1章-6話 ルクのチヤホヤ大作戦!?
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森に囲まれた小さな辺境の開拓村。
この村では貧しいながらも良い土、良い水があるお陰で贅沢をしなければ食料に困ることはなく。
屈強な男達が近くの街から派遣されていたおかげで、少しずつではあるが、年々人も増え、村も大きくなっていった。
あのマンティコアが、近くの森に住み着くまでは……。マンティコアは、ここからさらに森の奥にいつのまにか生まれていた。
だが天使が数体突然やっくると、強引にマンティコアにスキルを教え、手を差し出す。
知能があるマンティコアは勝てないと知り逃げた。あれはダメだ、決して逆らってはいけない何かだと本能が告げている。
……そして、逃げたその先が開拓村だったのだ。
マンティコアは村を襲い人間の味を覚えると、村へ残酷な選択を突きつけた。
「毎月の作物を残らず差し出せ。それが叶わぬなら、大人なら一人、子供なら二人を生贄に出せ」と。
村人が抗い、街から派遣された冒険者たちが刃を向けたこともあった。しかし、凶悪な広範囲攻撃スキルを振るう獣の前に、彼らは一人残らず全滅してしまう。
以来、村から活気は絶えた。残されたのは、逃げる宛てもない老親や傷病者、そして希望を奪われた僅かな子供たちだけ。
恵まれた土壌は放置され、ただ死を待つためだけの最低限の畑が、静かなる衰退を物語っていた。
そして時は流れ……。
今!!
この村では大宴会が行われていた。
突如として出来上がった巨大キャンプファイヤーが暗闇を明るく照らしだし、香ばしく焼き上げられた肉串に丸々と実ったリンゴが山のように積み上げられている!
最初は警戒していた村人達だったが。生贄として差し出したはずの少女が、笑いながら肉を両手に持って頬張っている姿を見て、次々と他人であるはずの陽気な少年と共に肉を頬張る。
「ハーハッハッハ、そうだ食え食え。 肉を食え! ハーハッハッハ」
「ほれそこのじぃ!顎が弱いならこっちの肉の方が食いやすいぞ!」
「そこのオババ!なんだ?肉が飽きたのか?リンゴはどうだ?リンゴがあるぞ?ハッハッハ!」
突如として開かれた謎の宴会は、夜遅くまで続いたのだった。
翌朝。
ルクは澄み渡る朝空を見上げ、深く、重くため息をついた。
(……なんか、違う!!)
そう、この村にはお年寄りと痩せこけた子供と大怪我をしてうまく歩くことができない大人が数人しかいなかったのだ。
「もっとこう……チヤホヤされるはずだったのだぞ。ボインなお姉さん方に囲まれる予定だったのだ我は! なんだこの寂れた村は……ニンゲンはヨクワカラナイ……」
期待していた展開と違い、唖然と藁で造られたベットを眺めている時だった。
「あ、あのう、起きてますか?」
ルクが泊まっていた空き家の扉を、控えめなノックと共に少女が声を上げる。
「ウム、空いてるぞ」
「お邪魔します。その、昨日はたくさんのお肉に美味しい果物ありがとうございました」
「ハッハッハ、空き家を勝手に使ってるのは我だ、お邪魔しますだの遠慮はいらん。それよりも娘、お主親はいないのか?」
「両親は、えっと……いません。お姉ちゃんが、その……一人」
悲しい目をして少女は俯いた。
「………………。」
(やっべぇぇ……! 完全に踏んではならん地雷を踏んだか!? あれほど部下の吸血鬼に『発言する前によく考えてください』と小言を言われていたというのに……! バレたらまた怒られる!)
ルクは冷や汗を流しながら、必死に会話の軌道修正を試みた。
「そ、そうか! では、その姉は元気なのか? 昨日は腹が減っておらんかったのか? そうだ、リンゴを持って行ってやるといい!」
「お姉ちゃんは……病気なんです。全身に黒いあざが広がっていて、もう食欲もなくて……あと何日持つか……」
(最強地雷踏み抜いたーーー!!!)
……どうする我、なにか挽回の手を………………。
(……ん? 今なんといった?)
ルクには、その病気……というか、魔族などの魔力が高い者がよくかかる症状に心当たりがあった。。
「黒いアザ? お主の姉は魔術師か?」
「えっと、魔力は高いって言われたみたいですけど、その……この村以外で知り合いもいなくて、よく分からず……」
「…………。ふむ! 我に任せろ」
名誉挽回できそうな気配を感じ、ルクは大きく胸を張るのだった。
二人はそのまま少女達が住む小さなボロ屋に行くと、黒髪燈目の少女が草のベットに横たわっていた。
「はぁはぁ、リリ?うっ、ゴホッ」
「サキ姉!」
少女は姉の元へ走り、その手を握る。
(そう言えば名前まだ聞いてなかったな? ハッハッハ、……まぁ今はいいか)
「サキと言うのか? 我は天才魔法使いだ。お主の体を治しに来た。少し診せてくれるか?」
「魔法使い? ふふ……もういいのよ。自分の体のことだもの。私が一番分かってる……」
「サキ姉、大丈夫だよ! この人、小さくて頼りなさそうだけど、あのマンティコアを一人で倒してくれたんだから!」
(小さくて頼りなさそう……小さくて……頼り……)
ルクの心に、小さいという最強の攻撃が容赦なく突き刺った。
「グフゥゥゥゥ(涙)」
(お、おのれ〜。気にしていたことをよくも!)
