最終第八幕 師走・聖夜の大決戦!
ありがとうございました。なんだかんだで最終話です。
『『『『うおおおおっらあああああああ!』』』』
『『『『づえええああああああああ!!!!』』』』
異空間に広がる閑静な雪原は、今や壮絶な死闘の繰り広げられる戦場と化す!
〈#▽皿▽〉<物語の結末はッ! 一気にガッチャでハイライトじゃないとォォォォ!
(読)Д(者)<いや北川くん君そんな無理して令和主役ライダー欲張りセットやらんでも……
俺の名前は、北川ナガレ!
『頑丈でしぶとい新人の役割と言ったらばッ!
こういう時に先陣切って諸先輩方がやり易いように道整えるこったろーがァ!』
最終決戦でテンション爆上がりな状態の、蟹座の死越者だ!
『――ォォォォオオオオォァァァァアアアアッ!』
後先考えず駆け抜けた先、真正面には殺る気満々の獣神教諭。
(クソっ、よりにもよって獣神教諭かよ!
あの方の斬撃は変異無しで喰らうと流石にヤベェッ!)
幸い訓練の甲斐あってヴェポライザー無し・詠唱破棄での死越葬態も会得しつつあるが、彼の巨体から繰り出される斬撃に対応できるかっつーとぶっちゃけ不安だ。
(ええい、ままよ!)
片腕の肘から先を蟹爪に変化させる程度なら一瞬でできる。
下手こきゃその片腕が切り飛ばされかねねーが、退くも避けるもあの方には通用すまい。
『……先ずはお前だ、仮面の男ーッ!』
(どんな一撃だろうとっ、当たんなけりゃどうってこたァねぇーッ!)
意を決し半ば自棄になって教諭へ殴りかかろうとした、その瞬間。
『どーもッ、獣神先生ェー!』
『何ッ!?』
ちらつく鬼火を起点に虚空から現れたのは、
"狗人刑吏サーラメーヤ"状態のアーネスト君。
どうやら教諭が俺に狙いを定めたのを察知し、
瞬間移動しつつ死角からの一撃を叩き込む腹積もりのようだ。
(しめたぜ! その隙さえありゃ蛇は生やせずとも甲殻の面積を広げ防御力を上げられる!)
果たして奴にその意図があったかは知らんが、有り難く活用させて頂こう。
『先代から話はッ、聞いとりまっせェー!』
『ぐううっ!?』
近頃新たに"攻撃を通じて標的のエネルギーを奪う"能力も獲得した"サーラメーヤ"の素早い一撃は、
獣神教諭の重装甲にも確かなダメージを叩き込んだらしい。
『貰ったァーッ!』
『ぐぉあっ!?』
とは言えそれでも変異は未完了で反撃も怖ぇ。
よってすれ違い様に蟹爪で殴り抜く程度が精々だ。
(イマイチ浅かったか!)
幾らかしょうがねぇにせよ俺は己の未熟さを悔いた。
だがアーネスト君と俺、立て続けに打撃を受けた教諭には確かな隙ができていて、
『――閃ッッ!』
『でらァ!』
立て続けに"精神刈り砕く死神社員"姿のお嬢が大鎌で斬り掛かる。
教諭側もすぐさま応戦したもんで互いに傷は浅かったが、
ともあれこっからお嬢対教諭の斬り合い勝負が始ま――
『お覚悟を、獣神教ゆ――『ちょっと失礼ッ!』
『くぅうっ!?』
――らねぇんだな、これがッ!
……突如お嬢目掛けて振り下ろされたのは怪しく光る日本刀。
その持ち主は……
『同じロン毛巨乳の死神キャラ同士、
仲良く殺し合おうじゃありませんかッ!』
空色の長髪を棚引かせる黒スーツの死神、志貴野ランセ女史だ!
『さあ! どうしましたお嬢さんっ!
私より判り易く死神めいた見た目をしておいて、
見掛け倒しの雑魚なんてことはないでしょうね!?』
(くっっ! この女、研究者なのにやたら強いっ!?)
『ぎゃわあああああっ!?』
ぶつかり合う死神たちの横を無数の節足で逃げていくのは、蠍座担当の斎川タテハ先輩。
『虫螻風情がァ……焼き払うてくれるわ……!』
『だあああああっ! ぎゃあああっ!
ヤバイっ! ヤバいっ! ヤバいって何あれ攻撃範囲広すぎだってばあああああ!』
単純な戦闘能力も決して低くはない斎川先輩を徹底して追い詰めていたのは、
航空機型"亡霊機体"のロッキー・サーティーン氏。
『妙な毒針で我が機関部を幾つも潰しおってェ……断じて許さんぞぉぉぉぉ……!』
上空からまさしく雨霰の如く降り注ぐ機銃弾や誘導弾は、生前の氏が『闘神軍閥』の最高戦力と呼ばれていた事実をありありと再認識させるぐれーには苛烈のそのもの。
固有能力でもって相手に合わせた調合が可能な斎川先輩の毒で負傷、かなりの弱体化を強いられているようだが……それでも空なんて飛ばれちゃ手の出しようがねぇワケで。
『加勢させて……それが私の、生きる意味……
あなたたちを殺すことが……
私の、価値なのっっ……!』
しかも途中から同じく空を飛べて遠距離攻撃が得意なアルケニー・オーキッド女史が合流。
『……滅びなさぁぁぁぁい!』
『っぎゃあああああああああああ!』
サーティーン氏の砲撃の粗を補って余りある大規模攻撃魔術で、
いよいよ斎川先輩もヤバいかと思われた、その時!
