2章-25話 海から離れた地にて
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時は少し遡り。
ソルテジオ・アシュレイサイド
アシュレイ達一向は防衛都市スケンティアでの戦いの後、1年間近くに渡りスケンティアに止まりゼクトに頼み込み稽古をつけてもらっていた。
最初の数ヶ月はその殆どが体力づくりだけで終わった……というよりそれだけでアシュレイの体が悲鳴をあげたのである。
その内容とはゼクト直属の騎士団に放り込まれると
「実戦で生き残る方法を教えてやる」
と言う名の内容はほぼしごきであった!当時まだ、12歳のアシュレイ達が現役の正規軍と同じ内容の遠征訓練をこなしたのである。
因みに最も過酷だった内容は鎧を着込んでの山での走り込み、丸1週間食糧を持たず魔物もでる山での山籠り生活だった。
………………なんか何処かで聞いた気がするなと思ってはいけない……
決して…………。
現代っ子のアシュレイは何度も泣いた!
イグニスも泣いた!サフィアに至っては3日目でギブアップした。
「あれは本当に地獄だった……」と今のアシュレイですらもうやりたくないと思えるほどの内容なのだった。
そして冬が訪れると、今度は訓練場にて戦闘形式の訓練が行われた。
「もう無理です……」
「私もですわ……」
永遠とも思える模擬戦の連続に訓練場の隅でサフィアとレンカが地面に倒れ込む。
一方その頃アシュレイはというと
「まだだ!!」
ガギィィン!とアシュレイの剣が弾き飛ばされる。
「甘い」
相手は木剣を片手で持ったまま微動だにしていない。
その名もオルグレン・ガルド
防衛都市スケンティア騎士団副団長でありオルグレン・ゼクトの息子である。
呪面族掃討作戦の時は王立学園に臨時講師として招かれており不在だったのだが、冬になり帰ってきていたのである。
そのガルド相手に何回も戦いを挑み続けていた。
「くっ……!」
アシュレイは転がりながら立ち上がる。
「まだまだぁぁ!もう一度お願いします!」
「良いだろう!いくらでもこい!」
だが三十秒後には。再び地面に転がっていた。
「な、なんでだ……」
息を切らしながら空を見る。
確かに強くもなっている実感はある……。
だが、まるで届く気がしない。
「不思議そうな顔だな」
ガルドが木剣を肩に担ぐ。
「はい……」
「あと少しで勝てる気がするんです……でもいつもあと一歩が届かない」
するとガルドは少しだけ笑った。
「ハハハッ!当然だ、私は君が見えている場所でしか戦っていないからな」
「え?」
「君はまだまだスキルに頼りすぎている、確かにスキルは強い」
ガルドは木剣を下しアシュレイに真剣な眼差しを向ける。
「……でもねスキルを発動すると言う事は何をするのかを相手に知られてしまうリスクもあるんだ、私は君に対して攻撃スキルを使っていない事に気づいていたかい?」
「…………あっ」
「だから届きそうだと思ってしまった、君の攻撃は全て防がれているのに私の攻撃が強く感じないから……違うかい?」
「そうだと…………思います。」
「大事なことはまず相手を知ることだ、君は戦う時周りをよく見ているかい?」
例えばとアシュレイに目配せをし
「……君がこんなにボロボロになるまで訓練して止めたくても止められず必死に堪えている仲間の視線に気がついていたかい?」
アシュレイには意味がわからなかった、今は一対一の戦いのはず。
周りに目を向ける余裕なんて……。
するとガルドは訓練場の周囲を指差した。
「敵は私だけか?」
「え?」
「戦場で前だけ見ていたら死ぬぞ」
その言葉にアシュレイは固まった。
呪面族との戦いは過酷なものだった。
幻術に火攻め、あの時も自分は目の前ばかり見ていたのだ。
「周囲を味方を敵を地形をそして空気を見ろ!それが仲間を命を預かると言う事だ!」
その言葉にアシュレイの中で何かが変わった気がした……。
「いい事を教えてやろう……私は父上ほど強くはないしセイルソルト殿ほど才能もない……
