2章-68話 王都学園ダンジョンへ ②
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学園管理レベル1ダンジョン
全二階層からなるその場所は、視界を遮るもののない見晴らしの良いフィールド型ダンジョンとなっていた。
出現する魔物もウルフ系とツノ兎のみと、難易度としては最下級の部類に入る。
広さは端から端まで約20キロ。最下層へのボス部屋へと続く扉は、この広大なフィールドのどこかに隠されている。
因みにAクラスとBクラスは地図を教師から渡されていたのだのだが……。
勿論Cクラスにそんな物は無しである!
「よし、冒険の時間だ!!」
ルクが気合いとともに探知魔法【サーチ】を発動する。
「あっちだな!」
感知した魔物の気配に向け、勢いよく駆け出そうとして……。
ガシっ!とトウガイに止められた……。
「何をする!??」
「まぁまて、お前達もあのアホ教師のやり方を見てただろ?頭に来てたはずだ……」
「そりゃそうよ!でも今はダンジョンよ??」
「……気持ちは分かる。だがな、ここで俺たちの力だけでダンジョンをクリアしたところで、こいつらが力をつけない限り、あの連中はまた別の嫌がらせをしてくるぞ」
トウガイの言葉に、新魔団は円陣を組み顔を見合わせた。
難しい話は、勝手にやっていてほしいのだが……。
「だから提案だ。ここはCクラスの生徒十人を主力にすえる。俺たちは補助に回りながら、戦い方を叩き込む」
トウガイは、不安そうに身を寄せるCクラスの生徒たちへと視線を向けた。
「それが、結果としてこいつらのためになる。……お前らも、それでいいな?」
Cクラスの選抜メンバー10名は顔を見合わせ考え込む。
確かに、これまでの学園生活は有意義な物とは言えなかった。
勿論。親身になって教えてくれる教師もいるが、貴族主義の教師達は『適当に教科書でも読んでおけ』と言い捨て、まともに授業すら行わないことすらザラだったのだ。
それではいつまで経っても魔法使いになる夢は叶えられないのである。
「……そうですね。確かに……」
「うん、ここで頑張って少しでもレベルアップしておきたい!」
子供達のやる気にニヤリとトウガイが笑う。
面倒見がいいのだ!トウガイは。
「よしっ、なら決定だ!俺は魔法はあまり詳しく無いが、ここには魔法の腕『だけ』はすごい奴らがいるからな、しっかり学べ」
「…………ねえ、今私たちのことすこーしだけバカにしなかった?」
何か引っかかりを覚え、ルク達がトウガイを睨むも……。
『よろしくお願いします!先生!!!!』
——————!!
『せ……先生!!』
『先生!』……だと!?
……なんという甘美な響きだろうか。そう呼ばれてしまっては、持てる技術のすべてを惜しみなく叩き込むしかない!
トウガイへの不満など一瞬で記憶の彼方へ吹き飛び、ここに「新魔団教師陣」による過酷な魔法講義の幕が切って落とされたのであった。
方針が決まれば、話は早かった!
ルク達は、魔法に関しては本当にエキスパートなのである!
生徒一人ひとりの魔法適性を見極め、次々と魔法を伝授していく。
「中級魔法はまだ早い」? 何を言っている、強い魔法を覚えるのに早いなんてことはないのである!
覚えておくだけなら問題ない、さぁどんどん覚えろ!
ついでに上級魔法も覚えておくといいぞ!
なんだって?
伝説??……なにが?
……上級魔法が?
よくわからん事言ってないでとりあえず覚えるところからだハッハッハ!
国が厳重に管理しているはずの上級魔法すらあっさりと伝授され、数時間ののちには、国家宮廷魔法使いたちが目撃すれば泡を吹いて倒れそうな異色の魔法部隊が爆誕していた。
(後にこの件で魔法省の幹部たちが揃って頭を抱えることになるのだが、それはまた別の物語である)
もっとも、魔法制御が甘すぎてまだまだ初級魔法しか使えないのだが……。
しかしそれは裏を返せば、魔力コントロールさえ磨けば、そこらの一人前の魔法使いなど足元にも及ばない事を意味していた。
「…………もしかして俺、取り返しのつかないことをしたんじゃないか?」
一人頭を抱え、誰にも打ち明けられない後悔を、トウガイは今後生涯背負い続ける羽目になるのだった。
新魔団教師陣による地獄の特訓が始まって、一週間が経とうとしていた。
月末まであと五日。そろそろ本格的に階層攻略へ乗り出すべく、ルクたちは成長した生徒たちの姿を見つめる。
「そろそろいいだろう!まだ教えてないこともあるが来月の後半にあるリバーシ大会予選までは我らも時間を取れるしな!まずはこのダンジョンを攻略する事からだ!」
『ハイ!先生!!』
タウ達は自身に満ち溢れていた!