『万物はこれッ――えーい面倒だヨ!
レッツ、防壁ーッ!』
瞬時に割り込んだタクシャカ先輩が、
ご自身の"触れた無生物を支配下に置く"固有能力で作った分厚い氷の壁で
見てるだけで胃もたれしそうなレベルの弾幕を防ぎきって見せたんだ。
『フイ、間に合たよダネー!』
『流石ですタクシャカ先輩っ!
王様戦隊年末頃の百姓雄蜂さんぐらい推せる活躍ですよ有難うございます!』
『フン、其れ程でモアりマクりるヨー!
……けドタテハチャン、年末頃の王様戦隊引き合い出スナらせめテ超献身兄貴王陛下ト言テ欲しかータネ。
他の時期なラ兎も角、年末頃の百姓雄蜂殿テ言わレテも今一ピンと来なイーヨ?』
『じゃあ妹様も含めて百姓蜂兄妹でどうですか?』
『いヤ大しテ変ワラんヨー!?
確かニ兄妹揃テ名場面あタけド
年末頃のMVPは間違いなク超献身兄貴王陛下、
次いデ献身邪悪王坊辺リじゃネーのヨ!?
他五王も活躍しテタけド空ク迄メインは甲虫王族兄弟だタヨネェ!?
何故そコマでワレシのファインプレイを超献身兄貴王陛下に例エタくなイノ!?』
『やだなあ、不良技師王総長も爆弾解除で活躍してたじゃないですか。
まあなんていうか、彼って私のなかだと令和戦隊顔出しキャラ随一の推しなので――
『何をゴチャゴチャと喋繰っておるかぁぁぁぁぁ!』
『……危機感を、持ちなさいよぉぉぉっ!』
斎川先輩とタクシャカ先輩の長すぎる特撮トークに痺れを切らしたサーティーン氏とオーキッド女史は、怒り心頭の様子で再び弾幕の準備にかかる。
『いかン! 間に合わッ――』
『逃げますよ、タクシャカ先輩っ――』
急いで回避を試みるご両名。
だが対する砲撃と攻撃魔術は既に発射寸前、
こりゃもう駄目かと思われたその時――
『マナストーム・キロバースト!』
『ぐぬぅううううっ!?』
『ぬっぐ、があああっ!?』
割り込んで放たれる極太の光線魔術。
『何者だ!?』
『ふざけた真似を……!』
見事に敵二人の攻撃を止めて見せた大魔術。
その発生源は……
『……"傲慢は転落の前に来る"。
まさしく今のあなた方に相応しい言葉だ……』
故郷ドイツの諺を華麗に口遊むエーレンベルク先輩だ。
……普段からこういうノリで居てくれりゃみんな楽なんだがなァ。
『いい動きです!
感動的なほどにねッ!
然し! どうにも! 無意味ですねェッ!』
『ぐっっ!? くうっ!
っだああああっ!』
一方、志貴野女史を相手取るお嬢はその苛烈な猛攻に順応し、
どうにか対等に渡り合うまでになっていた。
『せィーヤッ!』
『ハァァァッ!』
振り下ろされた刃を、お嬢は大鎌の得で受け止める。
断じて気の抜けねぇギリギリの攻防だ。
『お姉様、結構やるじゃありませんの!』
『そちらこそ……よもやこれほどまでとは予想外でした、よッッ!』
『だわああっ!?』
鍔迫り合いの最中、
死角からの蹴りでお嬢を吹き飛ばした志貴野女史は
そのまま彼女の背後に回り込み刀を振るう。
『こんな技もありましてねぇ!』
『そんな、刀が鎖鎌にっ!?』
一瞬で刀を鎖鎌へ変化させた志貴野女史は、
そのままお嬢の額目掛けて分銅を放つ。
喰らえばひとたまりもないその一撃を、お嬢はどうにか大鎌で防ぐが……
『間に合っ――なぁッッ!?』
分銅の勢いは凄まじく、それなりに重い筈の大鎌を遠くへ弾き飛ばしてしまう。
(さ、大鎌がっ……!)
精神刈り砕く死神社員は決してステゴロでも弱かねぇ。
だがその圧倒的な戦闘能力は、大鎌のリーチと切れ味ありきなのも事実。
まして相手は自分より格上の上、刀を鎖鎌に変化させより攻撃射程を伸ばした志貴野女史だ。
『余所見してる場合じゃ、ないでしょうっ!』
『ひいっ!?』
加えて刀が鎖鎌になったから攻撃力が落ちた、なんてこともない。
お嬢にしてみりゃ避けるのが精一杯だ。
(回収しに行かなければ……!)
弾き飛ばされた大鎌までの距離も遠い……要するに絶体絶命なんだが
(係長が危ねぇっ!)
その危機に颯爽と馳せ参じるヤツが居た。
守衛頭のアーネスト君だ。
(係長までの距離と角度からして、これでッ!)
弾き飛ばされた大鎌の側まで瞬間移動した人狼は、
持ち主までの距離と角度を計算して上手い具合に大鎌を投擲。
『係長、受け取れーっ!』
『コールレイン様!?』
自ら投げたそれを追う形で瞬間移動、空中で掴み取った鎌をお嬢へ投げ渡す。
『助かりましたわ。なんてお礼を申し上げればよいか』
『礼なら後だ後っ!