獣人騎士団には私より強い者ばかりだ」
アシュレイは思わず首を傾げる
…………十分強いと思うのだが。
「それでも副団長を任されているそれは、なぜだと思う?」
「強いから……?」
「違うな」
ガルドは首を振った。
「最後まで逃げないからだ、決して仲間を見捨てないからだ!そして、仲間を信頼しているからだ」
静かな言葉……その一言には重みがあった。
「強い騎士は沢山いる、だが皆が逃げたくなる時に前へ出る人間は少ない、だから私がいる!欲が出て冷静になれない者も多い」
アシュレイは黙って聞いていた
そして静かに、力強くうなづくのであった。
そんな訓練が続いていく中、ある日事件は起きた。
街道付近で盗賊団の目撃情報が入り、ガルド率いる討伐隊が出動したのである
ガルドの計らいでアシュレイ達も同行していた。
「発見!」
騎士が叫ぶと森の中から盗賊達が飛び出す。
「捕らえろ!」
流石は訓練された正規軍、ガルドの号令が飛び交うと戦闘はすぐに終わった…………かに思えた。
「ぐああっ!」
しかし、森の奥へと逃げた盗賊を追おうとした若い騎士が足元の罠に掛かったのである
「隊長!」
盗賊達はその隙に逃走する。
「追います!」
アシュレイが駆け出そうとした瞬間。
「待てアシュレイ君!」
「ですが!」
「追うな!」
「しかし逃げます!」
だがガルドは迷わなかった。
「追うな!!!!…………今日はここまででも十分な成果だ」
そして負傷した騎士を担ぎ上げる。
「盗賊はまた捕まえられる、あいつらは今日でかなりの人数もねぐらも失った……。冷静になれ!アシュレイ!ここに罠があったんだぞ」
「本当に罠はこれだけか!?
見極めろ、相手の狙いを!君は誰にも負けないパーティーのリーダーになると言った!
もしこのまま突っ込んで罠にかかったらその仲間が死ぬんだぞ!」
その言葉でアシュレイは足を止めた、いや止めざるおえなかった。
ああ、この人は。
本当に騎士なんだ
…………そう思うと同時に敵わないなと実感したのであった。
そして一年の時が過ぎた。
防衛都市スケンティア訓練場には朝から異様な熱気に包まれていた。
城壁警備の騎士達まで見物に訪れ、訓練場の周囲には数百人もの人だかりができている。
「本当にやるのか?」
「相手は若様だぞ?」
「いや、今のアシュレイなら分からんぞ」
そんな声が飛び交う中、中央では二人の騎士が向かい合っていた。
オルグレン・ガルド、防衛都市スケンティア騎士団副団長。
その向かいにはソルテジオ・アシュレイが強い眼差しでガルドを見つめていた。
一年前、ガルド相手に手加減されても尚、簡単に地面を転がされていたアシュレイ。
その二人の戦い、見守る者達の中にはゼクトの姿もあった。
巨大な腕を組みながらニヤリと笑う。
「ガハハッ!楽しませろよ小僧!」
アシュレイは木剣を構える。
掌には汗が滲み心臓はうるさいほど鳴っている。
一年前初めてガルドさんと戦った日は三十秒も持たなかった。
何度挑んでも勝てなかった、ガルドに言われた事が図星で、ついカッとなってしまった事もあった
……それでも
ガムシャラに何百回も何千回も剣を振り続けた訓練の日々を思い出し足に力を込める
「始め!!」
ゼクトの号令と同時!
ドンッ!!っと地面を砕く勢いでアシュレイが飛び出した。
一年前とは比べ物にならない速さで体の動かし、視線の動き、相手の思考を読み常に一歩先を読む戦い方を恩師であるガルド相手にぶつける
観客席からどよめきが起こる。
「速っ!?」
「ガルド様に真正面から!?」
木剣が振り下ろされる!だが。
ガルドは冷静に受け流す。
ガギィィィン!!
と木剣とは思えない重い音が響いた。
「まだまだぁぁぁ!」
だがアシュレイは止まらない。
攻撃スキルを使わず身体強化スキルのみで初級攻撃スキルを再現する、それがアシュレイが行き着いた境地だった!
「ウオオオー!!」
アシュレイによる止まらない嵐のような連撃がガルドに襲いかかる!
