第17話 騎士と勇者
15話後書きの企画ですが
polaris様のリクエストにより
『兎獣人』に決定しました
早ければ次の次あたりに登場し、その次話で仲間になる予定です
いきなりの空間転移に3人が驚愕する
「今のは一体?」
「まさか…『テレポート』ですか?」
「アイテムボックス持ちで剣技も一流、しかも『テレポート』使い…
お前が噂のギルドマスターだったのか?」
何か嫌な勘違いをしているようだ
「いえ、違いますよ
イーヴァのギルドマスターは、ドレイクさんという方で僕ではありません
今のは『ワープ』というスキルで、特定の場所にしか移動できませんが、パーティメンバー全員が移動できるとても便利なスキルです
できれば内密にお願いします
あ、ちなみにここはイーヴァ東門の近くです」
「「「………」」」
3人は言葉も無いようだ
「確かに秘密にした方がいいな…」
「私と同い年くらいなのに…」
「信じられん…」
後ろで放心しながらついてくる3人を先導しながら
僕は門を目指す
「おう、アキラじゃないか、薬草は採れたのか?
って、誰だそいつらは?」
この時間は並ぶ人が少なく、すぐに僕たちの番がやって来た
「旧街道でブレードベアに襲われていた人たちです
たまたま通りかかったので助太刀しました」
「そうか、それは災難だったな
一応規則なんでカードか他の身分証があれば見せてくれ
アキラは通っていいぞ」
「はい、ではお先に失礼します」
門は混雑するので、通行許可が出しだい急いで通るのがマナーだ
もっとも、偽名を使っている2人に気づかないふりをしているのも、急ぐ理由だが
「こっ、これはぁ!!」
…案の定、門番の人の驚く声が後ろから聞こえてきた
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「待たせたな、アキラ
父上からの紹介状を見せたら驚かれてしまってな」
「そうなんですか?」
(そりゃ驚くでしょ)
ツッコミたいが、さすがにできない
「早速だが、冒険者ギルドに案内して貰いたい
そこで救出や護衛の報酬について決めてくる
すまないが、その間にアリーシャを教会に連れて行ってくれないか?」
「はい、それは構いませんが」
「お前の回復を信用していないわけではないが、あんな目にあったのだ
噂に名高い侍祭に見せてやりたい」
「エルミア様にですね、わかりました」
ルークさんたちの目的は、ストライヴァ家だそうだ
冒険者ギルド→教会でアリーシャさんと合流→ストライヴァ家という流れらしい
「あのう…
アキラさんはおいくつですか?」
「僕ですか?17歳ですが」
教会へ向かう道すがら、アリーシャさんが尋ねてくる
「わ、私と1歳違い…」
「アリーシャさんは祝福前なんですよね?」
「はい、恥ずかしながら」
「祝福は15から19歳までが多いと聞いています
16歳なら普通ですよ
それとも実は18歳だったりします?」
『鑑定』で16歳だとわかっているのだが、落ち込んでいる相手を慰めるには、別方向に誘導するのがベストだ
「私は16歳です!
アキラさんより年下ですよ!」
「そうなんですか?
なにか気品を感じたから、もしかしたらと思ったんですが
年下なのに僕より大人っぽいですね」
「なっ、ななっ!?」
わざと驚いたふりをしながら振り向き、褒めてみる
アリーシャさんは、真っ赤になって挙動不審になる
(やっぱり可愛いな、この人は)
「あ、着きましたよ
ここがイーヴァの教会です」
「……」
なぜか恨めしそうな目をしながら、彼女は教会に入って行った
僕は彼女を見送った後、あることを思い出して、少し待ってから教会に入った
「依頼を受けた冒険者です
薬草を持って来ました」
そう、薬草採取の依頼を出したのは、教会、すなわちここだったのだ
依頼のことを忘れるなんて冒険者失格である
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「アキラ、待たせたな
報酬はギルドに渡しておいた、後はアイテムボックスの中の荷物を出してくれれば依頼達成だ」
薬草を納品し、教会の外で待っていた僕に、ルークさんが声をかける
「わかりました、アリーシャさんはまだ中です」
答えたついでにパーティ登録を解除しておく
解除しておかないと、ワープを使うときにいちいち対象から外さないといけないのだ
アリーシャさんは後でいいだろう
「そうか、アンガス、呼んで来てくれ
アキラは俺について来てくれ」
ルークさんはそう言うと、教会隣のストライヴァ邸に向かって行った
「ギルドから連絡が行っていると思うが、ルークが来たとジェイス卿に伝えてくれるか?」
「ルーク様ですね、申し訳ありませんが、ジェイス様は隣の教会に行っておられます
先ほど使いを送ったのですが…」
ルークさんがテムスさんと話している
僕がいることに驚かないところをみると、ギルドの連絡員が伝えていたのだろう
「そうなのか?
