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第六幕 七カ国同時多発テロ、その裏に蠢く黒幕の正体は……堕ちた公認サンタクロース!

当初の予定ではここでナガレが黒幕に向かって行って完! だったんですけど、

どうせなら派手にバトルさせようってことで第七幕まで続く羽目になりました。

 俺の名前は北川ナガレ。


『クソが! まんまとしてやられたってワケか!』


 明らかになった衝撃の事実に思わず立腹する蟹座の死越者エクシーデッドだ。



〈◎皿◎〉<これがまた長引くんだがな……



 札幌市北区で勃発した対人爆破テロ集団の元締め・語呂下ごろもと

 『襲撃中命乞いをしてきた美人女子高生が会いたがっている』

 ってな感じの嘘と偽装工作で上手いこと騙して奴の隠れ家(ヤサ)を襲撃した俺は、

 簡単な尋問により無事奴の持つ極秘情報を吐かせるに至ったワケだが……

 その吐かせた情報

  ――事件の裏に隠された恐るべき陰謀の正体――

 ってのが、なんとも衝撃的にぶっ飛んでやがったんだ。


 語呂下曰く……



「うっぐぎゃああああああ! わ、わかった!

 話す! 話すよおおおおおおお!

 俺の知ってることはああああああ!

 何でも洗い浚い話すからああああ!

 だから助けてくれええええええ!」

『やっかましいわボケぇ! いいからさっさと話せ!

 つか一々叫ばねえと喋れねえのかテメーはぁ!?

 五月蠅過ぎて俺の気が変わってぶっ殺すかもしれねーぞ!?』


 有名な英国の諺"空のコップほど大きい音を立てる"

  ――中身のない奴ほど声がデカい――

 ってのはまさにこいつの為にある言葉だと思う。


「わ、わかった! わかったあ!

 あんまり叫ばないよう努力するから殺さないでくれえっ!