騎士達が目を見開く。
「なんだあの手数……」
「一年前とは別人だぞ」
しかし、ガルドは崩れない!
よく観察しアシュレイの狙いを見極め最小限の動きで全てを捌く。
「良いな」
ガルドが笑う。
「だがまだ見える」
次の瞬間!
ドォン!!とアシュレイが吹き飛んだ。
「ぐっ!?」
転がりながら体勢を立て直す。
だが顔は笑っていた……見えた、今の一撃が見えたのだ!
一年前なら何をされたかも分からなかった。
それだけで意味が違ってくる
「まだ行きます!」
「来い!」
再び激突。
アシュレイはひたすら攻め続ける!強くなった自分を見て欲しい、
ガルドに勝ちたい!もう負けたくない
……色々な思いを胸に背良いながら。
十分二十分と戦いは続いていく
攻撃が当たらない、汗で視界が滲み腕が悲鳴を上げる。
足も上がらなくなってきた
……それでも。
アシュレイは倒れなかった!その姿を見ながらガルドは思う。
…………強くなったな本当に。
最初はただ真っ直ぐ突っ込むだけ、強力なスキルに振り回され周りをよくみることもせずに焦って、迷って、自信も無かった。
だが今は違う、視野が広く判断も速くなった。
仲間を信じる強さもある……立派な騎士になった。
だからこそ最後は全力で終わらせなければならない
「行くぞアシュレイ」
猛攻を続けるアシュレイから距離を取り、上段の構えをとるガルド。
すると、騎士達の空気が変わった。
「来るぞ……!」
誰かが呟くと観客席が静まり返る。
ガルドが本気になったとアシュレイも理解し笑う。
「やっとですか」
「よくここまで来た」
ガルドが珍しく低い声で言う。
「だから敬意を払おう…………オルグレンガルド参る!」
次の瞬間、爆発的な踏み込みで姿勢を低く地面をかける
アシュレイの視界からガルドが消えた!
「っ!?そこか!!」
何とか反射だけで防御する
ガギィィィィン!!
凄まじい衝撃が伝わり腕が痺れ歯を食いしばる……
さらに二撃、三撃そして四撃!全ての攻撃が重く速い
「負けるかぁぁ!!うおおおおおおおっ!!」
最後の力を振り絞りここまで温存しておいた上級スキルに全てを賭け必死に距離を取る!
相手が速さ重視で来るならばそれを上回る速さで挑む
【アクティブスキル:ソニックブレード!】
風を剣に纏わせた音速を超えた速さで剣を振るう!
それに対して速さ中心の攻めを見せたガルドは、ニヤリと笑い足を止める
【アクティブスキル:城壁返し】
それは攻撃を受け流しながら弾くパリィとは違い、相手の攻撃を真っ向から受け止め強引に弾き返す力の守り
………………パキン。
乾いた音がし木剣が宙を舞った。
相手の焦りを誘い、敢えて攻撃を受けてからのカウンター。
完全にガルドの読み勝ちだったのだ。
アシュレイの手から剣が離れる
……勝負がつく。
ゼクトの大きな声が響き渡るとここにいたすべての人が健闘を讃えた
「勝者、オルグレン・ガルド」
「おおおおおおお!!」
「凄かったぞアシュレイ!!」
「あと少しだったじゃねぇか!!」
息を切らしながら膝をつくアシュレイ。
悔しい、結局負けた
…………でも不思議と嫌な気分じゃなかった
「強くなったなアシュレイ」
ガルドの言葉にアシュレイはニヤリと笑う。
もう、なぜ負けたのかすら分からなかったあの頃の、弱い自分ではないのだ。
「また負けましたよガルドさん」
「ああ、だから次は勝て、お前ならそれが出来る」
そして肩に手を置くき、爽やかに笑いかけた。
決して諦めない心をもつ少年にあらゆる技術を教えたのだ、絶対強くなる
そうガルドは確信していた。
その言葉に、アシュレイは力強く頷く
「はい!」
「ガッハッハッハ!!良い顔になったではないか小僧!!」
騎士とは何か、守るとは何かそして!強さとは何か。
防衛都市スケンティアでの修行は確実にアシュレイを次のステージへと押し上げたのだった。
寝坊してしまいました。。