あの"三輪霞モドキ"、まだあんたと殺る気だぞ!』
いや確かに青系のロン毛で前髪ぱっつんな上に黒スーツだし、
『呪術廻戦』の三輪霞に似てるっちゃ似てるけど
それにしたってモドキはねぇだろモドキは……。
『犬畜生めが、最も言ってはならぬことを……!』
ほらもう、奴さんキレちゃったしさぁ。
『そこまで言うならシン・陰流っぽい動きで切り刻んで差し上げましょうとも!』
鎖鎌を再び刀に戻した志貴野女史は、そのまま二人目掛けて突進するが……
『すんませんでし斬ッ!』
『ごめんなサイッス、これ大鎌ーッ!』
『ぐげあっはああああっっ!?』
ものの見事に迎撃されちまうのでしたとさ、めでたしめでたし(めでたくねぇー!)。
『「SPY×FAMILYは金の為に描いてるだけなのでキャラに愛着なんてない」とか
みんな嘘だって気付いてんだよいい加減素直に認めろよ遠藤てめぇ!
あと「HUNTER×HUNTER」の富樫にはもう期待してねーし
何な連載再開の目途が立たねえってんで読む気も失せるけど
それはそれとして「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」のデビルは何時になったら出るんだよセガさんよぉー!?』
『なんだあの変質者は意味のわからぬことを喚き散らし乍ら攻撃して来おってからに』
『てかそれよりホルモンの「神噛」と「刃渡り2億センチ」のフルバージョンが世に出てねぇ方がよっぽど問題視すべき事例だっつーのよ!』
一方ではハン先輩とロジャース先輩が殺し屋・睦月羊翠氏の猛攻を掻い潜りながら攻撃の機を伺っていた。
術師牛獣人の例に漏れず腕の立つ魔術師なのに加え武器の扱いも巧みな睦月氏の攻撃はやっぱり凄まじく、死越者トップのガタイを誇るお二方でも苦戦を強いられているらしい。
しかも……
『助太刀するよ、山羊の殺し屋……』
背後からは敏腕若手妖術師の小崎イヅナ女史が漁夫の利を狙ってんだから尚質が悪い。
こりゃ流石にヤバいか……と思われたが
『手始めにお前たちでウォーミングアップをしてやr――『待ちなよお姫っ!』
その展開を良しとせず小崎女史に立ち向かう者が居た。
そう、生前の彼女と親しかった"因縁の相手"ことフオン先輩だ。
『あんたの狙いは、あたしだろうッ!?』
『くっ……!』
フオン先輩の放つ不可視の矢を、小崎女史は最低限の動作で躱して見せる。
『あの時逃げた癖して何を偉そうに……!』
『その件は悪かったよ。
お詫びと言っちゃなんだけど、存分に殴りに来な!
その代わりあたしもあんたにゃ不満があるし、
存分に抵抗させて貰うけどねぇ!』
さて、かくして小崎女史をフオン先輩がひきつけてくれたお陰でロジャース先輩とハン先輩の負担は軽減されたが、とは言え睦月氏がやべーのに変わりはねぇ。
『ホルモンホルモンホルモン!
そうだホルモンだ!
なんで年末とかによくやってるアニソンランキング系のヤツには
ホルモンが一曲もねぇんだおかしいだろーがッ!』
『そいつにゃ概ね、同意だぜェーっ!』
相変わらずキレ散らかしながら魔力を纏わせた弾丸を乱射する睦月氏目掛け、
ロジャース先輩は固有能力で形成した電気エネルギー球を投げつける。
睦月氏の意識は明らかにハン先輩に向いていてロジャース先輩は眼中になかった。
彼女の読みが正しければ間違いなく電気エネルギー球は睦月氏に直撃していたハズだった、が!
『特に後にドラゴンボールの映画で使われた「F」は
世界の鳥山明御大が認めた
名曲だっつーにッ――ィよーぉぅ!?』
『ぬあっ!?』
こともあろうに睦月氏はそれを避けやがったんだ。
挙句、
『お転婆娘が、これ喰らって大人しくしとけェ!』
即座に無反動砲を構え、魔力を込めた弾丸をぶっ放す始末。
だが生憎、彼が好き勝手にばかりできるほど死越者もヤワじゃねぇ。
『嘗て半島最強と呼ばれし我が蹴りを味わうで御座る!』
咄嗟に睦月氏の背後を取ったハン先輩は、
不発に終わった筈の電気エネルギー球を蹴り飛ばす。
狙いは勿論、睦月氏に他ならねえ。
よって……
『ぅおっ!? んな、バカなぁぁぁ!?』
予想外の展開に対応が遅れ、電気エネルギー球は睦月氏に直撃するってワケだ。
『グアハハハハぁ!
もっとだ! もっと本気で殺しに来い!』
『全く、厄介な……!』
全身の武装フル稼働で暴れ回るダイロク氏と相対するのは、イヴォンヌ・カーマ先輩。
彼女の固有能力は春夏秋冬の各季節に因む異能を行使できるってヤツで、
ご自身の戦闘能力の高さも相俟って死越者ん中でもかなりの強豪って扱いだ。
そして彼女に便乗する形でダイロク氏の背後を取ったのが……
『ナッテレリ・バイト!』
『グウおっ!?』
『からの、ストーンフィッシュ・フィンカッター!』
『があアアッ!』
アラナ・ファロー先輩だ。
彼女の固有能力はあらゆる魚類の特徴を持つクリーチャーへの変身能力。
ピラニアの顎にオニダルマオコゼの毒針背鰭と、発現可能な特徴は多岐にわたる。
『可及的速やかに……!』
『焼き斬られなさいッ!』
『ヌウ……!』
冬に因む氷の剣とカジキの鼻先による斬撃での挟み撃ち。
鈍重なダイロク氏じゃ逃れようがねえと、誰もが確信していた。
『出番だぞ、宮入ッ!』
『なっ!?』
『消えた!?』
だが刹那、ダイロク氏が忽然と消えた。
それは彼の固有能力じゃない。別の人物の介入だった。
手助けをしたのは……
『……姫様に加勢しなければなりませんし、
手短に済ませなくては……』
元『極東四七守護霊会』神奈川事業所のメカニック、宮入ニナ女史だ。
どこで拵えたんだか"頭がマグロで兜代わりに丼を被った鎧武者風のパワードスーツ"を纏い登場した彼女は、
遠隔操作型の小型メカを嗾けカーマ先輩とファロー先輩を追い詰めようとするが……
「さて、今こそ新製品を試す時だ。
"呪われし一本の針"、発射!」
『ぐうっ!?』
丁度いいタイミングで早川さんに妨害され失敗に終わる。
彼が身に纏うのは新作パワードスーツ"恋する純情変異体"。
『……たかが一般人の技術者風情が……』
「一般人で結構!