「リ、リリと言ったか? お、お主には後でじっくりと話をする必要があるな。クッ、プルプル」
「ねぇリリ……やっぱりこの人、ちょっと怪しくない……?」
「だ、大丈夫! きっと大丈夫だから……! お願いサキ姉、私を一人にしないで……!」
「まぁ良い、いや良くないな。ウム良くない。だが、とりあえず病状を診てやるからその服を抜げ!」
「「少女達の冷たい眼差し」」
(……あれ? なんでこんなゴミグスを見るような目で我を見ているのだ?)
例え他意などなく、子供同士だからといえセクハラはセクハラなのである。
「ほれ! わ、我。治せる……ぞ?」
「はぁぁ。リリ。お願い……手伝って?」
「サ、サキ姉? ちょっとなんか不安になってきたんだけど……良いの?」
「ええ。どうせもう少しの命だし、最後にリリを信じるわ……。唯一の家族だもん」
(……我は信じないのか?)
直すのは我なんだが、とは流石のルクでも言えなかった。
少女の服がはだけ、最もアザが酷い心臓の部分を晒す。
黒いあざは、特に魔力が集中している場所ほど濃く体を蝕んでいくのだ。
「ふむ、やはり暴魔病だな」
「暴魔病……?」
「魔力が膨大な子供が、あまり魔法を使わないか、使っても少量の魔力しか使わずにいると、極々稀にかかる病気だ。任せろ、治るぞ」
「……本当に?」
「本当だとも、とっとと直してやるぞ!」
ルクが少女の病気を治し、その後英雄扱いを受ける自分を想像しながら、その白い肌へ手を伸ばしかけた瞬間──!
「「少女達の極寒の眼差し」」
猛烈な殺気を感じ、反射的にバックステップを踏んだ。
【バックステップ!】
スキルまで使用する、見事な逃亡だった。
「なっ……!? ああ、そうかなるほどな。勘違いするな、我が惹かれるのは豊満で成熟した大人の女性の胸だ! 干からびかけた少女の胸など興味の対象外だぞ。ハッハッハ!」
「フッ、フフフ。ねぇ、アナタ? 治してくれるんでしょう。お願いするわ? えぇ、もちろんお礼に何でもしてあげる。ウフフフフフ」
(やばいオーラが見える、我は一体なにを間違えた? 病気を治してあげるのに)
思っていた反応と違い、ショボンと肩を落とすルクであった。
「ま、まぁ良い。とりあえず治すぞ!」
「ふぅ、そうね。お願いします」
【スキル暴食発動:体の中で腐敗した魔力を吸収、代わりに我の魔力を注入……身体に馴染むまで循環】
サキとルクの魔力回廊が、暴食のスキルによって繋がり魔力が循環していく。
すると青黒く病んでいたあざが、波が渦巻くように消えていくのが確認できる。最後に心臓の上のあざが失われた瞬間、サキの瞳に生命の光が力強く灯り直した。
「これで完治だな」
「サキ姉、サキ姉〜!! うわ゙あ゙あ゙あ゙ん゙」
「治った…………の? 本当に……リリ! グスッ、ウッヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥ」
(ほぉ……)
抱き合って涙ぐむ二人を見ながら、ルクはサキの魔力を解析していた。
「水と氷、炎に爆発、風に土もあるか! 人族にしては使える属性が多い! これはこれは、フムフム」
(爆発属性とか激レアでは無いか……。なんとか交渉して覚えさせて貰おう!!)
「ふむ、見事なものだな。さて、サキにリリと言ったか──」
威厳を見せつつ、爆発魔法を伝授してもらう為交渉に入ろうとしたルクの腹から、豪快な音が響き渡った。
(フツ……。どうやら頭を使いすぎたらしい。今大事なのは……)
「飯だ! 飯を食おう!! 出てこいリンゴ!」
「「ふふっ」」
そのルクの一言に姉妹は顔を見合わせ、久しぶりにその家の中は暖かい空気で包まれたのであった。
ルク身長120㎝(8歳)
リリ身長124㎝(8歳)
サキ身長132㎝(10歳)
アシュレイ身長131㎝(8歳)
頑張れルクくん




