42.受験
文化祭が終わると俺は専門学校の推薦入試を目前に控えていた。
ときどき俺は雪原に面接の練習を手伝ってもらっている。
放課後の空き教室で向かい合って座り、雪原に面接官の役をやってもらう。
「志望動機は?」
「はい、情報処理はこれからの世の中で必須とされる職業で、自分は将来必要とされる人材になりたいと思っています。また、プログラミングの授業では、思った通りの動作ができたときすごく喜びを感じます。貴校の取得可能な資格一覧や、卒業生の進路を見て、ぜひここで学びたいと思いました」
「はい、合格です! 合格!」
「いや待て待て!」
雪原は俺が一つ答えるたびにすぐ「合格!」と叫び、俺は笑ってしまって先に進めない。
「いやだって本当に直すところないよ。完璧」
お世辞でもそう言ってもらえて嬉しくて、俺は日々自信が付いていくのを感じた。
ときどき雪原が「寒い寒い」と言ってくっついてきて、一緒に学校にある受験対策の冊子を並んで読んだりした。
教室は寒いけれど、触れ合っているところは暖かかった。
俺たちは別々の学校に進学するから、こうして教室で喋ったりできるのもあとちょっとだ。
そう考えると寂しくて、俺はいつもちょっとだけ雪原の方に体重をかけた。
推薦入試は年明けの一般入試より随分早く、十一月にはもうその日がやってきてしまった。
入試の前日、雪原は夜に電話をかけて応援してくれた。当日の朝は電話は控えておくから代わりにこれを、と数日前に小さな封筒を渡されていた。
絶対当日まで開けるなよ、と釘を刺されている。
当日の朝、俺は起きてすぐその封筒を開いた。
『緑なら大丈夫』とデカく書かれた紙と、当日の持ち物一覧が手書きで書かれた紙が入っていた。
俺はふっと笑みが溢れた。
「ありがとう」
手紙を鞄に仕舞い込み、俺は朝の支度を始めた。
面接は上手く行ったと思う。緊張が解けて脱力しながら専門学校の門から出ると、なんと雪原が待っていた。
「雪原!?」
「お疲れ様」
今一番見たかった顔を見て、俺は笑顔になっていた。
「どうだった?」
「大丈夫と思う」
「はい、合格です!」
向かい合って笑って、その後俺たちはハンバーガーを食べて帰った。
二週間後に入試の結果の通知が学校へ届いた。
職員室に呼び出された俺が緊張しながら担任からの告知を待っていると、
「合格だ。おめでとう!」
と言われ、職員室に拍手が巻き起こった。
「よかったー……」
俺は胸を撫で下ろした。
急いで雪原のクラスまで伝えに行ったが雪原は見つからず、時間がなくて自分の教室に引き返した。
仕方なく町田から携帯で合格を伝えてもらった。
「おー! 緑君合格おめでとう!」
町田が大声で言うのでクラスに知れ渡り、みんなも拍手をしてくれた。俺は照れながらみんなにお辞儀した。
雪原に一番に伝えたかったな……。
けれど仕方ない。携帯を手に入れたら、どんなことでもすぐに雪原に一番に伝えるんだ。
町田からメッセージを受け取った雪原は、次の休み時間に飛んできてくれた。
その数日後、合格祝いに雪原を家に招いてばーちゃんと三人で鍋をした。
楽しくて和やかで温かくて……。いつまでもこの時間が続けばいいのにと思った。
帰り際、雪原は「今度は俺の家で。勇也がいないときにな」と言ってくれた。
「雪原が合格してからな」
嬉しいのに、俺はまた可愛げのない返事をしてしまう。雪原は笑って帰って行った。
42/47




