、首を傾げた。
……狩りじゃないのなら言わないでほしい!
がっかりするじゃないか!全く。
そんなガッカリしたルクを置き去りにして、アシュレイは頭を抱えた。
「違う違う違う!!僕達は何をしに来たんだ!?」
「狩りデス?」
「違う!」
「レア素材集め?」
「違う!」
「焼き鳥ですよ!美味しかったですね」
「それはもう終わった!!」
一通りツッコミを終えたアシュレイは、机を叩いて再び全員を見渡した。
「精霊だよ!!」
「精霊と契約するために来たんだろうが!!」
「「「「…………おお〜〜」」」」
まるで今思い出したかのような反応。
ヴォルグリフォンがカッコ良すぎて、テイムで頭が支配されたルク達はすっかり忘れていた!
「そうだったデス」
「完全に忘れてたわね」
「……本当に忘れていました」
「ハッハッハ!」
「お前だけは笑うなルク!!」
こうして。
本来の目的を思い出した新魔団は、ようやく精霊ダンジョンへ向けて準備を開始するのであった。
場所は変わり
天陽連峰の頂上、剃り立つ岩山を登った先にある人類未踏破地域に存在する精霊のダンジョン。
その麓にて
「今度こそ寄り道なしだからね?」
「「「「はーい」」」」
アシュレイの問いかけにとても良い返事をするルク達。
準備を整えたルク達は馬車を預かり所へ預けると数日かけ天陽連峰まで徒歩で行き登山を開始しようとしていた。
「おおー!」
ルクが岩山を見上げる。
そこには巨大な岩壁が剃り立ち、見上げても終わりが見えない、そんな太陽へ続く山がルク達を歓迎しているかの如くどっしりと構えていた。
「……本当に、あれを登るんですよね?」
イグニスも遥か上まで続く岩壁を見上げ、乾いた笑みを浮かべた。
「なんだか……今さらですけど、ものすごく不安になってきました……」
隣ではサフィアも同じように山頂を見上げ、珍しく弱気な表情を浮かべている。
そんな二人とは対照的に――
「精霊のダンジョンは頂上付近にあるのだろう?ならば行くしかあるまい!」
ルクだけは、これから散歩にでも行くかのような表情で歩き始めていた。
意気揚々と進む新魔団一行。
ぴょんぴょんと険しい岩山を素早い身のこなしで突き進む新魔団!
例え岩山だろうと山は山!冒険者大好きな新魔団にとってこの程度は慣れっこなのである!
……しかし、それに比べて明らかに苦戦している者達が数名。
肩で息をしながら大量の汗を掻きゆっくりと進んでいくアシュレイ達がそこにはいた。
開始1日目で既にアシュレイ達は限界を迎えていた。
「まっ、まって、速い、進むの速いって…………。」
「ちょっと〜遅いんですけど〜〜??」
「はやく登るデーーース!!」
「は、はひゅっ、ヒュー、ヒュー」
「な、何故こんな岩山を……あんな……スピードで……はー……はー。」
サフィアはすでに限界。
イグニスもヘトヘトだった……。
「体力ないな〜お主ら…………。しょうがない、先に行って魔物の間引きと、テント張れそうな場所があったら作っといてやろう!」
ほぼ崖に近いような岩山である…………それに慣れているルク達が異常なのだ、サフィアはよく頑張っている。
そうしてルク達先導で進む事4日目。
標高の半分くらいまでの高さまで登って来たかなという所でレンカが異変に気づく。
「凄い数の気配が空を飛んでるデス」
「ふむ…………」【アクティブスキル:遠目】
………………………………。
………………えぇ??