尤も! 今の僕を!
果たして一般人と定義していいかは!
甚だ疑問だがねっ!」
『くっ……! 私のメカツナ之介をパワーで押し切るなんてっっ……!』
『ィィッヒヒハハハハァ!
気に食わねェ! 何でてめえ蛇なんだよ有鱗目でカブってんだろクソがぁ!』
『そう仰られましても、これが我ら兄弟の戦闘形態なものでッ!』
鉄棒を振り回す蜥蜴獣人のスキンク・ラケーリー氏と激突したのは、
死越葬態で兄のサル先輩と分離しつつアンフィスバエナ風の特撮ヒーローっぽい姿になったアン・ヴァティー先輩だ。
『言い訳してんじゃねェーッ!
ただでさえ身内に爬虫類居てカブってんだぞどうしてくれるッ!』
『別に構わんじゃないですかッ!
ワニとトカゲとヘビ! 種類は全く違うんですからッ!
ハアッ!』
『がああああああっ!?』
彼が振るうスコップ風の槍は持ち手を変えるとビームバズーカにもなる優れものだ。
その火力は比較的細めなラケーリー氏を遥か後方へ吹き飛ばすに十分過ぎたが……
『ボケがぁ! その程度で勝ったつもりかァ!』
『ぐがあーっ!?』
見た目に反してかなり頑丈なラケーリー氏は全くの無傷。
どころか圧倒的な踏み込みからの正拳突きで逆にヴァティー先輩をかなりの距離ぶっ飛ばしちまった。
『スキンク・ラケーリー……
現存する記録や証言より明らかに強い……!
だがまだ、こんな所で終わるものか……!』
かなりの傷を負いこそすれそれでも諦めず再起を誓うヴァティー先輩だったが……
それと前後して、辺り一面へ幾つもの巨大な雪氷塊が浮遊し始める。
(これは……念動魔術! それもかなりの魔力量を誇る熟練の魔術師が扱うもの……!)
念動魔術ってのは手足を触れず、道具も用いず物体を動かす魔術のことで、
発火や予見と並び最も初歩的な魔術だが、使い手次第では御覧の通りかなり強力な攻撃手段に化けるって代物だ。
『ほう……骨のあるヤツがいるじゃぁねえか。
それでこそ叩き潰し甲斐があるってもんだぁ……』
大規模念動魔術の使い手は、自らも術で宙に浮いていた……
包帯姿の不気味な男、倉治渦氏だ。
彼の狙いは咄嗟の出来事に対応しかねるヴァティー先輩、だったが……
『させませんけどもッ!』
それが、アン兄弟の兄、サル先輩
――その姿はヴァティー先輩と同じく特撮ヒーロー風だが、
彼のはオルトロスっぽいデザインだ――
の介入を許す結果となった。
倉治氏が浮かせた氷雪塊の一つを足場にしたサル先輩は、
弟を狙う不気味な魔術師目掛けて魔力を付与した矢を放つ。
例によってそいつもまた、直撃すればタダじゃ済まんワケだが……
『甘いなあ……』
『何ッ!?』
こともあろうに倉治氏は、その矢を片手で受け止め無力化しちまったんだ。
念動魔術を纏わせてたとは言え、常人にできる所業じゃねえ。
『判決を言い渡す、圧殺刑だぁ……』
(ダメだ、隙がないっ! このままではっ……!)
あわやヴァティー先輩絶体絶命か……
と、誰もが思っただろう。
だが……
『手合わせ願えますかな、倉治殿ッ!』
颯爽と現れ長剣で氷雪塊を両断したのは、天秤座の朧先輩に他ならねえ。
『助かりました……』
『我が弟よ、無事なようで』
『ええ、兄さん。
……と、来ますよ』
『グェエアハハハハハハハハァ!』
九死に一生を得る形となったアン兄弟だが、脅威はまだ去っちゃいねぇ。
恐らくどっかで斎川先輩にやられたんだろう、そこかしこに毒針の刺さったラケーリー氏が狂ったような声を上げながら飛び掛かって来たんだ。
『面白いけどやってらんねェやあの娘っ子!
おいてめえら兄弟この責任取って俺に殺されやがれェ!』
『滅茶苦茶を申される!』
『そのお願いは、謹んでお断り申し上げましょう!』
鉄棒を振るうラケーリー氏と、二人揃ったアン兄弟の壮絶な殺し合いが幕開ける……。
一方その頃、上空では……
『月華と応龍、両方の気配を感じる……小娘、お前何者だぁ?』
『お初にお目に掛かります、元「魔界中央裁判所」処刑執行部長、倉治渦殿!
私、月華・応龍双方の血筋を継ぐ朧一族が初代、朧トモエと申します!
