1話
僕たちは双子だ。 その割には似ていない。
顔も性格も。 ただ一致するのは、好きな人に関してだった。
今日は学校も休みで家で有意義に過ごす予定だった、僕は。
「暇だー…… なんかすることねぇかな……」
「さっきからそればっかじゃん。 ゲームでもしてれば?」
弟の結城は、昼に起きてきたくせに暇だ暇だ、とうるさい。
両親が単身赴任が多いため、こういうのは少なくはなかった。
小さい頃から一緒だった結城とは仲がいい方だとは思う。
喧嘩はそんなにしたことがないし、好みのものが別れることのが多いおかげもある。
「碧李、キス」
「は?」
意味がわからない。 なぜ、キス!?
仲が良いとは思うけれど、なぜ!? しかも、男ですけど……
「いいから」
いやいやいや、いいから、じゃないしっ!
一度も彼女の出来たことがない僕になんてことを……!
でも、好きな人はいる。 一生かかっても言えないけれど……
「碧李、ファーストキスしてみたいだろ?」
「結城の暇潰しにキスされるなんて絶対に嫌だね」
「暇潰しじゃなければいいのか?」
そういう問題じゃないと思う。 抵抗がないのか、お前にはっ!!
だって、結城には今彼女もいる。 なのに、それじゃ足りないとでも言うのか。
そう考えると自分の弟ながらも、情けなくなってくる。
(学校にバレたくないなぁ…… そういう性格だって)
僕の印象もそうなってしまいそうだ。
弟が弟なら、兄も兄。 それが世間一般。
「彼女に言ったらいいじゃん。 なんで出掛けなかったんだよ?
いつもなら行ってるじゃん、休みになると」
「別れようと思ってる。 好きじゃねぇし、あいつ」
モテル男はウザイっていうのがわかった気がする。
なんとなくで付き合い始めたのか?
僕には到底できないことだ。 自分に返ってきたら嫌だし。
「他に好きな人でもいるの?」
「まぁ。 でも女じゃないんだよ。 だから、練習にキス」
練習って、女とキスするのとどう違うっていうんだ。
したことのある人にしかわからないものなのか?
だって、好きじゃないって言ってても、やることはやってるんでしょ?
今まで付き合ってきた人たち全員と、ちゃっかり。
「馬鹿じゃん。 このヤリマン」
「はぁ? イキナリなんだよ」
無神経にも程があるって。 わかれよ、少しくらい。
練習で人に軽々しくキスするもんじゃない。
僕にとっては、価値のあるもの同然なのに。
自分のしたいように、すれば気がすむって?
された側はどうなる? 簡単に言わないで欲しい。
「僕じゃなくてもいいじゃん。 身近にいるのが僕だから、
都合がいいって? 冗談やめてよ」
「都合がいいとかそんなんじゃねぇよ別に。 お前が好きだからだよ」
「ふざけ……」
今、サラッと告白された? 双子の兄弟である僕に?
男に? そんなの、でっち上げの嘘に決まってる。
だから、そんな嘘で僕の心と感情を揺らすのはやめて欲しい……
責任、取ってくれる? この気持ちが溢れたそのときに。
止めていた、この気持ちに気づいたときから認めないようにしていたのに。
今ここで打ち明けてしまったら、楽になる?
僕を、傷つけないように応えられる?
片思いが長かった分、その反動は大きいはず。
あなたはそれを、受け入れてくれますか?
「碧李? 大丈夫か?」
結城、あなたは気づいていないだろうね。
どれだけ触れ合っていても、それ以上を求めていた僕を。
一緒にいられるだけで少しだけでも幸せな気分になっている僕を。
「結城、遊びならそれくらいにしといてよ。
そんなこと言われて信じると思う?
信じたい…… だって、ずっとそう望んできたのだから。
嘘でもいいからと、願い望んでいたのだから。
「遊びなんかじゃ…… 冗談でもない」
その言葉を、信じてもいいですか?
あなたが……好き。
この気持ちを伝えても、あなたは信じますか?
簡単には信じないでしょう? きっと。