 ま、まず、そもそも俺たちは元々、何の接点もなかった所を

 ストーキングアイス様にスカウトして頂いて、この計画についての説明を受けたんだ!」

『ストーキングアイスってのがテメーら仕切ってる親玉の名前か』


 指揮官ストーキングアイスことミコファミータ・ストーキングアイス。

 地球上・地球外・異界・並行世界といった各所から七組の悪党どもをスカウトしたそいつの正体は、

 さる銀河にある"アセメリー星系"の惑星ヤンデレイジョに起源を持つ地球外知覚種族"ヤンデレイジョ星人"の一個体だそうだ。


 ヤンデレイジョ星人の風貌は殆ど地球人類と大差なく、

 しかも高度に発達した文明とべらぼうに長い寿命、そして淫魔ばりの美貌の持ち主だ。


 だが奴らの特筆すべき特徴は主に三つ……

 一つ、雌しか生まれず繁殖には異種族の雄が必要。

 二つ、自身にとって最適の繁殖相手を見抜く千里眼と未来予知の能力を持つ。

 三つ、強欲で諦めが悪く執念深い。特に繁殖相手への独占欲は強く、自分のモノにする為なら手段は択ばない。


 要するに、美人で長寿で賢いけど滅茶苦茶タチの悪いクソみてぇな宇宙人ってこった。

 正直話を聞くに、

 メフィラス星人より悪質でザラブ星人より凶悪、

 かつテンペラー星人より極悪だと思う。

 若しくは『ノーモア★ヒーローズ3』のジェス・パディスト六世一味のがまだマシに見えるレベルっつーか……。



「ストーキングアイス様はご自身の千里眼と未来予知で、

 遠からずここ地球に生まれる一人の男こそ

 自分にとっての運命の相手であると認識されたのさ。

 そして予見に従い地球へ辿り着いた彼女は、

 色々あって地球人に混じって暮らすことを強いられたッ。

 波風を立てないように、地球の法律を守りながら生きて来られたんだ。

 あんただって知ってるだろう、地球の法律じゃ子供との結婚はできない。

 ストーキングアイス様が地球に来られた時、相手の男はまだ八歳だった。

 だから十年間、彼女は男を見守りながらその時を続けたのさ。

 国際サンタクロース協会の、公認サンタクロースとしてな」

『なんでそこで国際サンタクロース協会が出て来る?』

「未来予知の内容さ。

 ストーキングアイス様とその男が結ばれるのはまさに今日、西暦2025年12月24日で、

 その時彼女はミニスカサンタの格好をしていたというんだ。

 そこから彼女はご自身がサンタクロースになる宿命を背負っておられると考えられたのさ」


 その後ストーキングアイスはグリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロースになったが……

 読者のみんなも知っての通り本作世界のサンタクロース協会はその頃既に腐敗し切っていて、

 ストーキングアイスも巻き添えを食らうが如く協会に酷使されちまう。

 薄給と重労働に精神を病んだヤツにとって唯一の楽しみは、運命の相手"酒魚さかなけい"へのストーキング行為のみ……。

 盗撮、盗聴、窃盗、監視から果ては不法侵入に怪文書ラブレター送付まで、奴は様々な行為でもって圭少年に迫り続けた。

 当然気味悪がる圭少年だが、ストーキングアイスはそれを『照れているだけ』『素直になれていない』と曲解……

 とは言え警察沙汰になりかけると流石に懲りたのか、直接影響を及ぼすような真似はせず、

 あくまで陰乍ら付き纏っては危険や不幸から守るなどの活動にシフトしていった。

 運命の日、西暦2025年12月24日になれば自分たちは間違いなく結ばれると信じて……。


「だがある年、ストーキングアイス様は最悪の未来を見てしまったんだ。

 運命の日に邪魔が入りご自身が13匹のおぞましい怪物によって惨殺され、

 そしてその翌日のクリスマス当日に酒魚圭を他の女に奪われるという最悪の未来をな……」


 13匹の怪物つったら……

 魔界二十三閥族に所属しておられる傑物の皆様か?

 確かに妥当な話ではあるが……


『つまりストーキングアイスは、

 その怪物どもの狙いをてめえから逸らす囮として七つの事件を起こしたってワケか』

「ああそうだ。だが彼女の計画はそれだけじゃないぞ……!

 彼女は俺達にこう言われた。

 『私と彼の愛を永遠のものとし、

  また彼を私のものとする為に、

  彼を縛り付けるこの世界を滅ぼし、

  私と彼の為に作り替えねばならない。

  これはその為の聖戦だ』

 とな……!」

『なんだと……!?』

「そして彼女はこうも言われた。

 『お前たちがもし

  この聖戦を勝ち抜き手柄を立てたなら、

  お前たちの望みを何でも叶えてやろう。

  そして同時に、

  お前たちは新たな世界を管理する支配者となるのだ』

 とな……!」


 俄には信じられねぇ内容だが、

 と言って語呂下こいつが出鱈目を言ってるとも思えねぇ。


「ゾンビ狩りベイダーよ、どうせ俺を殺すんだろ?

 ……仮に殺さなくたって俺はもう死んだようなもんさ。

 世の中に絶望してストーキングアイス様についたってのに、

 結局聖戦を勝ち抜けなかったんだからな。

 だが俺がダメでも外野奴らは、

 他の奴らがダメでもストーキングアイス様はもう止められないぞ?

 彼女はもう酒魚圭を捕まえて、

 新世界創造の準備を始めておられる頃だろうからなぁ!

 禁呪『絶望の全球凍結スノーボール・アース・ザ・ディスペアー』は誰にも止められない!

 発動後三時間であの小僧は世界を氷漬けにして滅ぼす怪物『氷結大怪魚テラグレイス・バハムート』になっちまうんだからなああああ!」

『なんだと……?

 だったら――――

「おおおっとぉぉおお!

 『だったらそいつを倒せばいい』なんて考えるなよぉぉぉ!?