ルクたちが施した地獄の魔力制御訓練を乗り越えた今、彼らは全員が初級魔法を無詠唱に近い速度で連射できるようになっている!
しかも、一部の筋が良い者はすでに中級魔法の領域に足を踏み入れていた。元より素質を秘めた子供たちなのだ。伸び代は無限大なのである。
もう誰も、自分達を落ちこぼれだとは思ってなどいない。
暗闇の草原で寒さに震えて眠り、ウルフの遠吠えに怯えながら必死で武器を振るったあの日々は決して無駄ではなかった。
あの地獄のような野宿と魔力錬成に比べれば、今の彼らに恐れるものなど何一つ存在しないのだ!!
「さあ、行こう!冒険の始まりだ!」
「はいっ!」
自信に満ちた笑顔でダンジョンへ駆け出していく子供達の後ろ姿を見送りながら、トウガイがぽつりと呟く。
「……これ、このまま行くと俺より強くならないか?」
そんなトウガイの呟きは、元気な子供達の声にかき消されてしまうのだった。
そこからのタウ達は本当に凄かった!
ルクやレンカが敵の気配を察知するやいなや、完璧なチームワークで一瞬にして包囲網を形成し、確実に仕留めていく。
過酷な訓練をともに生き抜いた絆は固い!!
相手がただのウルフではなく、ステータスの上位種であるハイウルフであろうと、その勢いが衰えることはなかった。
初級魔法しか使えないとはいえ、魔力制御が段違いに向上したことで威力と連射速度は以前とは別物、ウルフなど敵では無いのだ!
「ハーハッハッハ!いいぞ初心者にしては中々良くなったでは無いか!」
「そうね!まだ魔法を曲げるのは無理っぽいけどそのくらい出来ればウルフには負けないわね!」
新魔団の評価も上々、完全にノリに乗っている学生達である!
一週間前に潜った時より、敵が強くなってるとは誰も感じなくなってるくらいにはノリに乗っていた!
「二階層に繋がる出口を見つけたデス!その場所にウルフの集団が待ち構えてるデス!」
「こちらにおびき寄せます!」
【アクティブスキル:挑発!】
リリとレンカによる見事な誘導により、魔物の群れが一列になって突撃してくる。
「よし!皆のもの魔法発射よぉぉーい」
…………
「発射ー!」
「「『発射!!!』」」
【ウィンドカッター】
【ファイアーボール】
【アイスショット】
色とりどりの初級魔法が極限まで高められた連射速度で弾幕となり、魔物の群れを呑み込んでいく。
「「「ギャフン!!」」」
「ウルフの群れの全滅を確認!戦闘終了です」
「よしっ!」
「僕たち強くなってる!」
「いける!これならボスだっていけるよ」
ウルフの死体を眺めながら、トウガイが一人ため息をついた。
「……強くなったな」
……フッ、と自嘲気味な笑みが漏れる。
もう、俺が教えることなんて何もないな。
ほんの一週間前。
魔物の姿を見ただけで泣き喚いていた子供たちが、今では笑顔で連携を組み的確に魔法を叩き込んでいる。
冒険者ランクで言えば、すでにDランクを優に超えているだろう。
ここまで彼らを成長させたのは、間違いなくルクたちの常識外れな指導のおかげだ。
……ん? 待てよ?
この子たちに魔法理論を教えたのは?
——ルクたちだ。
じゃあ、地獄の特訓で鍛え上げたのは?
——ルクたちだな?
あれ……?
——俺は?
「…………ついて来た意味、まったく無かったな」
トウガイは小さく呟くと、ウルフの解体を手伝いながら葉巻を吹かすのであった。
——ウルフダンジョンレベル1——
隠し要素。
ダンジョンに入ってから5日間ダンジョンの外に出ない
『達成』
第一層フロア内全てを探索する(隠しエリア含め)
『達成』
ウルフ系統の魔物を200体以上倒した状態でボスフロアに行く
『達成』
闇魔法を使用しウルフ系統の魔物を倒す
『達成』
全要素達成時ボスがジャイアントウルフからシャドーウルフに変更。
シャドーウルフの数はパーティーメンバー5人につき1体
[シャドーウルフステータス]
体力100魔力150力80守50速200技120
※対比ステータス
「トウガイ ステータス」
体力60魔力15力51守45速48(ケガにより現在18)技72
「ルク 14歳ステータス」
体力91魔力115力59守92速61技80運20