以後お見知り置きを!』
『月華と応龍の混血、朧だとぉ?』
『是非、名前だけでも憶えて……あの世へお帰り頂ければ幸いに御座います!』
『真面目なトーンでふざけたことを吐かしやがって……
その態度、確かにあの一族が混ざってんのも納得だなァ!』
天才的な霊能者にして腕の立つ忍者でもある朧先輩と、
処刑執行人でありながら護衛や暗殺といった戦闘の経験も豊富な魔術師の倉治氏。
二人の戦いは壮絶を極めていく……。
そして場面は再びこの俺、北川ナガレの視点に移る!
『デぁッラアアア!』
『ヌゥエエエイッ!』
振り下ろされた俺の蟹爪と、獣神教諭の太刀がぶつかり合う。
『恐ろしいもんだな……! 三角波と恐れられた俺の太刀を防ぐたぁどんな甲殻だよ!』
『いやあ! これでも本来なら足をもう少し増やした上に
毒蛇なんかが八匹ほど生えてるんですが
此度はその辺妥協して防御と回復に回さなきゃやってらんないもんでねぇ!
正直結構ギリギリでやらせて貰ってんスわ!』
『そうかよ! そいつぁご苦労なこったが、
急に自分語り始めるその癖ぁ特に頭とガラの悪い奴らから嫌われっから気をつけろよなァ!』
『ご忠告感謝しまァーっす!』
お互いダメージを受けねえまま平行線で進む戦い……面白くなって来やがったぜ!
〈=皿=〉<ぶっちゃけ最初の内は、正直誰かに代わって欲しかったけどな……
さて、ここで少し時は遡って……
俺たちがストーキングアイス陣営とドンパチやり始めた辺りのことだ。
『全員引き付けてくれたようですね……
これで心置きなくストーキングアイスを始末できるというものです』
手が空いたガルゴノーツ団長は、
敵将ミコファミータ・ストーキングアイスを討つべく動き出そうとした。
だが……
「『白金の不死者団』団長のアリオン・ガルゴノーツで間違いありませんね……?」
ふと背後から声がした。
団長が振り向くとそこには、
黄金色のロバ型ロボに跨りアコギを担いだ色男の姿が……。
『如何にも私こそガルゴノーツですが、あなたは?』
「お初にお目に掛かります。
ドン・ファニートゥワイス・マサユキ=ノザキ・リビングドリームと申します。
界隈では伯爵ノザキで通っております。以後お見知り置きを……」
『これはご丁寧にどうも、ノザキ伯爵殿下。
して、本日は斯様な化け物だらけの戦場へ何用ですかな?』
「単刀直入に申し上げますが、愛する者の仇討ちに……。
つい数時間前になりますが、
私にとって最愛の女性とそのご家族、並びに配下の方々が
あなたの部下である死越者に殺されてしまいましてね……」
『それはそれは、お悔やみ申し上げますぞ伯爵殿下。
然し二つほど訂正させて頂きたい……
まず私は「不死者団」の長でこそあれ他の方々を部下とは認識しておりません。
彼らは同志であり同胞であり、そして仲間です。その点はご理解頂きたい』
「これは失礼。して、二つ目は?」
『非礼を承知で申し上げますが……
ノザキ伯爵殿下、貴殿は
私の仲間である死越者の内の何れかが、
貴殿の愛する女性並びにその関係者三名の計四名を殺害したなどと、
根拠のない被害妄想に囚われ仇討ちと称して私の元へお越しになられたようですが……
その「死越者に身内を殺された」との情報、確かですかな?
最愛の女性を喪ったショックで精神を病みありもしない被害妄想を述べているだけでは?』
「……身内の起こした罪を認めようとせず、あまつさえこちらを狂人扱いとは。
やはり所詮は如何に上位の存在と言えど死体の化け物か」
ノザキは態度を急変させた。
「根拠だと? あるさ。被害妄想なんかであるものか。
何せ当人らがそう証言したのだからなッ!」
『ぬうっ!?』
瞬間、地下の気配を感じた団長が急いで飛び退いた直後、
分厚い雪を突き破ってそいつらは現れた。
[ギイヒハギャゲゲゲゲゲゲッ!]
[フウビャブボベベッ! ブビョロバァ!]
[グヒュッ! グヒヒュッ! グッヒヒヒュウウッ!]
[ブッボアアアアアアアアアッ!]
不気味な鳴き声を上げる、四匹の化け物。
それぞれ蜘蛛となんかウミケムシっぽい奴、それからイカとヒキガエルのような……。
サイズは怪獣映画の化け物にしちゃ小ぶりだが、
平成中期以後の特撮によくいる"フルCGのバカでかい敵キャラ"ぐらいにはデカかった。
しかもそいつら、見た目の割に言葉を発しやがるんだ。
[ギイヒギギギギイイッ!
しらばっくれようったってそうはいかないよぉ!
妾たちは間違いなく、射手座の死越者を名乗る女に殺されたのだからねぇ!]
とは、蜘蛛の弁。
[ブギョロバビィ!
そうなのラ! あのシリコン女、
仲間を連れてボクちゃんたちをギタギタのボコボコにしやがったのラ!]
とは、なんかウミケムシっぽい奴の談。
[グッギュウウウッ!
その癖仕方なしに命乞いしたら『許す』とか言ってきてさぁ!
安心してあいつに『彼氏いなさそう』とか『今期逃しそう』とか
『その乳シリコンみたいで気持ち悪い』とか『尻にも太腿にもシリコン入れてるんだろ』とか
『雛形あきこって再婚相手をDVでボドボドにしてそう。相手が天野浩成だけに』とか
なんかそんなこと言っただけで勝手にブチ切れて私ら殺されちゃったんだからもう!]