 人々の悲しみや悲鳴、苦痛や絶望を餌にする氷結大怪魚は無限に強くなっていくし、

 仮に倒せせたとしても小僧は助からないんだからなああああ!

 もう世界はお仕舞いだああああ!

 諦めて苦しみながら死んじまえええええ――――

『ッラァ!』

「ぐぶえっ!?」

『……騒ぐんじゃねぇよこの肉塊がァ。

 安心しろ、テメーが嫌いで嫌いでしょーがねぇこの世界は、

 このゾンビ刈りベイダー様がしっかり守ってやるからよ……』



 自棄を起こし喚き散らかす語呂下を殴り飛ばして黙らせた俺は、奴に吐かせた情報を魔界二十三閥族全域へ拡散しつつ混成部隊と合流。

 幸いにも時を同じくして世界七カ国で勃発したテロ事件は解決し、被害地の復興作業も進行中との事だった。


『待ってろストーキングアイス……

 必ず殺してやっからよぉー!』



 〈◎皿◎〉<因みに『絶望の全球凍結スノーボール・アース・ザ・ディスペアー』はまだ発動してから十分も過ぎてなかったようで、

 加えて魔力ダダ漏れなんで探知も容易くストーキングアイスの居所特定にそう時間はかからなかったらしい。



 さて、時は過ぎて19時49分。

 場所は兵庫県小野市の外れにある廃墟ん中……



【うふふふふ……♥

 ケイくぅん、私たちやっと二人きりになれたわね……!】

「なっ!? 貴女はまさか……!

 くっ、離して下さい! これは犯罪ですよ!?」

【んもぅ、素直じゃないのね♥

 でも貴方のそういうとこ含めて好きよ、私っ♥

 さあ、共に新たな世界へと旅立ちましょう?

 何にも囚われず何にも束縛されない、

 二人だけの愛に満ちた新世界へ――――


『そこまでだ、メンヘラ阿婆擦れ宇宙人ッ』


【はぇっ!? 一体何!?】


 どこから電力盗ってんだか、粗末な照明と安物ストーブの灯りに照らされた暗く寒い室内に、ヤツは居た。

 金髪碧眼、肌は色白……即ち典型的な白人コーカソイド美人のミニスカサンタ。

 十中八九奴こそが公認サンタクロースのヤンデレイジョ星人、ミコファミータ・ストーキングアイスで間違いねぇだろう。


【クリスマス・イブを過ごすカップルの元へ土足で上がり込んで来るなんて最低ね!

 そんなんだからあんたみたいなのは彼女ができないのよ!】


 ほう、この女言いやがる……

 いいだろう、それでこそ痛め付け甲斐があるってもんだ。


【っていうかあんた誰よ!?

 今私たち取り込み中だから用がないなら帰って欲しいんだけど!?】

『心配すんな、用もなくこんな寂れた汚い廃墟なんぞに来るわけねぇだろ』


 特撮のロケだってもっとやりやすい場所でやるっつーの。


 ……と、その時。


「だ、誰かそこにいるんですか!?

 お願いです、助けて下さい!

 僕は酒魚さかな けい

 明日のクリスマスパーティ用の買い出しに出掛けたら突然襲われて、

 気付いたらこんな場所で椅子に括り付けられていたんです!」

『おっと良かった、案外元気そうだな。

 安心し給え酒魚くん、我々は君の味方だ!

 もうそろそろ救助の者が到着する頃だ、

 あと少しばかり辛抱してくれ!』

「はいっ、わかりました!

 何方か存じ上げませんがありがとうございます!」

【ちょっと!? 何勝手に話進めてるわけ!?

 私は別に彼を襲いも攫いもしてないし、

 あくまでもクリスマス・イブをカップルで過ごしてるだけってさっきから言ってるでしょ!?

 っていうかケイくん!?

 そうやって私に無実の罪を着せるのやめてくれるかしら!?