「……サキとリリも見てみろ」
「「??」」【遠目】
その瞬間全員が岩陰へ飛び込んでいた。
ルク達が見た上空には二十匹近いグリフォン飛び回っていたのだ。
「流石に多くない?」
「ちょっと無理かもデス」
さらにその反対方向も見渡すと今度は十匹以上のワイバーンが旋回している。
「「「「………………えぇ?」」」」
流石のルク達も絶句であった。
「「「……………………」」」
ルク達が少し山を下りどうしようかとアシュレイ達の判断を仰ぐ為、テントの中にいると死屍累々の3人がテントで休んでいた……。
「おい!アシュレイ!起きろ何既に死んだ目をしておる」
「……あ、ああルクか……何かあった??」
「何かじゃ無いわよ!グリフォンとワイバーンの群れがいっぱいいるのよ!?流石にあれは無理よ??」ゲシゲシ
「あ〜、ああ大丈夫…………それに関しては」
「どうするんです??」ツンツン
疲れ果てているアシュレイを蹴り込むサキと木の枝で突くリリ。
「…………痛いんだけどまぁそれ用の魔道具を準備しててね」
ゴロゴロと寝転びながら、マジックバックを漁り一つの魔道具を取り出す。
「ワイバーンもグリフォンも仲間意識が強いから、変形の魔道具で幻影を見せて僕たちを仲間と認識させるんだよ」
「良いのあるじゃ無い!早く貸して!ちょっと試しに行ってくるわ」
「…………それがね、魔力を凄く消費しちゃう魔道具でね、出来たらグリフォンとワイバーンがいる場所を1日以内で駆け抜けたかったんだけど」
「…………思った以上に登山が辛い、完全に舐めてたよ」
「そのワイバーン共のテリトリーはどのくらいの距離があるのだ?」
弱りきったアシュレイが絶望の真実を告げる。
「………………このままのペースじゃ丸2日かかる位かな?」
「ダメダメじゃないデスカ」
「「…………………………」」
サフィアはテントの床に倒れたまま、遠い目をしながら情けない声をあげた。
「まさか……高いところがこんなに辛いとは……。息をするのが苦しいです。」
イグニスも珍しく弱音を吐いていた。
「魔物なんかより山の方が、今の私には恐ろしい……。」
「一つお願いがあるんだけど良いかな?」
2人の絶望した顔を見てアシュレイがルク達に手を合わせる。
「ん?なんだ?」
「とりあえず、数日はここで休みにしない?食料は多めにマジックバックの中に持ってきてるし。様子を見てダメそうなら一旦引き換えそう」
アシュレイ達の状況を見て、流石にルクも嫌だとは言えなかった。
魔物が相手ならば
「問題ない!進んでから考えればいいだろう!」
……と言うところなのだが。
今回、目の前にいる三人は、魔物との戦闘ダウンしている訳ではなく……。
ただ山を登っただけで、完全に力尽きているのだ!
魔物がいるから前に進めないではなく、体力の限界で前に進めないなのだ。
流石にこれでは様子見をするしかないのである。
「……仕方ないな。今日は休むとしよう」
「ありがとう……本当にありがとう……」
アシュレイは心の底から安堵した。
……よかった、また無茶を言われるのかと
しかし
「ところで……休んでいる間、我らはどうすればいい?」
「……ほえ?」
一緒に休むつもりだったアシュレイが変な声を上げる。
「暇だな」
「暇……?」
アシュレイは絶句した、ここは剃り立つ岩山の中腹あたりである。……そこで暇とは??
「はぐれグリフォンでも探して狩りするデス!」
「遠距離からなら、バレずに群れを引き離せないでしょうか?」
「岩なだれ気にしなくていいなら、爆発魔法ぶっ放すんだけどね?」
元気いっぱいに不穏な話し始める新魔団をみて、アシュレイはゆっくりと天井を見上げた。
「あの……、下に降りて森の果物でもとってきてもらえますか?……後でお礼にプリン作ってあげるから」
「「「「プリン!」」」」
元気いっぱいに岩山をぴょーーーんと下っていく新魔団を見て、アシュレイは遠い目をするのだった。