とは、イカの談。
[ブボオオアアアアアア!
イヂドイウダゴドバ、ホゴニズンナア!
バイダヅバ、ノンドンチャウゾオ!]
とは、ヒキガエルの談。
ここまで読み進めてくれたらなんとなく察しはつくだろうが……
実はこいつらの正体、フランスはアルカションでクリスマスプレゼント強奪を企てたあのクズ四人組の成れの果てだったんだ。
後に調べた所に依ると、どうやらあのノザキって男が死体と霊魂を用いて化け物に改造したらしい。
『ふむ、なるほど……確かにどうやら、
うちのフオンさんがそちらの皆様を殺したのは事実のようですね。
然しお言葉ですが、皆様が彼女に殺されたのは完全なる自業自得ではないでしょうかね』
「関係ないね!
例え自業自得だろうと何だろうとお前の仲間が"僕"の最愛の女性とその家族、
及び配下二人を殺したのは紛れもない事実だ!
そしてお前は奴の所属する団体の長だという!
ならば、例え上下関係が無くとも長として、
構成員による不始末の責任を負う義務がある!」
『……つまり私と戦うと?』
「ああそうだ。だがこれは戦いなどという高潔なものではないだろう。
これは一方的な虐殺であり、処刑なのだ!
お前という大罪人を裁く為のなっ!」
『ほう、大きく出られましたなァ……。
よろしい。
正直な所、あの宇宙人を殺したいのは皆同じならば、
私だけで独り占めするのもどうかと思っておりましたのでね。
あなた方のお相手、謹んでお受けいたしましょう……!』
かくして団長もまた壮絶な戦いに巻き込まれていく……。
〈=皿=〉<因みにこの団長のエキシビションマッチ(?)は、
作者曰く彼ご自身が"牡羊座の死越者"だからこそ思いついたパロネタらしい。
さて、そんでもって時は進んで、
俺と獣神教諭の斬り合い(打ち合い?)が佳境に差し掛かった頃。
『これで終われィ!』
『終わって頂くなァ、
――そちらですぜぇーッ!』
鍔迫り合いの隙を突いて放つ渾身のアッパーを、然し教諭は回避しつつ後退……。
『クソっ、キリがねぇ……!』
『やっぱ未熟か……!』
時を同じくして激闘を繰り広げていた面々も、
なんやかんや実力拮抗してて決着がつかないだとか諸事情で戻って来たもんだから、
両陣営は再び睨み合う形になる……が、そっからは早かった。
『『『『『『『『ウッラアアアアアア!』』』』』』』』
『『『『『『『『『っどあっらああああ!』』』』』』』』』
『『『『『『『「はあああああああっ!」』』』』』』』
示し合わせたが如く一気に加速した俺たちは、
それまで戦っていた相手同士でぶつかり合い……
―――【『≪■■■■■◆◆◆◆◆◆◆!!!!≫』】――
凝縮された力は一斉に解き放たれ、
両陣営総員が相打ちの形で等しく盛大に吹き飛ぶ!
『クソ、まだ決着つかねぇのかよ……!』
思わず毒づかずにはいられなかった。
消耗がかなり激しい……それは向こうもだろうが、
程なく、恐らくほぼ同一のタイミングで自然回復が完了するだろう。
この戦いには引き分けも、試合チックな判定勝ちもねぇ。
互いの全存在を賭けての殺し合いだ……
向こうはストーキングアイスの奴が死ねばそれっきりだろうが、
俺たちは別に団長がやられようが戦うのをやめたりはしねぇ
――この場の誰より団長ご自身がそう望むと、皆理解しているんだ――。
ともすりゃ当然、戦闘は継続すべきだが……何かがおかしいんだ。
『……ああ? どうなってんだぁ?』
『わからない……何故私たちはこんな……』
『なんでしょうね、スゴく嫌なことを嬉々としてやっていたような……』
相手方の皆様方の声を聞いたことで、俺たちはその異変が何なのかを察知した。
(敵意が……消えてらっしゃる……?)
そう。
クソ宇宙人によって蘇生され奴の傀儡と化していた筈の皆様から、
どういうわけか俺たちに対する敵意や殺意の類いが真っ新消え失せておられたんだ。
一体どうしたもんかと一同頭を抱えて暫し『この中では最も相手方との繋がりが薄いから』って理由で立候補した早川さんが、
恐る恐る相手方に近寄り事情を聴いてみれば……
『なんと、そんなことが……』
「ええ、間違いありません。
彼らに我々と敵対する意図はなく、
そもそもここまでの記憶がすっぽり抜け落ちていると……」
驚くべき事態だった。
なんと皆様方、俺らへの敵意どころかここ最近の記憶すらないようで……
仕方なく俺たちで改めて事情を説明し終えると、
これまた驚くべき答えが返って来た。
『じゃあしょうがねぇな。
みんなであのクソ宇宙人をぶっ殺すかァ』
字数の都合でラケーリー氏の発言のみ抜粋させて頂いたが、
他の方々も概ね同じようなことを仰られた。
『おいクソ宇宙人! 俺らてめーと縁切るぞぉ!
勝手に生き返らせた挙句こき使いやがって、
今に見てろぶっ殺してやるからなぁ!』
明らかに狼狽してた辺り元々聞こえていて概ね察してたんだろうが、
睦月氏の放ったその一言を聞いたことでストーキングアイスの奴も完全にキレたようだった。
【なぁによあんたら! 折角蘇らせてやった癖に、親に盾突いていいと思ってるワケ!?