おそらく妹と話をしているのだろう
ならばここで待つとしよう
アキラ、すまないが贈答品を運んでおいてくれるか?」
「さっきから気になっていたのですが、贈答品とは?」
「そういえば言っていなかったな
ジェイス卿が婚約をしたそうなのだ
我が一族はストライヴァ家と縁があって、父上から祝いの品を届けるように言われたのだよ」
「そうなのですね
ジェイス様とは先日お会いしましたが、ご婚約なされていたとは知りませんでした」
なるほど、王族と貴族だからそれは縁があるだろう
「ならばアキラはメイドについて行ってくれ
武器は置いて行けよ」
「わかりました、失礼します」
この前の依頼で入った応接室に再び僕は入り、メイドさんの指示で贈答品を出し、並べて行く
貴族が使うテーブルはさすがに大きく、全ての品を置くことができた
そしてちょうど置き終えたところで、ルークさん、アリシアさん、ジェイス様、エルミア様、アンガスさんが入って来た
「おお、ちょうど終わったところか
アキラ、世話になったな」
「はい、これで依頼達成でよろしいですよね?」
「うむ、これが依頼書になる
サインはしておいたから、ギルドに持って行くといい」
僕は受け取ると、贈答品を出したことで空いたアイテムボックスの中に入れた
これで決してなくすことはない
「ありがとうございます
では僕はこれで失礼します」
「本当に世話になったな
また会おう、アキラ」
「あ、お兄様
私はもういいですよね?
もう少しアキラさんとお話をしたいのですが」
これで終わりかと思ったが、まだ解放はされないらしい
「それなら中庭に行くといい、ベンチもあるし、今は人はいないはずだ
フローラ、案内してやってくれ」
ジェイス様が中庭の使用許可をくれた
メイドさんの名前はフローラさんというみたいだ
何度か会っているが、知らなかった
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中庭に着くと、アリーシャさんは急に真面目な顔になり
「実は私、アキラさんのことが気になっていました」「えっ?」
驚く僕にアリーシャさんはさらに言葉を続ける
「剣の腕も凄いですが、『メガヒール』や『リザレクション』のような高レベルの回復魔法まで使いこなすアキラさんはもしかして」
アリーシャさんは息を吸い、さっきよりも真面目な顔で
「『聖騎士』なのではありませんか?」
「聖騎士…ですか?」
「はい、それどころかアイテムボックスも持ち、ユニークスキルにも目覚めているのです
そんな人はうちの騎士団にもいません」
うちの騎士団って…
自分がお姫様だってばらしてるけど、気づいていないようだ
「まさか、僕は戦士兼癒し手のただの冒険者です
それに『ワープ』はユニークスキルではなくて、ギフトスキルですよ」
「違うのですか?
それにギフトスキルとはなんでしょうか?」
「ギフトスキルとは神様からもらう特殊なスキルです
神様に気に入られるともらえることがあるそうです」
「そんな話は初めて聞きました
一体誰から聞いたのですか?」
思わず言い過ぎてしまったので、神様から直接聞いたことを話す
もちろん前世でなくて夢であったことにした
実際に夢で別の神様に会ったことがあるので、不自然ではないだろう
「夢で神様に…
それで聖騎士でないなんて…」
「はい、聖騎士どころか騎士ですらありませんよ」
「そうなのですね…
ですが、アキラさんならすぐに聖騎士になれますよ
あんなに凄いのですから」
「聖騎士ですか…
僕には合わないと思いますが
それに僕が目指しているのは『勇者』ですから」
厳格なイメージがある騎士は僕には合わない気がする
まして聖騎士なんて僕につとまるとは思えない
まあ、勇者が合っているとも思えないが
「ゆ、勇者…よりにもよって勇者ですか」
ツボに入ったらしく、アリーシャさんが笑う
「剣と魔法を使いこなし、どんな相手にも勇敢に立ち向かい、味方に勇気と希望を与え、敵に恐怖と絶望を与える者…
この国ではこう伝えられているあの勇者ですよね?」
「……はい」
(勇者ってそんな意味だったんだ)
「アキラさんなら、きっとなれますよ」
「いつかはなりたいですね」
そんな会話の後、とりとめのない雑談を続けたのだが、最後にアリーシャさんはとんでもないことを言い出した
「そうだ、アキラさんは今はまだ騎士ではないのですよね?」
「そうですが?」
「では、私の騎士になってくれませんか?」
えっ?
次回タイトル予告
中級職と方針
用語解説
兎獣人
ユピトアースで最もよく見る獣人の一種で、頭の上に兎の耳があり、腰の後ろに兎の尻尾がある
他の種族と違い、腕力や体力は人間並みだが、脚力はかなり強く、その分ジャンプ力が高い
ただし、走力は狼族や猫族の方があり、人族よりは速いが、彼らには劣る
もともと獣人族は耳が4つあるので、人族より聴覚が優れているが、兎族はさらに優れていて、暗闇の中でもコウモリのように周りの様子を把握できる者もいる
獣人族の中で最も平和を愛し、争いを好まないので騙されて奴隷にされる者も少なくない
そんな兎族だが、彼らの真価が発揮されるのは、意外なことに迷宮の中であり
優れた聴覚で部屋の中を探る、ジャンプ力を生かして味方の頭上から飛び道具を使うなど、優秀な盗賊となることができる
また、全ての獣人族に共通することだが、基本的に雑食性で、兎族が兎の肉を食べることも珍しくなく、狼族や猫族であっても野菜も平気で食べ、葱類に中毒することもない
あくまでも、獣の耳と尾を持つ人という存在である
種族固有スキル
ハイジャンプ
ソナーイヤー など