 照れ隠しにも限度があるでしょう!

 なんであたかも私よりあっちの不審者の方を信用してるようなこと言うの!?

 流石に傷付くんだけど!】

「なんでってそんなの、

 実際貴女よりあの方を信用してるからに決まってるじゃないですか!

 まだ分からないんですか!?

 僕は貴女なんて認知してないし、

 まして恋人なんかじゃ断じてない!

 貴女はただの誘拐犯で、

 法のもとに裁かれ罰せられるべきただの犯罪者に過ぎないんだ!

 いい加減その現実を理解しろーッ!」

【 ―――

   ―――― え ? 】


 酒魚少年からの明確な拒絶の言葉を受け、硬直するストーキングアイス。

 その間抜けヅラといったらなんとも傑作だったが、ともあれ俺はその隙を突いてスマートフォンへ叫ぶ。


『ジッキンゲン、やれィ!』

――《任せいニャッ!》――


 刹那、周辺一帯の風景がガラリと変わる。

 ……より厳密には、俺とストーキングアイスが別の場所へ転送されたって方が正しいだろうか。

 一面雪に覆われた大平原で向かい合う外道デミ・アンデッドとクソ宇宙人……ひでー絵面だな。


【――はっ!?

 なに、ここ!?

 え? は? えぇっ!?

 ちょっ、あれ!?

 ケイくんは!?

 ケイくんどこぉ!?

 ケイくぅぅーん!?

 どこなのぉぉぉー!?】


 ストーキングアイスは予想外の展開に困惑、

 愛しの酒魚少年の名を呼び続けるが……その声が彼に届くことはねぇ。


『無駄だぜミコファミータ・ストーキングアイス。

 お前の声はもう彼には届きゃしねぇ』

【はっ!? なによアンタ! そんなワケないでしょう!?

 彼は私の運命の相手、私のものになってくれる男性なのよ!?

 ていうかここどこよ!?

 なんで私がアンタとこんな場所に居なきゃなんないワケ!?

 冗談抜きに最悪のシチュエーションじゃない!】

『うるせぇ、そりゃこっちの台詞だ。

 何が悲しくててめえ如きクソ宇宙人と同じ空間の大気吸ってなきゃいけねンだよ……

 あとここが何処だとか今どうでもよくねぇ?』


 とは言えこのまま説明しないのもアレなんで、読者のみんなにだけは伝えとこう。

 今俺らがいるこの空間は、マインデッド邸守衛隊参謀の魔術師猫ジッキンゲン

  ――実は今回の作戦で別の混成部隊に所属してたりする――

 の魔術でもって形成された異次元空間で、

 激化が予想されるストーキングアイス戦での周辺一帯への被害を抑えるべく急遽作ったもんだ。


『ヤンデレイジョ星人ミコファミータ・ストーキングアイス……

 お前が知っておくべき情報はただ二つ……


 まず一つ目、お前はこの空間内で俺達と戦わなきゃなんねぇ。

 んで二つ目、身勝手な動機で甚大な被害を出したお前は、責任取って死ぬしかない』

【……!】

『あぁ、いや待て……まだあったな。

 三つ目、俺達に勝てばお前は自由の身……

 ま、どうせお前は死ぬんだから

 こんなルールなんぞあってないようなもんだがな……』


 さて、結構言ってやったがヤツの反応は……


【フン、面白いじゃない。

 いいわよ、その勝負乗ってあげる。

 大方私のことを単なる地球外出身の美人ミニスカサンタだと思い込んでそう言ってるんでしょうけど……

 その認識が大間違いだってこと、思い知らせてあげる!

 あとで吠え面かくんじゃないわよ!?】


 なんだ、やけに威勢がいいじゃねーか。


(いいぜいいぜぇ……!

 敵キャラってのはやっぱそうじゃねーと面白くねぇ!)



 さあ、聖夜の決戦が始まるぜ!


次回、師走の大決戦に猛者たちが集う!

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