っていうか、私が死んだらあんた達も纏めて消滅するのよ!? それでもいいの!?】
如何にも在り来たりな脅し文句だが、
それで止まるようで魔界二十三閥族の猛者なんぞ務まるハズもねえ。
突きつけた答えは満場一致の『構わない。寧ろ本望』。
ってワケで俺ら総勢二十六名、
クソ宇宙人のミコファミータ・ストーキングアイスをぶっ殺すべく団長をセンターに如何にも洋画っぽい雰囲気醸し出しながら歩き出したワケだが……
【ふざけんじゃないわよぉぉぉ!
こうなったら全員消し炭にして私だけ外に出てやるぅぅぅ!】
そう言って奴は腕に注射器のようなもんを突き立て、中身の薬品を流し込んでいく。
【ふぅえはははははははははぁ!
後悔しても遅いわよぉ!
これこそ惑星ヤンデレイジョの技術の粋を集めて生み出された珠玉の発明!
肉体変成薬『グレイテスト・コズミックスター』が齎す究極の力ぁぁぁぁ!】
薬を注射したストーキングアイスの肉体は、
見る見るうちにヒト型を逸し、得体の知れない肉塊へと姿を変えた。
粘土よろしく不定形な肉塊は、やがてなんともシンプルで判り易い形を成していく……。
そうして出来上がったのは……
【QLLLLRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAHHHH!!!!!!】
全身金銀で、中央にバカでかい水晶体眼のある、
体高数十メートルか下手すりゃ百メートルほどもありそうな、直立二足歩行するヒトデの化け物だったんだ。
『……なんだよありゃあ。宇宙電磁怪獣のいとこか何かか?』
「いやあ、違うだろう。
全身ぶよぶよで甲殻もないし、目玉も一つなら口もない」
『何より宇宙電磁怪獣ほどカッコ良くもねーしな』
「まあ、宇宙電磁怪獣がカッコイイかどうかは兎も角として、
あれはどっちかというと……ああ、なんだったかな。
DC系列の実写映画で、スタローンが吹替で出ていた2010年代のあの……」
『「ザ・スーサイド・スクワッド」ですの?』
「そう、それだ! あの映画に出てた宇宙ヒトデの化け物!
確かスターロ大王だったかな。あれによく似てないかな?」
早川さんの指摘は御尤もだった。
ただ、本家スターロ大王が精々巨体で街をぶっ壊したり触手をぶん回したり、
あと分身体を放ってヒト型生物の顔面に寄生させ操りながら食い殺すぐらいのもんだったが、
一方単眼ヒトデと化したストーキングアイスはというと……
【GLLLLLLLLLLRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRAAAAA!!!】
『ぎゃわあああああ! 眼からビーム撃って来ましたわよあのヒトデ!?』
『続けざまになんかミサイイルみたいなの飛ばして来たんだけど!?
なんだよあいつ機械要素どこにもなかったじゃんどういうことだよ!』
「本家が霞むような攻撃性だな!」
『星の技術の粋を集めたって発言に偽り無しか、こりゃめんどくせーな!』
ビームやらミサイルやら何やらとにかく攻撃技が豊富ったらねぇんだ、これが。
とは言えここに集まったのは裏社会に名を轟かせる戦闘の達人ばかり。
その程度で怯むワケもなく攻撃を凌ぎ、即座に作戦を立てヒトデへの攻撃に取り掛かる。
【BLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLRRRRRRAAAAAAA!!!】
『作戦はこうです。まず我々は大きく二手に分かれます。
奴の動きを封じ攻撃を防ぐ拘束班と、奴に攻撃を加え弱らせる攻撃班にね!』
団長の立てた作戦通り、
無数に放射される光線や雨霰と降り注ぐ砲弾を掻い潜りながら各々配置につき行動を開始する。
『拘束班、状況開始!』
まず動くのは拘束班。
主には魔力の扱いや搦め手に長けたタイプが割り当てられている。
【DRRRRRRRRRRRRLLLLLLLLL!!!】
『やっカマしイわァ! いい加減、大人しクシとけヨォォォ!』
先陣を切ってタクシャカ先輩が雪と土を操り奴の動きを封じる。
『我が念動魔術の真髄を見せてやろう!』
『お前を止めるっ……! それが私の存在意義ぃぃぃぃぃ!』
『その巨体であっても、固定されては手も足も出まい!』
『ついで影縫いの毒針じゃいっ!』
【BGYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?】
続いて倉治氏とオーキッド女史の念動魔術、
そしてエーレンベルク先輩の固有能力の応用技"対象固定"に
斎川先輩が固有能力で生み出した"対象の影に突き刺すことで動きを封じる毒針"が炸裂する。
これで相当動きは鈍ったがそれでも抵抗のリスクはあり、何より攻撃は防げねぇ。
『『兄弟奥義・天網多重防護結界!』』
『サーディーン・テラウォール!』
『小崎式結界妖術・手盗匣!』
『エナジー漁網弾……発射!』
『弱体化の矢を喰らいなっ!』
【VIIIIIIIIIGGGYYYYYYYYYAAAAHH!!??】
よって立て続けに、
アン兄弟のお二人やファロー先輩がより防御を堅牢に拡大させ、
小崎女史、宮入女史、フオン先輩がヒトデを拘束・弱体化させる。
『続いて攻撃班、状況開始!』
続いて動くのは攻撃班。
拘束班の妨害でヒトデが動けなくなってる内に有りっ丈のダメージを叩き込み、可能な限り弱体化させるのが役目だ。
『喰らいなさいっ!』
『叩ッ斬らァ!』
『抜刀!』
『抉られいッ!』
『テメーにゃ羨む値打ちもねェーっ!』
『細切れだッッ!』
「"灼熱母魔物"の一撃を受けろッ!」
【BLLLLLLLLLLLGIIIIIYYYYYYY!!!!】
まず先陣を切ったのは近接攻撃組。
お嬢の大鎌、 獣神教諭の太刀、志貴野女史の刀、
ハン先輩の貫手、ラケーリー氏の鉄棒、アーネストの爪、
早川さんのガントレット"灼熱母魔物"……
それぞれの武器が振るわれ、必殺の一撃が見舞われる度、
ヒトデの外皮が切り裂かれ体液が噴き出し肉が抉られていく。
【HUUUUUUUWYYYYYYYYYYYY!!!!】
当然傷は再生し始めるが、その程度はとっくにお見通しだ。
『やはり再生能力持ちか! だがまだだ!
砲撃班、かかれーッ!』
【WYYYNNGGYYYYYYYYYYYY!!!】
『もっと焼け爛れなさいよ!』
『塵一つ残しはせん……!』
『消し炭ンなれやァ!』
手始めに飛んでいくのはカーマ先輩の火炎球、サーティーン氏の砲撃、ロジャース先輩の雷撃だ。
【GUUUGYUWWWAAAAAAAAA!】
体液を撒き散らし乍ら悶絶するヒトデ。
だが遠距離攻撃はまだまだ続く。
『ぶっ飛ばしたらァ、全弾解放ォォォォ!』
『我が父直伝の炸裂式霊力弾、とくと味わうがいい!』
『年末大売り出しの出血惨殺大サービスだぜヒィヤッハアアアアアアア!』
『序でに私も! ブレストブラスタァァァァ!』
【BLLLUUUGGGIIIIYYYYYYY!!??】
ダイロク氏の全遠距離武器による総攻撃、
朧先輩のお父君直伝の炸裂式霊力弾、
睦月氏の大魔術に団長が胸部装甲を展開して放つ極太光線と
更に容赦のない攻撃がヒトデを襲う。
『北川くん! 後は手筈通りに!』
『お任せ下さい! この北川ナガレ、カニなれど大トリを飾って見せましょう!』
そして最後はお待ちかね、俺の出番だ。
【VYYYYYIIIIIGGUUWWWYYYYY!!】
『さあクソ宇宙人! とっととブチ殺してやるぜぇ!』
団長はじめ幾人かから予め分けて頂いていた魔力でもって空高くへ飛び上がった俺は、
体内を巡るそれらを右腕へ集結させ凝縮していく。
すると右腕の蟹爪は青白く発光し、あたかも刀剣の刃めいたオーラを纏う……
つまりは準備完了ってこった。
【QUUUUUAAAAAAAAAHHHH!!】
『さあ、こいつでトドメと行こうか……!
ゥおぉッラアアアアアアッ!』
【GYAAAAAAAHHH――!?】
空中で一回転しながら、光の刃と化した右腕をヒトデ目掛けて振り下ろす。
その一撃でもって見事ヤツは切り裂かれ遂に絶命……と、思われたが!
【――ぶああっ!? はっ、あっが、ああああっ!】
なんとしぶといことに、あのクソ宇宙人はヒトデの体内で密かに生き延びてやがったんだ。
【があ、はあっ! こんな、ハズじゃっ!
違う! 別の、策をっ!
今に、見てろ! 私、はあっっ!】
『……白けるような真似してんじゃねぇよテメぇ……!』
怒り心頭の俺は何としてでも奴を殺そうとするが、既に頂いていた魔力は底を尽きかけていた。
もうこの浮遊状態を維持するのがやっとで、さっきみてぇな大技なんて撃てるわけがなかった。
どころか死越葬態の維持すら限界なようで、想定外に消耗し過ぎた所為だろう、徐々にだが変身の強制解除が始まっていた。
(やべえ……もう時間がねえ……!)
だが当然、万策尽きたなんてことはなく……
俺が取り出したのは、ほぼ必需品と化したプラズマ・ノダチ。
『こいつで、カタをつけるっ!』
ノダチを瞬時に起動した俺は、そいつを手に持ち振りかぶって……
『ゥルロロロロラアアアッ!』
ジャベリンの要領で、クソ宇宙人に投げつけた。
【はっ? あっ! なあああっ!?】
元々投擲を想定してなかったハズのプラズマ・ノダチは、
あたかもクロスボウの矢かレーザー光線の如く真っ直ぐクソ宇宙人目掛けて飛んでいき……
【ぉぐあが!? ぶばっ!
こんな、ばか、なっ……!
わた、しが……この、私がああっ!】
クソ宇宙人の腹に突き刺さり、そのまま貫通。
【ぐあああああああ!?
ぎゃばあああああああああ!】
どういう原理か知らんが、ヤツの肉体は特撮怪人よろしく爆発四散。
本体(?)が絶命したことで、
切り裂かれながらも徐々に再生しつつあった巨大ヒトデの体組織もまた、
雪と見分けがつかない程真っ白な微粒子になって霧散、実質的に消滅した。
(勝った……勝ったぜっっ……!)
さあ、丁度いいや。
折角クリスマスの話で華々しく勝ったんだし、
特撮ヒーローっぽくこれ言ってもバチは当たるめえ。
『はっ……ぁはっ……
はぁぁぁー……!
メリィィィィィィクリィッスマァァァァァァッス!』
……え? それからどうなったんだって?
……そこに感想を書く機能があるでしょう?
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